建設業の将来性
インターネットをチェックしていると、建設業に限らず、様々な業種をオワコン、いわゆる「終わったコンテンツ」扱いで断ずるサイトが散見されます。果たしてそれらは本当に正しい予測なのでしょうか?
今回は行政書士として接する機会の多い建設業の将来性について、真剣に考察してみることにしました。まどろっこしいので早々に結論から提示させていただきます。
結論:建設業は終わらない
これ。建設業は終わりません。その理由についてこれから検証を行っていきたいと思います。
建設業許可の概要について
建設業の現状
一昨年から続くコロナ禍においては、様々な業種が景気悪化による打撃を受けました。そんな中でも建設業全体の業績悪化は、比較的小さくとどまっています。少なくともお付き合いさせていただいている建設業者さまに関しては、体感的にそれ程不況にあえいでいるという印象はまだ受けていません。
ただし、これは建設業が導入から工事完成までに比較的長い期間を要する業種であることや、特有の重層下請構造を持った受注システムを採用していることが関係しています。これはすなわち、建設業が中長期にわたる事業であるため、一般の業種と比べて景気変動が業績に影響を及ぼすまでに時間差が生じやすいことを意味しています。
したがって、これからしばらくは一般事業に遅れる形でコロナ禍による何らかの影響を受けることは否定できません。ですがこのことを踏まえた上でも先述した結論を変えるつもりはありません。何故なら業績悪化は他業種も同様であり、また、建設業には次章から考察していく業種としての強みがしっかりと存在するからです。
建設業の強み
まず大前提となる強みは、建設業が社会のインフラ整備に寄与する業種であるという点です。インフラとは「社会生活の基盤」のことを指しますが、住宅、電気・水道・ガスを利用するための設備や施設、これらを設計して設置及び施工を行う建設業は、まさにその要の業種であると言えます。
今後の機械化の推進やAI技術の発展により作業の効率化は図られることになるものと予測しますが、人間が生活を継続していく以上、建設業自体がなくなることは考えられません。
このように、建設業は古来よりインフラの整備に長らく携わってきた業種であるため、時代ごとの流行に合わせたり、逆に流行の発信元として華々しく存在感を放ってきた業種であると言えます。皆さまも歴史の勉強をされたことがあると思いますが、各時代の文化の中心には常に象徴的な建造物が登場したことを覚えているはずです。
さらに建設業は何も新しいモノづくりについてのみ関わる事業ではありません。これから徐々に劣化しにくい素材に置き変わっていくとは思いますが、モノには必ず耐用年数があります。改修やリニューアルなどを考慮すると、いずれまた建設業を必要とする時が巡ってくるのは必然の流れですし、それを繰り返しつつ歴史は現在に至っています。
建設業の動向
さてここからが本題になりますが、これから建設業界がどのように動いていくのかを、現在判明している部分から探っていきたいと思います。
周辺の法整備
法的基盤の大きな動きとして、2020年には以下の内容を盛り込んだ建設業法の改正がありました。
- 建設業の働き方改革の促進
- 建設現場の生産性の向上
- 持続可能な事業環境の確保
このことからも、国が建設業を国民生活及び社会経済を支える上での重要な役割の担い手であることを正面から認めていることを伺い知ることができるのではないかと思います。
働き方改革の促進
先述のとおり建設業の歴史は古く、その中で多くの価値や様々な伝統的技術が生み出されてきました。その一方で、業界特有の風土や慣習が現代の働き方に少しずつそぐわなくなってきているのもまた事実であり、働き方改革の推進は政策的な急務でもありました。
今回の法整備では職場環境の改善が図られることになりましたが、これにより労働力が安定供給されることに期待が持たれています。
生産性の向上
若年層の建設業離れは業界の課題でもあり、関連法の整備や建設業の許可基準の変更は、その課題を解決する施策として打ち出されたものでもあります。許可基準に社会保険の加入が義務づけられたのは、時代の変化に対応するための最たる例でしょう。
労働者の心身の安定は生産性の向上に直結します。この点において長期的な観点から業界の動向を予測したとき、その見通しは明るいものであると捉えています。
持続可能な事業環境の確保
災害時において地域の復旧・復興を担うなど、建設業が「地域の守り手」として明確に位置づけられたことも業界としてはプラス要因となっています。具体的な施策としては、経営業務管理責任者に関する規制が合理化されましたが、建設業者が継続して活躍できるよう事業環境を確保するための施策が今後も展開されることに期待することができます。
まとめ
以上のことから、私なりに最初の結論にたどり着きました。ただ、これは大局を見据えた上での予測であり、短いスパンにおいて様々な苦難が待ち受けていることは否定できません。また、建設業と一括りにしても実際は29種もある業種ですので、個々の業種ごとにそれぞれ別の事情が存在するものと思われます。まずは周辺の法令や他業種の動向に関する情報も仕入れつつ運営にあたるべきでしょう。
外部でのサポートという立ち回りにはなりますが、建設業の事業者さまが安心して運営に全集中できるよういつでもご相談をおうががいますのでご遠慮なくお申し付けください。