自動車整備業開業ガイド│自動車特定整備工場の認証制度について
自動車整備工場を開業する場合、厳密には手続きは不要です。ただし、何らの手続きを行っていない自動車整備工場では、分解整備を必要とする整備や点検が行えず、携(たずさ)わることのできる作業はかなり限定的になるため、実務上は地方運輸局長からの認証を受けた「認証工場」とすることが一般的です。
かつては「自動車分解整備事業」と言われていた事業形態ですが、分解整備に加えて、自動車の前方を監視するカメラやレーダーなどの調整や自動運行装置の整備等の「電子制御装置整備」と合わせて、現在では「自動車特定整備事業」と呼ばれています。
そこで本稿では、これから自動車整備業をはじめようとされる皆さまに向けて、開業のために必要とされる手続きについて詳しく解説していきたいと思います。
特定整備とは
道路運送車両法では、特定整備を、原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、緩衝装置、連結装置又は自動運行装置を取り外して行う自動車の整備又は改造その他のこれらの装置の作動に影響を及ぼすおそれがある整備又は改造であって国土交通省令で定めるものと定義しています。
専門用語が多くて分かりづらい文章ですが、要するにエンジンやブレーキなど、自動車を制御するための装置を取り外したり、これらの装置の作動に影響を及ぼす可能性のある整備や改造等のことを「特定整備」としています。
さらに道路運送車両法施行規則では、特定整備を「分解整備」と「電子制御装置整備」とに区分し、下表のようにその内容を明示しています。
分解整備 | 原動機を取り外して行う自動車の整備又は改造 |
動力伝達装置のクラッチ(二輪の小型自動車のクラッチを除く)、トランスミッション、プロペラ・シャフト又はデファレンシャルを取り外して行う自動車の整備又は改造 | |
走行装置のフロント・アクスル、前輪独立懸架装置(ストラットを除く)又はリア・アクスル・シャフトを取り外して行う自動車(二輪の小型自動車を除く)の整備又は改造 | |
かじ取り装置のギヤ・ボックス、リンク装置の連結部又はかじ取りホークを取り外して行う自動車の整備又は改造 | |
制動装置のマスタ・シリンダ、バルブ類、ホース、パイプ、倍力装置、ブレーキ・チャンバ、ブレーキ・ドラム(二輪の小型自動車のブレーキ・ドラムを除く)若しくはディスク・ブレーキのキャリパを取り外し、又は二輪の小型自動車のブレーキ・ライニングを交換するためにブレーキ・シューを取り外して行う自動車の整備又は改造 | |
緩衝装置のシャシばね(コイルばね及びトーションバー・スプリングを除く)を取り外して行う自動車の整備又は改造 | |
けん引自動車又は被けん引自動車の連結装置(トレーラ・ヒッチ及びボール・カプラを除く)を取り外して行う自動車の整備又は改造 | |
電子制御装置整備 | 運行補助装置(①〜③)の取り外し、取付位置若しくは取付角度の変更又は機能の調整を行う自動車の整備又は改造(かじ取り装置又は制動装置の作動に影響を及ぼすおそれがあるものに限る) ①自動車の運行時の状態及び前方の状況を検知するためのセンサー ②①のセンサーから送信された情報を処理するための電子計算機 ③①のセンサーが取り付けられた自動車の車体前部又は窓ガラス |
自動運行装置を取り外して行う自動車の整備又は改造その他の当該自動運行装置の作動に影響を及ぼすおそれがある自動車の整備又は改造 |
★分解整備の例
認証
自動車(検査対象外軽自動車及び小型特殊自動車を除く)の特定整備を行う事業を「自動車特定整備事業」といいますが、自動車特定整備事業を経営しようとする者は、以下の自動車特定整備事業の種類及び特定整備を行う事業場ごとに、地方運輸局長の認証を受ける必要があります。
この認証は、対象とする自動車の種類を指定し、その他業務の範囲を限定して申請することができるほか、認証に条件が付されることがあります。
普通自動車特定整備事業 | 普通自動車、四輪の小型自動車及び大型特殊自動車を対象とする自動車特定整備事業 |
小型自動車特定整備事業 | 小型自動車及び検査対象軽自動車を対象とする自動車特定整備事業 |
軽自動車特定整備事業 | 検査対象軽自動車を対象とする自動車特定整備事業 |
認証申請
自動車特定整備事業の認証を受けようとする者は、以下の書類を事業場を管轄する都道府県の運輸支局へ提出し、地方運輸局長の認証を受ける必要があります。
- 自動車特定整備事業認証申請書
- 役員名簿
- 資金調達状況調書
- 整備主任者選任届
- 事業場・作業場・工具等の写真
- 従業員名簿
- 整備士合格証(写し)
- 建築確認済証(写し)
- 工場設置確認証(写し)
- 法人登記簿謄本(法人)
- 戸籍謄本または住民票(個人)
- その他地方運輸局長が求める書面
提出された申請書は運輸支局で形式審査が行われ、その後地方運輸局において内容審査が行われます。なお、認証の決定までは申請後約30日とされています。
認証基準
認証は、欠格事由に該当しない申請者であって、設備及び従業員が国土交通省令で定める基準に適合する事業場について行われます。
設備基準
事業場の規模 | 常時特定整備をしようとする自動車を収容することができる十分な場所を確保すること |
分解整備を行う作業場 | 別表第四に掲げる規模の屋内作業場を確保すること |
天井の高さは、対象とする自動車について特定整備又は点検を実施するのに十分であり、床面は、平滑に舗装されていること | |
電子制御装置整備を行う作業場 | 別表第四に掲げる規模の電子制御装置点検整備作業場を確保すること(屋内作業場(車両整備作業場及び点検作業場に限る)と兼用可能) |
天井の高さは、対象とする自動車について特定整備又は点検を実施するのに十分であり、床面は、平滑に舗装されていること | |
作業機械等 | 事業場は、別表第五に掲げる作業機械等を備えたものであり、かつ、当該作業機械等のうち国土交通大臣の定めるものは、国土交通大臣が定める技術上の基準に適合するものであること |
電子制御装置整備を行う事業場 | 自動車の型式に固有の技術上の情報(自動車の整備又は改造を行わない場合にあっては、自動運行装置に係るものを除く)及び運行補助装置の機能の調整(エーミング作業)に必要な機器を入手することができる体制を有すること |
人員基準
事業場には、特定整備に従事する者として、事業場の区分に応じ、以下の要件を満たす従業員を2人以上確保する必要があります。
整備主任者 | 従業員の構成 | |
---|---|---|
分解整備を行う事業場 | 少なくとも1人は1級又は2級の自動車整備士の検定(事業場が原動機を対象とする分解整備を行う場合にあっては、2級自動車シャシ整備士の技能検定を除く)に合格した者であること | 整備主任者のほかに、4人ごとに1人以上は、1〜3級の自動車整備士の検定に合格した者であること |
電子制御装置整備を行う事業場 | 少なくとも1人は1級自動車整備士の検定に合格した者又は1級二輪自動車整備士、2級の自動車整備士、自動車車体整備士もしくは自動車電気装置整備士の技能検定に合格した者であって電子制御装置整備に必要な知識及び技能について運輸監理部長若しくは運輸支局長が行う講習を修了した者であること | 整備主任者のほかに、4人ごとに1人以上は、1〜3級の自動車整備士、自動車車体整備士又は自動車電気装置整備士の検定に合格した者であること |
分解整備及び電子制御装置整備を行う事業場 | 少なくとも1人は1級自動車整備士の検定に合格した者又は1級二輪自動車整備士若しくは2級自動車整備士(事業場が原動機を対象とする分解整備を行う場合にあっては、2級自動車シャシ整備士の技能検定を除く)の検定に合格した者であって電子制御装置整備に必要な知識及び技能について運輸監理部長若しくは運輸支局長が行う講習を修了した者であること | 整備主任者のほかに、4人ごとに1人以上は、1〜3級の自動車整備士、自動車車体整備士又は自動車電気装置整備士の検定に合格した者であること |
欠格事由
たとえ設備及び従業員の基準を満たしていたとしても、以下の事由のいずれかに該当する者については、自動車特定整備事業者としての適格性を欠くものとして、認証を受けることはできません。
- 1年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
- 自動車特定整備事業の認証の取消しを受け、その取消しの日から2年を経過しない者(認証を取り消された者が法人である場合においては、取消しに係る聴聞の期日及び場所に関する公示の日前60日以内に法人の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有するものを含む)であった者で取消しの日から2年を経過しないものを含む)
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人が欠格事由のいずれかに該当するもの
- 法人であって、その役員のうちに欠格事由のいずれかに該当する者があるもの
指定工場
認証工場のうち、自動車の整備について一定の基準に適合する設備、技術及び管理組織を有するほか、自動車の検査の設備を有し、かつ、自動車検査員を選任して自動車の点検及び整備について検査をさせると認められるものについて、申請により、地方運輸局長が指定自動車整備事業の指定をしています。
この指定を受けた工場を「指定工場」と言いますが、指定工場に車検を依頼した場合、指定工場が自動車の点検整備を行うほか、自動車検査員が検査を実施するため、自動車検査員が交付した保安基準適合証を運輸支局、自動車検査登録事務所等に提出することにより、車両の持ち込みを省略することができます。
このようなことから、一般的には指定工場のことを「民間車検場」又は「民間車検工場」とも呼んでいます。
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