カジノ関連機器等製造業等の型式検定と審査基準について
特定複合観光施設区域整備法(以下、IR実施法)では、カジノ関連機器等及びカジノ関連機器等製造業等の取扱いについて規定を設けるほか、カジノ関連機器等が受けるべき検定についても詳細を定め、カジノ事業の適正な運営を図っています。
カジノ行為業務を行うに当たっては、検定に合格した型式の電磁的カジノ関連機器等、又は表示が付され、かつ、技術基準に適合する非電磁的カジノ関連機器等(以下、適合機器等)以外の機器等をカジノ関連機器等の用途に使用し、又は適合機器等をその用途以外のカジノ関連機器等の用途に使用することはできません。
製造業等の許可等及び指定試験機関の指定等に関する許認可等の処分に係る審査基準」を設けてこれを公開しています。
そこで本稿では、IR実施法と関連法令のうち、カジノ関連機器等の検定制度や合格基準について、分かりやすく解説していきたいと思います。
目 次
型式検定
カジノ関連機器等製造業者又はカジノ関連機器等輸入業者は、電磁的カジノ関連機器等を製造し、又は輸入しようとするときは、その型式について検定に合格した電磁的カジノ関連機器等を輸入する場合を除き、カジノ管理委員会が行う電磁的カジノ関連機器等の型式についての検定を受ける必要があります。
また、カジノ関連機器等外国製造業者が電磁的カジノ関連機器等を日本国内に輸出しようとするときは、カジノ管理委員会が行う電磁的カジノ関連機器等の型式についての検定を受けることができます。(任意)
なお、検定の有効期間は10年とされています。
検定の申請
検定を受けようとするカジノ関連機器等製造業者、カジノ関連機器等輸入業者又はカジノ関連機器等外国製造業者は、以下の事項を記載した申請書をカジノ管理委員会に提出することにより申請を行います。
- 電磁的カジノ関連機器等の種別
- 電磁的カジノ関連機器等を製造する者の名称
- 電磁的カジノ関連機器等の製造所の所在地
- 許可又は認定の番号
- 型式の名称
検定申請に必要となる書類
- 検定申請書
- 電磁的カジノ関連機器等の諸元表
- 電磁的カジノ関連機器等の構造図、回路図及び動作原理図
- 電磁的カジノ関連機器等並びに電磁的カジノ関連機器等の部品及び装置の構造、材質及び性能の説明を記載した書類
- 電磁的カジノ関連機器等の写真
- 電磁的カジノ関連機器等の取扱説明書
- 電磁的カジノ関連機器等のソースコードの写し
- 電磁的カジノ関連機器等についてあらかじめ行った技術上の規格への適合状況の確認の結果を記載した書類
- 電磁的カジノ関連機器等を製造し、及び検査する設備等が設備等の基準に適合していることを説明する書類
- 電磁的カジノ関連機器等を製造した者が受けた認定に係る認定書の写し(カジノ関連機器等輸入業者)
- 試験用の電磁的カジノ関連機器等(2台)
カジノ関連機器等輸入業者が指定試験機関の試験を受けた型式について検定を受けようとする場合にあっては、以下の書類等に代えて、試験の結果を記載した書類を添付します。
①電磁的カジノ関連機器等の諸元表 ②電磁的カジノ関連機器等の構造図、回路図及び動作原理図 ③電磁的カジノ関連機器等並びに電磁的カジノ関連機器等の部品及び装置の構造、材質及び性能の説明を記載した書類 ④電磁的カジノ関連機器等の写真 ⑤電磁的カジノ関連機器等の取扱説明書 ⑥電磁的カジノ関連機器等のソースコードの写し ⑦電磁的カジノ関連機器等についてあらかじめ行った技術上の規格への適合状況の確認の結果を記載した書類 | 試験の結果を記載した書類 |
指定試験機関の試験
指定試験機関の指定の公示があったときは、公示に係る試験事務を行う電磁的カジノ関連機器等の種別について検定を受けようとする者は、指定試験機関が行う試験を受けた後でなければ、カジノ管理委員会に対し、検定に係る申請書を提出することはできません。
検定の合格基準
以下の事由のいずれかに該当するときは、型式検定に合格することはできません。
- 申請に係る型式がカジノ管理委員会規則で定める技術上の規格に適合していないこと
- 申請に係る型式の電磁的カジノ関連機器等を製造し、及び検査する設備、体制及び手続がカジノ管理委員会規則で定める基準に適合していないこと
- 申請者がカジノ関連機器等輸入業者である場合において、申請に係る型式の電磁的カジノ関連機器等を製造した者がその製造所及び電磁的カジノ関連機器等の種別に係るカジノ関連機器等外国製造業の認定を受けていないこと
上記は消極的な事由であるため、これを逆に解釈すれば、以下の要件をすべて満たことが検定の合格基準となります。
- 技術上の規格に適合すること
- 設備、体制及び手続が基準に適合すること
- カジノ関連機器等外国製造業の認定を受けていないこと(カジノ関連機器等輸入業者である場合)
技術上の規格
技術上の規格については、カジノ委員会規則別表第三において詳細が設けられています。
設備等の基準
事項 | 基準 |
---|---|
1.設備の明確化及びその確保、設備の維持 | ①4から8までの事項における各工程に必要な設備の仕様や能力が明確になっているとともに、それらの設備が確保されていること ②以下の事項が社内規格に定められ、これらの設備の精度及び性能が適切に維持されていること イ 設備の保守、点検の方法及びその手順 ロ 作業に係る記録の方法 |
2.人員の確保、体制の明確化 | 4から8までの事項における各工程に必要な人員等が確保されるとともに、次に掲げる事項が明確になっていること ①各工程において配置する人員の数や班などの体制 ②確認特定カジノ関連機器等製造業務等従事者の配置状況 |
3.文書の管理 | 次に掲げる事項が社内規格に定められ、1、4から8までの事項における各工程において作成又は入手した文書が適切に管理されていること ①対象となる文書の種類 ②文書の保管、保護及び廃棄の方法 ③改ざん防止の方法 |
4.不適合品の管理 | 次に掲げる事項が社内規格に定められ、5から8までの事項における各工程において不適合品の管理が適切に行われていること ①不適合品の処理の方法 ②不適合品の保管の方法及びその手順 ③不適合品の保管における不正防止対策の方法 ④作業に係る記録の方法 |
5.外注・購買部品の検品及び保管 | 以下の事項が社内規格に定められ、それに基づいて外注・購買部品の検品及び保管が適切に行われていること ①部品の検品の方法及びその手順 ②部品の保管の方法及びその手順 ③作業及び検査結果に係る記録の方法 ④その他作業に必要な文書 |
6.製造工程の管理 | 製造工程が明確化されるとともに、以下の事項が社内規格に定められ、工程管理が適切に行われていること ①製造の方法及びその手順 ②製造中の製品の保管の方法 ③作業に係る記録の方法 ④その他作業に必要な文書 |
7.プログラム記憶装置の複製工程の管理、プログラム記憶装置の識別・追跡 | プログラム記憶装置の複製工程が明確化されるとともに、以下の事項が社内規格に定められ、工程管理、プログラム記憶装置の識別(マーキング、ラベル付け等を行うことによって区別を行うこと)及び追跡が適切に行われていること ①プログラム記憶装置の複製の方法及びその手順 ②製造中のプログラム記憶装置及びマスタープログラム記憶装置の保管の方法 ③作業に係る記録の方法 ④不正防止対策の方法 ⑤プログラム記憶装置の識別及び追跡の方法 ⑥プログラム記憶装置の追跡に係る記録の方法 ⑦その他作業に必要な文書 |
8.完成検査工程の管理 | 完成検査工程が明確化されるとともに、以下の事項が社内規格に定められ、工程管理が適切に行われていること ①検査の方法及びその手順 ②検査中の製品の保管の方法 ③作業及び検査結果に係る記録の方法 ④その他作業に必要な文書 |
合格の取消し
カジノ管理委員会は、検定に合格した型式について、以下のいずれかの事実が判明したときは、検定の合格を取り消すことができるものとされています。
- 偽りその他不正の手段により当該検定を受けたこと
- 検定に合格した型式が技術上の規格に適合していないこと
- 検定に合格した型式の電磁的カジノ関連機器等を製造し、又は検査する設備等が基準に適合していないこと
電磁的カジノ関連機器等に付す表示
検定を受けた者は、検定に合格した型式の電磁的カジノ関連機器等に、検定に合格した型式の電磁的カジノ関連機器等である旨の表示を付す必要があります。
この表示は、検定に合格した型式の電磁的カジノ関連機器等の見やすい箇所に容易に毀損しないよう付する必要があります。
ただし、電磁的カジノ関連機器等に表示を付すことが困難な場合にあっては、表示を検定に合格した型式の電磁的カジノ関連機器等に電磁的方法により記録し、特定の操作によって当電磁的カジノ関連機器等に接続した他の機器に直ちに明瞭な状態で表示することをもって代えることができます。
なお、何人も、検定に合格した型式の電磁的カジノ関連機器等以外の機器等には、この表示を付し、又はこれと紛らわしい表示を付すことはできません。
自己確認
カジノ関連機器等製造業者又はカジノ関連機器等輸入業者は、非電磁的カジノ関連機器等を製造し、又は輸入しようとするときは、自己確認がされた非電磁的カジノ関連機器等を輸入する場合を除き、以下の事項について自ら確認を行う必要があります。
また、カジノ関連機器等外国製造業者が非電磁的カジノ関連機器等を日本国内に輸出しようとするときは、これらの事項について、自ら確認をすることができます。(任意)
- 製造され又は輸入される非電磁的カジノ関連機器等の設計が、非電磁的カジノ関連機器等が技術基準に適合することを確保できるものであること
- 製造され又は輸入される非電磁的カジノ関連機器等が上記の設計に合致するものとなることを確保するための措置に関する事項が定められ、かつ、その事項が適切なものであること
自己確認をしたカジノ関連機器等製造業者、カジノ関連機器等輸入業者又はカジノ関連機器等外国製造業者は、、遅滞なく、以下の事項をカジノ管理委員会に届け出るものとされています。
- 自己確認実施製造業者等の名称及び住所並びに代表者の氏名
- 自己確認に係る非電磁的カジノ関連機器等の種別
- 設計及び措置に関する事項
- 自己確認の結果
- 製造され又は輸入される非電磁的カジノ関連機器等の設計が、非電磁的カジノ関連機器等の技術上の基準に適合することを確保できることを確認するために十分な方法
- 製造され又は輸入される非電磁的カジノ関連機器等が設計に合致するものとなることを確保するための措置に関する事項が定められていることを確認するために十分な方法、及びその方法が適切であること
自己確認を実施した製造業者等は、上記の4〜6の事項について記録を作成し、これを保存しなければならない。3年間保存する必要があります。
また、設計又は措置に関する事項の変更をしようとするときは、自己確認実施製造業者等は改めて自己確認を行い、カジノ管理委員会に届け出るものとされています。この場合においては、記録及び保存についても上記の規定が適用されます。
届出に必要となる書類
- 自己確認届出書
- 非電磁的カジノ関連機器等の設計図その他の非電磁的カジノ関連機器等の設計が技術上の基準に適合していることを説明するために必要な書類
- 非電磁的カジノ関連機器等が設計に合致するものとなることを確保するための措置に関する事項が記載された書類
- 上記の措置に関する事項が適切であることを説明するために必要な書類
まとめ
カジノ関連機器等及びカジノ関連機器等製造業者については、IR実施法関連法令の中でも多くの条項が設けられています。このようなことからも、カジノ関連事業にいかに公正性が求められているのかがお分かりいただけるように思います。
カジノに関しては、新しいレジャーとして期待する声や、財政面の改善に資する事業として期待する声が寄せられる一方で、治安の悪化や青少年の健全な育成に悪影響を及ぼすリスクを懸念して反発する意見も根強く、これら双方の意見を制度に反映したことがこの制度を複雑にしている要因であることは間違いありません。
また、カジノという従来の日本には存在しなかった制度であるため、国や自治体もまずはハードルを上げて、試行錯誤を繰り返しながら制度の舵取りを行っていくものと予測します。
いずれにせよ法制化された以上、制度は動き始めています。行政書士として、一国民として、制度が適切に運用され、日本全体の利益につながるよう見守るように心がけたいと思います。
弊所は従前よりレジャー系やアミューズメント系の許認可に関する手続きのサポートを十八番にしています。カジノ関連事業のサポートと手続きに関するご相談はどうぞお気軽にご用命代ください。