カジノ関連機器等製造業等の許可に係る審査基準について

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2018年に可決され成立した特定複合観光施設区域整備法(以下、IR実施法)では、カジノ関連機器等製造業、カジノ関連機器等輸入業及びカジノ関連機器等修理業については許可制を採用し、その参入にハードルを設けることによりカジノ事業に関与する者について十分な社会的信用を担保させ、カジノ事業の適正化を図っています。

許可の審査にあたっては、IR実施法の条文に基づき、内閣府が「特定複合観光施設区域整備法に基づくカジノ関連機器等製造業等の許可等及び指定試験機関の指定等に関する許認可等の処分に係る審査基準」を設けてこれを公開しています。

そこで本稿では、IR実施法と関連法令のうち、カジノ関連機器等製造業等の詳細な許可基準について、分かりやすく解説していきたいと思います。

許可の基準

カジノ管理委員会は、カジノ関連機器等製造業等許可の申請があったときは、以下の基準を満たしているか否かを審査して許可の諾否を決定します。

  1. 申請者が、人的構成に照らして、申請に係るカジノ関連機器等製造業等を的確に遂行することができる能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であること
  2. 申請者の役員が十分な社会的信用を有する者であること
  3. 出資、融資、取引その他の関係を通じて申請者の事業活動に支配的な影響力を有する者が十分な社会的信用を有する者であること
  4. 申請者が申請に係るカジノ関連機器等製造業等を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有し、かつ、カジノ関連機器等製造業等に係る収支の見込みが良好であること
  5. カジノ関連機器等製造業の許可を受けようとするときは、製造所の構造及び設備並びに技術水準が、型式検定又は自己確認の規定を遵守してカジノ関連機器等を製造するために適切なものであり、かつ、カジノ関連機器等製造業を的確に遂行するために十分なものであること
  6. 定款及び業務方法書の規定が、法令に適合し、かつ、申請に係るカジノ関連機器等製造業等を適正に遂行するために十分なものであること

上記がIR実施法において定められている許可基準ですが、表現が抽象的すぎていまいち全体像をつかみきることができません。そこで内閣府は前述した審査基準の中で、この基準を以下の4つの要素に分解し要約して、そのすべてについて要件を満たすことを許可の基準としています。

  • 業務遂行能力
  • 社会的信用性
  • 財産的基礎
  • 業務の適正を確保するための体制
  • 構造設備技術(カジノ関連機器等製造業)

業務遂行能力

申請者には、業務を的確に遂行することができる能力が要求されています。この業務遂行能力を担保するものとして以下の基準が設定されており、業務遂行能力を有するものとして認められるためには、このいずれについても該当することが必要とされています。

  • カジノ関連機器等製造業等に係る業務の的確な遂行に必要な人員が各部門に配置される組織体制、人員構成にあること
  • 役員が、その経歴及び能力に照らして、カジノ関連機器等製造業者等としての業務を的確に遂行することができる十分な資質を有していること

社会的信用性

申請者及びその役員のほか、出資、融資、取引その他の関係を通じて申請者の事業活動に支配的な影響力を有する者について十分な社会的信用を有する者であることが要求されています。

例えば、以下の事項を総合的に勘案してカジノ関連機器等製造業等に関連して不正又は不誠実な行為を行うおそれがないと認められる者であることが必要とされています。 

  • 暴力団との関係の有無・内容
  • 法令遵守状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
  • 社会生活における活動の状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
  • 経済的状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
  • 他者との不適切な社会的・経済的な関係の有無・内容

財産的基礎

カジノ関連機器等製造業等を健全に遂行する観点から、以下の要件を満たすことが要求されています。

  • 財務基盤が安定していること
  • 資金繰りが確保されていること

業務の適正を確保するための体制

業務の適正を確保するための体制を担保するものとして業務方法書がありますが、その審査基準については、必要記載項目ごとに以下のとおりとなっています。 

カジノ関連機器等製造業等に係る業務に関し、その種別に応じたカジノ関連機器等の管理の方法(カジノ関連機器等製造業及びカジノ関連機器等輸入業に係る業務にあっては、法の遵守のための管理の方法を含む)①カジノ関連機器等製造業等に係る業務に関し、その種別に応じ、適切にカジノ関連機器等を管理する方法が具体的に列挙されていること
②カジノ関連機器等以外の機器等の製造、輸入、販売、貸与又は保守若しくは修理を業として行う場合、カジノ関連機器等とカジノ関連機器等以外の機器等との分別管理の方法が記載されていること
カジノ関連機器等製造業等に係る業務の執行が法令に適合することを確保するための体制その他カジノ関連機器等製造業等に係る業務の適正を確保するための体制の整備に関する事項①法令等遵守の実践に係る基本的な方針、具体的な実践計画、行動規範等が策定されていること
②カジノ関連機器等の製造、輸入、販売、修理、企画、開発、管理、苦情・紛争処理、社内教育・研修、販売代理店の管理、法令等遵守の管理、内部監査、財務管理等を的確に行うことができる組織体制となっていること(組織図及び各組織が担当する業務の概略等が記載されていること)
③カジノ関連機器等製造業等以外の事業も営む場合、その事業も含めた事業全体について法令等遵守の管理、内部監査、財務管理等を的確に行うことができる組織体制となっていること
④カジノ関連機器等製造業等を担当する役員の担当業務並びにカジノ関連機器等製造業等を担当する組織及びその事務分掌について、社内規則に規定する旨が定められているとともに、社内規則が整備されていること
⑤法令適合上の問題が発生した場合のカジノ管理委員会への報告を行う手続及び体制が整備されていること
⑥法令等遵守の管理、財務管理を行う担当者又は担当部署が、カジノ関連機器等製造等業務を行う担当者又は担当部署から独立した体制となっていること
⑦内部監査の担当者又は担当部署が、カジノ機器等製造等業務を行う担当者又は担当部署に対して十分な牽制機能が働く独立した体制となっていること
⑧業務の規模・特性に照らして役員・従業員の能力の基準が明らかになっていること
カジノ関連機器等製造業等に係る業務の一部を他の者に行わせる場合には、行わせる業務の内容並びに行わせる者の選定に係る基準及び手続業務の一部を行わせる先が、行わせる業務を的確に遂行できる者であるよう、選定基準が記載されているとともに、選定に係る手続が具体的に記載されていること
特定カジノ関連機器等製造業務等に従事することが予定されている者の十分な社会的信用及び欠格事由のいずれにも該当しないことを点検するために必要な措置に関する事項①十分な社会的信用を確保するための宣言が記載されていること(暴力団との関係の有無・内容、刑事処分歴の有無・内容、カジノ事業等の活動の状況に関する不適切な経歴の有無・内容、金銭管理状況に関する不適切な経歴の有無・内容を明らかにすることを含む)
②適切な点検の方法・深度及びその点検方法・深度に従って点検することが記載されていること
③特定カジノ関連機器等製造業務等に従事させようとするときのみならず、業務に従事させることを予定して採用しようとするときにも点検を実施することが記載されていること
④点検するためのデータベースの充実化に向けた取組の方針を策定することが記載されていること

構造設備技術

許可を受けようとする種別がカジノ関連機器等製造業であるときは、以下の基準が加わります。

  • 申請に係る種別のカジノ関連機器等を製造するために必要な設備及び器具を備えていること
  • 適切な製造管理及び品質管理の体制を有していること
  • カジノ関連機器等の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること(ただし、申請者の他の試験検査設備又は他の試験検査機関を利用して自己の責任において当該試験検査を行う場合であって、支障がないと認められるときはこの限りでない)
  • カジノ関連機器等及び資材並びに原料を区分して、保管するために必要な設備を有していること
  • カジノ関連機器等製造業に係る重要な設備、情報等について、セキュリティ対策が講じられていること

まとめ

特定複合観光施設(IR施設)に関連する法制度には、本稿でご案内したカジノ関連機器等製造業者の許可制度のほかにも、主要株主や施設権利者に関する認可制度等があります。これらの規制は事業に関与しようとする者について社会的信用性を確保するために設けられたものですが、このようなことから、カジノ関連の事業に参入することにいかに高いハードルが設定されているのかがお分かりいただけるように思います。

カジノに関しては、新しいレジャーとして期待する声や、財政面の改善に資する事業として期待する声が寄せられる一方で、治安の悪化や青少年の健全な育成に悪影響を及ぼすリスクを懸念して反発する意見も根強く、これら双方の意見を制度に反映したことがこの制度を複雑にしている要因であることは間違いありません。

また、カジノという従来の日本には存在しなかった制度であるため、国や自治体もまずはハードルを上げて、試行錯誤を繰り返しながら制度の舵取りを行っていくものと予測します。

いずれにせよ法制化された以上、制度は動き始めています。行政書士として、一国民として、制度が適切に運用され、日本全体の利益につながるよう見守るように心がけたいと思います。

弊所は従前よりレジャー系やアミューズメント系の許認可に関する手続きのサポートを十八番にしています。カジノ関連事業のサポートと手続きに関するご相談はどうぞお気軽にご用命代ください。

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