カジノ事業者の主要株主等の認可申請について

握手をかわすビジネスマン

2018年に可決され成立した特定複合観光施設区域整備法(以下、IR実施法)では、カジノ施設を含む統合型リゾート施設(特定複合観光施設)に関して必要な事項を定めていますが、条文中ではカジノ事業者の主要株主等についても触れられており、主要株主等になろうとする者に対する規制が設けられています。

具体的には、一定の取引又は行為によりカジノ事業者の主要株主等(5%以上の議決権等の保有者)になろうとする者又は主要株主等になる法人等の設立をしようとする者について、カジノ管理委員会の認可を受けることを義務付けています。

これはカジノ事業者に大きな影響を与えうる立場である主要株主等について、十分な社会的信用を担保させ、カジノ事業の適正な運営に資するために設けられた制度です。

そこで本稿では、IR実施法と関連法令の概要のうち、カジノ事業者の主要株主等に関する事項及び主要株主等となる者の認可申請について、分かりやすく解説していきたいと思います。

主要株主等

主要株主等とは、以下の基準値(主要株主等基準値)以上の数の議決権又は株式若しくは持分を保有する者をいいます。

議決権総株主又は総出資者の議決権の100分の5
株式又は持分発行済株式(当該会社の有する自己の株式を除く)又は出資の総数又は総額の100分の5
議決権等に含むもの①信託財産である議決権等で、持株会社又は議決権等の保有者が委託者若しくは受益者として行使し、又はその行使について指図を行うことができるもの
②発行者に対抗することができない株式又はこれに係る議決権
議決権等に含まれないもの①金銭又は有価証券の信託に係る信託財産として所有する議決権等(委託者又は受益者が行使し、又はその行使について持株会社若しくは議決権等の保有者に指図を行うことができるものに限る)
②有価証券関連業を行う者が有価証券の引受けに係る業務により所有する株式及びこれに係る議決権
③会社の有する自己の株式

また、ある者(A)と以下の特別の関係にある者が議決権等の保有者であるときは、特別の関係にある者が保有する議決権等は、その者(A)がこれを保有しているものとみなされます。

対象議決権等を保有している者又はその被支配会社が対象議決権等を保有している者①共同保有者
②配偶者
③被支配会社
④支配株主等
⑤支配株主等の他の被支配会社
上記以外の者①共同保有者
②配偶者
支配株主等とは、会社の総株主又は総出資者の議決権の100分の50を超える議決権を保有している者をいい、被支配会社とは、支配株主等によりその総株主又は総出資者の議決権の100分の50を超える議決権を保有されている会社をいう。

本来であれば株式の取得や譲渡は、自由に取引することができるのが原則ですが、カジノ事業における主要株主等には、後述するように一定の制限が設けられています。

主要株主等の認可

以下の取引若しくは行為によりカジノ事業者の主要株主等になろうとする者又はカジノ事業者の主要株主等の保有者になる法人等の設立をしようとする者は、カジノ管理委員会の認可を受ける必要があります。

  • カジノ事業者の持株会社の議決権等の取得
  • 法人を当事者とする合併で合併後も法人が存続するもの
  • 法人を当事者とする分割
  • 法人を当事者とする事業譲渡

なお、認定設置運営事業者がカジノ事業の免許を受けたときは、免許の申請書に記載された主要株主等は、その免許の時に認可を受けたものとみなされます。

また、認可に係る取引若しくは行為又は法人等の設立によりカジノ事業者の認可主要株主等になった者は、遅滞なく、その旨をカジノ管理委員会に届け出るものとされています。

認可の申請

認可を受けようとする者は、以下の事項を記載した申請書をカジノ管理委員会に提出することにより申請を行います。

  • 申請者の氏名又は名称及び住所(申請者が法人等であるときは、その代表者又は管理人の氏名)
  • 申請者が法人等であるときは、その役員の氏名又は名称及び住所
  • 申請に係る認可を受けて法人等が設立されるときは、法人等の名称及び住所、代表者又は管理人の氏名並びに役員の氏名又は名称及び住所
  • 主要株主等になる法人等を設立する行為の内容

認可申請に必要となる書類

  • 認可申請書
  • 欠格事由のいずれにも該当しない者であることを誓約する書面
  • 定款及び登記事項証明書(申請者が法人であるとき)
  • 申請に係る認可を受けて法人が設立されるときは、その法人の定款(これに準ずるものを含む)
  • 理由書
  • 申請者が特定保有者であるときは、その旨及びその事由の生じた年月日を証する書類
  • 申請者、法定代理人及び役員の戸籍謄本又はこれに準ずる書面(外国人にあっては、在留カード、特別永住者証明書、住民票、旅券その他の身分を証する書類の写し)(法人にあっては、定款及び登記事項証明書(これらに準ずるものを含む))
  • 質問票に必要な事項を記載したもの及びその記載内容を証する資料並びに申請者が作成した同意書
  • 創立総会の議事録(法人等が株式移転、合併又は会社分割により設立される場合にあっては、これに関する株主総会又は社員総会の議事録)その他の法人等の設立に必要な手続があったことを証する書面(申請者が申請に係る認可を受けて法人等の設立をしようとする者であるとき)
  • その他審査に必要な資料

認可の基準

カジノ管理委員会は、認可の申請があったときは、申請者(営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であるときは、その法定代理人)、法人等及びその役員が、十分な社会的信用を有する者であることを審査し、認可の可否を決定します。

なお、カジノ管理委員会は、認可を受けることなくカジノ事業者の主要株主等になった者若しくはカジノ事業者の主要株主等として設立された法人等に対し、カジノ事業者の主要株主等でなくなるよう、所要の措置を講ずべきことを命ずることができます。

欠格事由

認可の申請について、申請者が以下の事由に該当するとき、又は申請書若しくはその添付書類のうちに虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、カジノ事業の主要株主等としての適正を欠く者として免許を受けることはできません。

  1. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者又は外国の法令上これと同様に取り扱われている者
  2. 認可主要株主等の認可を取り消され、認可施設土地権利者の認可を取り消され、指定試験機関の認可主要株主等の認可を取り消され、又はIR実施法に相当する外国の法令の規定により外国において受けているこれらの認可に相当する行政処分を取り消され、取消しの日から起算して5年を経過しない者
  3. 上記の認可の取消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日若しくはこれらに相当する行政処分の取消しの日前60日以内に認可若しくはこれに相当する行政処分を取り消された法人等の役員であった者又はこれらの行政処分に相当する行政処分の更新を拒否された法人等の役員であった者で、取消し又は更新の拒否の日から起算して5年を経過しないもの
  4. 解任を命ぜられ、又はIR実施法に相当する外国の法令の規定により解任を命ぜられた役員で、解任の日から起算して5年を経過しないもの
  5. 特定カジノ業務の従業者の確認を取り消され、特定カジノ施設供用業務の従業者の確認を取り消され、特定カジノ関連機器等製造業務等の従業者の確認を取り消され、特定試験業務の従業者の確認を取り消され、若しくはIR実施法に相当する外国の法令の規定により外国において受けているこれらの確認に相当する行政処分を取り消され、又はこれらの確認若しくはこれらに相当する行政処分の更新を拒否された場合における確認又はこれに相当する行政処分に係る従業者であって、取消し又は更新の拒否の日から起算して5年を経過しないもの(取消し又は更新の拒否について当該従業者の責めに帰すべき事由があるときに限る)
  6. 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む)に処せられ、刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
  7. 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から起算して5年を経過しない者
  8. IR実施法若しくはこれに相当する外国の法令の規定に違反し、又は刑法第185条若しくは第187条の罪、組織的犯罪処罰法第9条第1項から第3項まで、第10条、第11条若しくは第17条の罪、暴力団対策法第46条から第四十九条まで、第50条(第1号に係る部分に限る)若しくは第51条の罪、犯罪収益移転防止法第25条から第31条までの罪その他政令で定める罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む)に処せられ、刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
  9. 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人のうちに上記のいずれかに該当する者がある者
  10. 法人等であって、カジノ事業の免許を取り消され、カジノ施設供用事業の免許を取り消され、カジノ関連機器等製造業等の許可を取り消され、カジノ関連機器等外国製造業の認定を取り消され、指定試験機関の指定を取り消され、若しくはIR実施法に相当する外国の法令の規定により外国において受けているこれらの免許、許可、認定若しくは指定に相当する行政処分を取り消され、又はこれらの免許、許可、認定若しくは指定若しくはこれらに相当する行政処分の更新を拒否され、当該取消し又は更新の拒否の日から起算して5年を経過しない者
  11. 法人等であって、2から4のいずれかに該当するもの
  12. 法人等であって、IR実施法若しくはこれに相当する外国の法令の規定に違反し、又は組織的犯罪処罰法第17条の罪、犯罪収益移転防止法第31条の罪その他政令で定める罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む)に処せられ、刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しないもの
  13. 法人等の役員のうちに9に該当する者がある者

特定保有者

取引若しくは行為又は法人等の設立以外の事由によりカジノ事業者の主要株主等になった者(特定保有者)は、その事由の生じた日から起算して60日を経過する日(猶予期限日)以内にカジノ事業者の主要株主等でなくなるよう、所要の措置を講ずる必要があります。ただし、猶予期限日後も引き続きカジノ事業者の主要株主等であることについてカジノ管理委員会の認可を受けたときを除きます。

特定保有者は、カジノ事業者の主要株主等でなくなったときは、遅滞なく、その旨をカジノ管理委員会に届け出るものとされています。

なお、カジノ管理委員会は、認可を受けることなく猶予期限日後もカジノ事業者の主要株主等である者に対し、カジノ事業者の主要株主等でなくなるよう、所要の措置を講ずべきことを命ずることができます。

変更の承認及び届出

法人等であるカジノ事業者の認可主要株主等は、その役員の変更をしようとするときは、カジノ管理委員会の承認を受ける必要があります。この際の承認の基準及び欠格事由については、主要株主等の認可申請と同一の要件が適用されます。

また、認可主要株主等が以下の軽微な変更に該当する変更をしたときは、遅滞なく、その旨をカジノ管理委員会に届け出るものとされています。

  • 氏名、住所若しくは本籍(外国人にあっては国籍等)
  • 法人の名称又は住所
  • 法人の役員の氏名若しくは名称又は住所若しくは本籍(外国人にあっては国籍等)
  • 法定代理人
  • 法人の代表者又は管理人(役員の変更を伴わないものに限る)
  • 法定代理人の氏名若しくは名称又は住所若しくは本籍(外国人にあっては国籍等)
  • 定款(これに準ずるものを含む)
  • 法定代理人の定款(これに準ずるものを含む)(法定代理人が法人である場合)

認可の取消し及び失効

カジノ管理委員会は、カジノ事業者の認可主要株主等について、以下のいずれかの事実が判明したときは、その認可を取り消すことができます。

  • 偽りその他不正の手段により認可又は承認を受けたこと
  • 基準に適合していないこと
  • 欠格事由のいずれかに該当していること

また、①認可主要株主等がカジノ事業者の主要株主等でなくなったとき、又は②認可を受けた日から起算して6か月以内に認可があった事項が実行されなかったとき(やむを得ない理由がある場合において、あらかじめカジノ管理委員会の承認があったときを除く)は、認可はその効力を失うものとされています。

認可主要株主等がカジノ事業者の主要株主等でなくなったこと(①)により認可が失効したときは、認可に係る認可主要株主等であった者は、遅滞なく、その旨をカジノ管理委員会に届け出るものとされています。

株主等の社会的信用確保

カジノ事業者は、カジノ事業者の議決権等の保有者の十分な社会的信用を確保するために必要な措置として、以下の措置を講ずる必要があります。

  • 次のいずれかの措置をとること
    • カジノ事業者の株式(新株予約権を含む)又は持分の譲渡に承認又は承諾を要することとし、承認又は承諾に当たっては、譲受人が十分な社会的信用を有する者であることを確認することとする措置
    • カジノ事業者の議決権等の保有者が十分な社会的信用を有する者でない者であることが判明した場合において、議決権等の保有者から当該者を排除するための方法を定める措置
  • 上記の措置を講ずるために必要な情報を収集し、一元的に管理すること
  • 都道府県警察、都道府県暴力追放運動推進センターその他の関係機関との密接な連絡を保つよう努めること
  • カジノ事業者の議決権等の保有者又は議決権等の保有者になろうとする者の属性の確認を行うなど、これらの者に関する情報を収集し、適切に管理すること

カジノ事業者は、事業年度ごとにカジノ事業者の議決権等の保有者を記載した書類を作成し、毎事業年度経過後3か月以内にカジノ管理委員会に提出する必要があります。

まとめ

主要株主等に関する規制は、事業に関与しようとする者について、社会的信用性を確保するための制度です。銀行法においても採用されている制度であることから、カジノ事業に参入することがいかに高いハードルであるかがお分かりいただけるように思います。

カジノに関しては、新しいレジャーとして期待する声や、財政面の改善に資する事業として期待する声が寄せられる一方で、治安の悪化や青少年の健全な育成に悪影響を及ぼすリスクを懸念して反発する意見も根強く、これら双方の意見を制度に反映したことがこの制度を複雑にしている要因であることは間違いありません。

また、カジノという従来の日本には存在しなかった制度であるため、国や自治体もまずはハードルを上げて、試行錯誤を繰り返しながら制度の舵取りを行っていくものと予測します。

いずれにせよ法制化された以上、制度は動き始めています。行政書士として、一国民として、制度が適切に運用され、日本全体の利益につながるよう見守るように心がけたいと思います。

弊所は従前よりレジャー系やアミューズメント系の許認可に関する手続きのサポートを十八番にしています。カジノ関連事業のサポートと手続きに関するご相談はどうぞお気軽にご用命代ください。

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