介護タクシーのぶら下がり許可(ヘルパータクシー)│訪問介護員等による自家用自動車有償運送について
自家用自動車は原則として有償で運送の用に供することはできません。ただしこれにはいくつか例外があって、公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するときは、例外的に自家用車による人の有償輸送が認められています。
訪問介護と介護タクシーを営む事業者が本業に付随する形で自家用車を利用する有償運送がこの例外に該当し、これらを運営する法人は、国土交通大臣の許可を受けることにより自家用自動車を使用した有償運送を行うことができるようになります。
そこで本稿では、新たに自家用車による有償輸送を検討する訪問介護及び介護タクシーを営む法人の皆さまに向けて、自家用自動車有償運送許可(通称ぶら下がり許可)の基準や手続きの方法について詳しく解説していきたいと思います。
目 次
ぶら下がり許可とは
訪問介護員等による自家用自動車有償運送を行う際に受ける許可を「ぶら下がり許可」と呼ぶことがあります。これはこの許可が単独で受けるものではなく、元々訪問介護事業者の指定と介護タクシー(一般乗用旅客自動車運送事業【福祉限定】)の許可の両方を受けている法人が許可申請の対象となっていることに由来しています。
表現が妥当であるかどうかは別として、本体の許可に「ぶら下がる」かのような体をなしていることからこう呼ばれるようになりました。逆に言えば、指定も許可も受けていない事業者は、ぶら下がれる本体がないため、訪問介護員等による自家用自動車有償運送の許可を単独で受けることはできないことになります。
間違われやすい点としては、この許可が法人に対するものではなく、訪問介護員等の自家用自動車に対して与えられるものであるという点です。このため許可を受けていた自家用自動車の使用者である職員が辞めてしまったときは、許可の効力も失われてしまうことになります。
また、訪問介護事業者として指定を受ける前提条件が「法人であること」となっているので、必然的に個人事業でこの許可を取得することはできません。
なお、訪問介護事業所等には障害者総合支援法に基づく指定居宅介護事業所も含まれるため、訪問介護事業所だけではなく、居宅介護事業所が居宅介護従事者の自家用車を使用して要介護者等の輸送を行うことも可能となっています。
★ポイント
- 自家用自動車有償運送の許可を受けるためには訪問介護の指定と介護タクシーの許可の両方が必要
- 自家用自動車有償運送の許可は法人しか受けることができない
許可取得のメリット
自家用自動車有償運送の許可を取得するメリットは以下の点にあります。
- 自社従業員(ヘルパー)の自家用車を利用することができる
- 新車を購入することなく事業を拡大することができる
- ヘルパータクシーには二種免許が不要(ただし、一種免許の場合は福祉有償運送運転者講習を受講することが条件)
- 事業用ナンバーへの変更が不要
上記が許可取得のおもなメリットになりますが、後述するように利用用途がケアプランに基づいた輸送のみに限定されますので、ケアプランに記載のない利用用途以外への輸送は認められていないのでご注意ください。
なお、ヘルパーさんがヘルパーさんの自家用車で輸送を行うことから、自家用自動車有償運送の許可を受けた介護タクシーを「ヘルパータクシー」と呼ぶことがあります。
許可の基準
- 輸送の安全を確保する措置を行うこと
- ケアプランに基づく輸送であること
- 訪問介護員等が第2種運転免許を取得している又は適切な講習を受けていること
- 乗車定員11人未満の自動車であること
- 任意保険に加入していること車外に適切な表示を行うこと
- 車内に適切な表示を行うこと
- 欠格事由に該当しないこと
- 営業所において運送の引受を行うこと
- 旅客に適切な告知を行うこと
輸送の安全の確保に係る措置
- 運行管理を行う体制が整備されていること
- 運行管理の指揮命令系統が明確であること
- 運行管理者の選任が適切であること
- 事業用自動車及び契約自家用自動車の合計数が5両以上の運行を管理する営業所ごとに1人以上の運行管理者を選任すること(40両を超えるごとに1を加算して得た数以上の運行管理者を選任すること)
- 事故防止についての教育及び指導体制が整備されていること
- 事故時の処理、連絡体制及び責任体制等が整備されていること
- 車両についての整備管理体制が整備されていること
- 苦情の処理体制が整備されていること
ケアプランに基づく輸送
有償輸送の目的は、ケアマネージャーが作成するケアプラン又は市町村が行う介護給付費支給決定の内容に基づいて、資格を有する訪問介護員等が訪問介護サービス等と連続して、又は一体として行う輸送に限定されます。
○ | ケアプラン又は市町村が行う介護給付費支給決定の内容に基づく輸送 |
☓ | ケアプランに基づかない単なる送迎、利用者家族の送迎、冠婚葬祭への送迎、旅行などへの利用 |
訪問介護員等の運転免許
- 道路交通法に規定する第2種運転免許を保有し、申請日前2年間において無事故であり、かつ、運転免許の停止処分を受けていないこと
- 道路交通法に規定する第1種運転免許を保有し、申請日前2年間において無事故であり、かつ、運転免許の停止処分を受けていないこと
自家用自動車を運転する訪問介護員等は、原則として二種運転免許が必要になりますが、一種免許の場合であっても、福祉有償運送運転者講習を受講することでこの条件はクリアすることができます。
乗車定員
使用する自家用自動車は、乗車定員11人未満の自動車(軽自動車を含む)であることが必要です。ただし、貨物の用に供する自動車をヘルパータクシーとして使用することはできません。
任意保険への加入
訪問介護員等の自家用自動車については、以下の額以上の損害賠償保険に加入すること、又は加入する具体的な計画があることが必要です。
対人損害 | 8,000万円以上 |
対物損害 | 200万円以上 |
車外表示
自家用自動車の車外には、①氏名、名称又は記号及び②「有償運送車両」又は「78条許可車両」の文字を、ステッカー、マグネットシート又はペンキ等容易に剥がれ落ちない方法により、自家用自動車の両側面に外部より見やすいように表示する必要があります。(記号と文字は1文字縦横5cm以上の横書き)
車内表示
自家用自動車の車内には、運賃及び料金に関する事項を表示する必要があります。
欠格事由
訪問介護員等が運転者として欠格事由に該当していないことも要件となります。
営業所における運送の引受
運送の引受けは、訪問介護事業所等の営業所においてのみ行われることが必要です。
適切な告知
運送の引受けに当たっては、あらかじめ旅客に対して次の事項を告知する必要があります。
- 訪問介護事業者等と要介護者等との運送契約であること
- 運送責任は訪問介護事業者等が負うこと
- 自家用自動車による有償運送であること
許可申請
自家用自動車の有償運送の許可を申請しようとする者は、事業所所在地を管轄する運輸支局等に対し、以下の書類を提出することにより申請を行います。
- 自家用自動車有償運送許可申請書
- 自家用自動車有償運送許可申請者名簿
- 使用車両の明細を記載した書面
- 自動車検査証の写し
- 自動車の使用権原を証する書面
- 道路運送法第7条各号の規定に該当しないこと及び訪問介護員が十分な能力及び経験を有していると認められる書面(宣誓書)
- 自動車の運行管理等の体制を記載した書面
- 旅客自動車運送事業者において運行管理者を選任する場合には運行管理者資格者証の写し
- 旅客自動車運送事業者において定める事故等に対応する損害賠償能力の内容を記載した書面
- 運転免許証の写し
- 訪問介護事業所等の指定を受けた旅客自動車運送事業者と訪問介護員等との間で定める自家用自動車有償運送に関する契約書の写し
このうち有償運送許可申請書には、以下の事項を記載します。
- 氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名
- 運送需要者
- 運送しようとする人の数又は物の種類及び数量
- 運送しようとする期日若しくは期間又は区間若しくは区域
- 有償運送を必要とする理由
許可申請は訪問介護事業者等が行いますが、許可は訪問介護員等の自動車ごとに行われます。許可の有効期間は2年間となります。
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訪問介護員等による自家用自動車有償運送の許可申請 | 44,000円〜 |
介護タクシー許可申請 (個人さま) | 132,000円〜 |
介護タクシー許可申請 (法人さま) | 165,000円〜 |
介護タクシー許可 + 自家用車有償運送許可 | 192,500円〜 |
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