送迎バス・スクールバス開業ガイド│特定旅客自動車運送事業許可申請について

スクールバス

特定旅客自動車運送事業とは、特定の者の需要に応じ、一定の範囲の旅客を運送する事業をいいます。送迎バスやスクールバスといわれるものがこれに該当し、実務上では介護施設や学校などにおいて利用されています。

弊所においても時折ご相談いただく事案ではありますが、特定旅客自動車運送事業に該当するケースはそう多くはありません。ご自身が予定される事業形態をかえりみながら、確認を行うという意味でもしっかりと内容を把握するようにしてください。

特定旅客自動車運送事業

特定旅客自動車運送事業とは、旅客自動車運送事業のうち、特定の者の需要に応じて一定の範囲の旅客を運送する事業をいいます。「特定の者の需要に応じて」とありますが、これは契約の相手方が特定単数(つまり単独の1社)であることを意味しています。

よくあるご相談に「自社所有のバスを使用して送迎を行いたい」というものがありますが、この場合は自社の自家用自動車を利用する自社への輸送であると考えられるため、特定旅客自動車運送事業には該当しません。たとえば保育園を運営する法人が自社のスクールバスを使用して園児を送迎するケースなどはこちらのパターンです。

ただし、有償でこれを行おうとするときは、自家用自動車有償運送許可を取得する必要性が生ずる可能性があります。

以下は特定旅客自動車運送事業への該当非該当を考える際に頻出する質問事項に対する回答ですが、参考資料としてしっかりと確認するようにしてください。

目的形態当否
ビル管理会社の管理するビルの入居企業の従業員あるいは住宅居住者が利用するケースビル管理会社がビルの入居企業の従業員及び住宅居住者を取扱客として輸送する形態ビル管理会社は単数の需要者として認められる
ビル管理会社の管理する物件が営業区域内に複数存在するケース同一のビル管理会社が管理する複数の物件において、ビル管理会社が、ビルの入居企業及び住宅居住者を取扱客として輸送する形態ビル管理会社は単数の需要者として認められる
工業団地以外の複数ビルを目的地又は乗車地とするケース工業団地に限らず複数ビルを目的地又は乗車地とすることができる
一つの管理会社が管理する複数ビルの入居企業の従業員や住宅居住者が利用するケース十分に合理性があれば認められる

一般旅客自動車運送事業との違いは、契約の相手方が不特定多数であるか、特定単数であるかの違いです。類似する事業形態である貸切バスは利用のつど相手方を変えて契約を結ぶため、この点において特定旅客自動車運送事業とは異なります。

特定旅客自動車運送事業特定の者の需要に応じ、一定の範囲の旅客を運送する旅客自動車運送事業
一般乗合旅客自動車運送事業乗合旅客を運送する一般旅客自動車運送事業
一般貸切旅客自動車運送事業一個の契約により乗車定員11人以上の自動車を貸し切って旅客を運送する一般旅客自動車運送事業
一般乗用旅客自動車運送事業一個の契約により乗車定員11人未満の自動車を貸し切って旅客を運送する一般旅客自動車運送事業

特定旅客自動車運送事業の許可

特定旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、営業所を管轄する運輸支局(国土交通大臣)に対して以下の書類を提出することにより申請し、その許可を受ける必要があります。

  • 許可申請書
  • 運行管理体制
  • 休憩、仮眠又は睡眠のための施設の概要
  • 損害賠償能力を証する書類
  • 定款又は寄附行為及び登記事項証明書(既存の法人)
  • 役員又は社員の名簿及び履歴書(既存の法人)
  • 定款(認証のある定款)又は寄附行為の謄本(法人を設立しようとするもの)
  • 発起人、社員又は設立者の名簿及び履歴書(法人を設立しようとするもの)
  • 株式の引受けの状況及び見込みを記載した書類(設立しようとする法人が株式会社であるとき)
  • 組合契約書の写し(法人格なき組合)
  • 組合員の履歴書(法人格なき組合)
  • 戸籍抄本及び履歴書(個人)
  • 欠格事由に該当しない旨の誓約書
  • 推定による1年間の取扱旅客の種類及び運輸数量並びにその算出の基礎を記載した書面
  • 特定の運送需要者との契約書又は協定書の写し
  • 申請者の登記事項証明書その他必要な書類

また、許可申請書には、次の事項を記載します。提出された申請書は、その後地方運輸局において審査が行われます。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
  • 路線又は営業区域、営業所の名称及び位置、主たる営業所の名称及び位置並びに自動車車庫の位置及び収容能力、営業所ごとに配置する事業用自動車の数に関する事業計画
  • 運送の需要者の氏名又は名称及び住所並びに運送しようとする旅客の範囲

許可基準

  • 事業の経営により、路線又は営業区域に関連する他の旅客自動車運送事業者による一般旅客自動車運送事業の経営及び事業計画の維持が困難となるため、公衆の利便が著しく阻害されることとなるおそれがないこと
  • 事業の計画が輸送の安全を確保するため適切なものであること

上記が道路運送法に規定する許可基準ですが、抽象的すぎてこれでは何を準備していいか分かりません。このため各運輸局では、以下の項目についてそれぞれ基準を設けて公示しています。

  1. 運送需要者
  2. 取扱客
  3. 路線又は営業区域
  4. 公衆の利便
  5. 営業所
  6. 事業用自動車
  7. 自動車車庫
  8. 休憩、仮眠又は睡眠のための施設
  9. 管理運営体制
  10. 運転者
  11. 法令遵守
  12. 損害賠償能力

眺めていてもやはりピンとはきませんので、それぞれの基準についても詳しく確認していくことにしましょう。

運送需要者

  • 運送需要者が原則として単数の者に特定されていること(実質的に単数と認められる場合を含む)
  • 需要者が運送契約の締結及び運送の指示を直接行い、第三者を介入させない等自らの運送需要を満たすための契約であると認められること

取扱客

  • 一定の範囲に限定されていること
  • 需要者の事業目的を達成するために需要者に従属する者を送迎する場合、需要者が自己の施設を利用させることを事業目的として客を送迎する場合等需要者の負担で輸送することに十分合理性が認められる取扱旅客であること

路線又は営業区域

  • 需要者の需要と整合性のある路線又は営業区域が設定されていること
  • 路線については、事業用自動車の運行上支障のないものであること

公衆の利便

申請に係る事業の経営により、 路線又は営業区域に関連する他の旅客自動車運送事業者による一般旅客自動車運送事業の経営及び事業計画の維持が困難となるため、公衆の利便が著しく阻害されることとなるおそれがないこと

営業所

  • 土地・建物について1年以上の使用権限があること
  • 建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触しないこと
  • 事業計画を的確に遂行することができる規模があること

営業所とは、営業所、事務所又は出張所などの名称を問わず、配置する事業用自動車に係る運行管理及び利用者への営業上の対応を行う事務所を指します。営業所には、使用権原を有することが求められますが、自己保有の場合は登記簿謄本、借用の場合は契約期間が概ね3年以上の賃貸借契約書を、提示し、又は写しを提出することにより使用権原を有するものとみなされます。

ただし、賃貸借契約期間が1年未満であっても、契約期間満了時に自動的に契約が更新されるものと認められる場合には、例外的に使用権原を有するものとみなされます。

事業用自動車

事業用自動車は、申請者が使用権原を有するものであることが求められます。リース車両については、リース契約期間が概ね1年以上であることとし、契約書の提示又は写しの提出をもって使用権原を有するものとみなされます。

自動車車庫

  • 原則として営業所に併設されていること
  • 営業所に併設できない場合は、営業所から直線距離で2kmの範囲内にあり、運行管理をはじめとする管理が十分可能な場所にあること
  • 車両と自動車車庫の境界までの間隔が50cm以上確保されていること
  • 車両と車両の間隔が50cm以上確保されていること
  • 営業所に配置する事業用自動車の全てを収容できること
  • 他の用途に使用される部分と明確に区画されていること
  • 土地・建物について1年以上の使用権限を有すること
  • 建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触していないこと
  • 事業用自動車の点検、整備及び清掃のための施設が設けられていること
  • 事業用自動車の出入りに支障がなく、前面道路が車両制限令に抵触していないこと
  • 車庫前面道路が私道の場合は私道について使用権原を有する者の承諾があり、かつ私道に接続する道路が車両制限令に抵触していないこと

自己保有の場合は登記簿謄本、借用の場合は契約期間が概ね1年以上の賃貸借契約書を提示し、又は写しを提出することにより、使用権原を有するものとみなされます。

ただし、賃貸借契約期間が1年未満であっても、契約期間満了時に自動的に契約が更新されるものと認められる場合には、使用権原を有するものとみなされます。

なお、車庫の前面道路については、出入りに支障がないことが明らかな場合を除き、道路幅員証明書の添付を求められます。

休憩、仮眠又は睡眠のための施設

  • 原則として営業所又は自動車車庫に併設されていること
  • 営業所・自動車車庫に併設できない場合は、営業所及び自動車車庫のいずれからも直線距離で2km以内の範囲内であること
  • 事業計画を適切に遂行するための規模があり、適切な設備を有すること
  • 土地・建物について1年以上の使用権限を有すること
  • 建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触していないこと

自己保有の場合は登記簿謄本、借用の場合は契約期間が概ね1年以上の賃貸借契約書の提示又は写しの提出をもって、使用権原を有するものとみなされます。

ただし、賃貸借契約期間が1年未満であっても、契約期間満了時に自動的に契約が更新されるものと認められる場合には、使用権原を有するものとみなされます。

管理運営体制

  • 法人の役員のうち1名以上が専従であること
  • 営業所ごとに、配置する事業用自動車の数により義務づけられる常勤の有資格の運行管理者の員数を確保する管理計画があること
  • 運行管理の担当役員等運行管理に関する指揮命令系統が明確であること
  • 自動車車庫を営業所に併設できない場合は、自動車車庫と営業所に連絡網が規定されているなど、常時密接な連絡をとれる体制が確立されるとともに、点呼等が確実に実施される体制が確立されていること
  • 事故防止等についての教育及び指導体制を整え、かつ、事故の処理及び自動車事故報告規則に基づく報告等の責任体制その他の緊急時の連絡体制及び協力体制について明確に整備されていること
  • 運行管理規定が定められていること
  • 原則として常勤の整備管理者を選任する計画があること

運転者

  • 事業計画を遂行するに足る員数の有資格の運転者を常時選任する計画があること
  • 適切な乗務割、労働時間を前提としたものであること
  • 運転者は以下に該当する者でないこと
    • 日々雇い入れられる者
    • 2か月以内の期間を定めて使用される者
    • 試用期間中の者(14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く)
    • 14日未満の期間ごとに賃金の支払い(仮払い、前貸しその他の方法による金銭の授受であって実質的に賃金の支払いと認められる行為を含む)を受ける者

法令遵守

申請者又は申請者が法人の業務を執行する常勤の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む)について、次のすべてに該当する等法令遵守の点で問題のないことが求められます。

  • 道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法及び特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の違反により申請日前3か月間及び申請日以降に50日車以下の輸送施設の使用停止処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた者(処分を受けた者が法人である場合における処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する常勤の役員として在任した者を含む)ではないこと
  • 道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法及び特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の違反により申請日前6か月間及び申請日以降に50日車を超え190日車以下の輸送施設の使用停止処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた者(処分を受けた者が法人である場合における処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する常勤の役員として在任した者を含む)ではないこと
  • 道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法及び特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関す る特別措置法等の違反により申請日前1年間及び申請日以降に190日車を超える輸送施設の使用停止処分以上又は使用制限(禁止)の処分を受けた者(処分を受けた者が法人である場合における処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する常勤の役 員として在任した者を含む)ではないこと
  • 申請者等が、一般旅客自動車運送事業又は特定旅客自動車運送事業の許可の取消しを受けた事業者において当該取消処分を受ける原因となった事項が発生した当時現に運行管理者であった者であって、申請日前5年間に運行管理者資格者証の返納を命じられた者ではないこと

また、申請者については、次のいずれの事由にも該当しないことが求められています。

  • 道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法及び特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適性化及び活性化に関する特別措置法等の違反により申請日前3か月間及び申請日以降に50日車以下の輸送施設の使用停止処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた者(処分を受けた者が法人である場合における処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する常勤の役員として在任した者を含む)ではないこと
  • 道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法及び特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適性化及び活性化に関する特別措置法等の違反により申請日前6か月間及び申請日以降に50日車を超え190日車以下の輸送施設の使用停止処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた者(処分を受けた者が法人である場合における処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する常勤の役員として在任した者を含む)ではないこと
  • 道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法及び特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適性化及び活性化に関する特別措置法等の違反により申請日前1年間及び申請日以降に190日車を超える輸送施設の使用停止処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた者(処分を受けた者が法人である場合における処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する常勤の役員として在任した者を含む)ではないこと
  • 申請日前2年間に、許可の取消しの処分に係る通知があった日から処分をする日までの間に廃止の届出をした者(事業の廃 止をした者が法人である場合における当該処分を行う原因となった事項が発生した当時現 にその法人の業務を執行する常勤の役員として在任した者を含む)ではないこと

損害賠償能力

計画車両のすべてについて、以下の内容に適合する任意保険に加入する計画があることが求められます。

対人8,000万円以上
対物対物200万円以上(免責額30万円以下)

申請の流れ

以下は近畿運輸局管内における手続きの流れになりますが、他の地域でもおおむね同様の流れになりますので、「近畿運輸局」の部分を該当する運輸局に置き替えてお考えください。

特定旅客自動車運送事業の許可に関するフロー
特定旅客自動車運送事業の許可に関するフロー

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弊所では、兵庫大阪京都の全域にわたり、送迎バスやスクールバスをはじめ旅客自動車運送事業関連手続きの代行を承っております。面倒な書類の作成から関連機関との調整、申請の代行までしっかりとフルサポートいたします。下記の報酬は、市場価格を反映したものですが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」です。さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応には自信があります。旅客自動車運送事業に関する許可の取得でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

特定旅客自動車運送事業許可申請264,000円〜
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