遊漁船業登録(許可)申請│釣り船開業ガイド

沖合の釣り船

釣りに興じる方であれば、趣味が高じて「釣り船屋をやってみたい!」という思いに駆られることもあるのではないかと思います。実際弊所においても釣り船に関する相談件数が急増しており、趣味としても事業としても、いまだ根強い人気があることを裏付けています。

釣り船は、法律上「遊漁船業」に該当し、これを事業として行おうとするときは、都道府県知事の行う登録を受ける必要があります。

そこで本稿では、これから遊漁船業を始めようとされる方、あるいはいずれ携わろうと検討されている方に向けて、遊漁船業に関する基礎知識や必要となる手続きについて、詳しく解説していきたいと思います。

遊漁船業とは

遊漁船業の適正化に関する法律(以下、遊漁船業法)では、船舶により乗客を漁場(海面及び内水面に属するものに限る)に案内し、釣りその他の方法により魚類その他の水産動植物を採捕させる事業を遊漁船業として定義しています。したがって、船上で魚を釣らせる船釣業のほか、漁場に乗客を運搬する磯渡業(瀬渡業)も遊漁船業に該当します。

また、「その他の方法」には、網を使用する方法網以外の漁具を移動しないように敷設して行う方法ヤス又はは具(くまで、いそがね等)を使用する方法及び歩行徒手採捕が該当するため、潮干狩りや手掴みで魚を採取するために漁場まで案内する事業も遊漁船業に該当することになります。

あくまでも魚類その他の水産動植物を採捕させることを目的としているため、単にダイビングのポイントまで乗客を案内する船舶は遊漁船には該当しません。また、ホエールウォッチングや屋形船など遊覧の用に供する船舶(いわゆる遊覧船)も遊漁船に該当しませんが、遊覧船については別に海上運送法上の手続きが必要となります。(ただし、これらの船舶であっても、魚類その他の水産動植物の採捕を併用する場合には遊漁船に該当します。)

なお、営利を目的として事業を営む場合は、たとえ年1回のイベント形式であっても遊漁船業に該当します。逆に言えば、乗客から金銭を収受しない限り、遊漁船業には該当しないことになります。

漁の方法や使用できる漁具については、各自治体の条例により制限されていることがあるため、漁場に出向く際には、これらを事前にしっかりと確認するようにしましょう。

遊漁船業登録

遊漁船業を営もうとする者は、営業所ごとに、営業所の所在地を管轄する都道府県知事に対して申請を行い、その登録を受ける必要があります。

たとえば兵庫県に営業所を設置する事業者であれば、遊漁船として使用する船舶の船籍港が大阪府内であっても、大阪府知事ではなく兵庫県知事に対して申請を行います。

登録の有効期間は5年間とされており、継続して事業を行うためには、5年ごとに登録を更新する必要があります。また、登録事項について変更が生じたとき、又は登録を廃止するときは、変更が生じた日(廃止することとなった日)から30日以内にその旨を届け出る必要があります。

なお、登録申請時に支払う申請手数料の額は各都道府県ごとに15,000円から30,000円の範囲で異なるため、申請前にはしっかりと確認するようにしてください。

都道府県新規登録更新登録
兵庫県28,000円17,000円
大阪府28,000円17,000円
京都府20,400円16,320円
和歌山県28,000円17,000円
三重県27,000円20,000円
岡山県28,050円17,030円
登録申請手数料(抜粋)

登録の要件

基本的に船舶が1隻あれば始めることができる事業ですが、登録を受けるためには、以下の要件をすべてクリアする必要があります。

  1. 登録拒否事由に該当しないこと
  2. 遊漁船業務主任者を選任すること
  3. 乗客損害賠償保険に加入していること
  4. 業務規程を定めていること

また、そもそもの前提条件として、遊漁船として使用する船舶については、登録や登記といった手続きを完了したものである必要があります。

登録拒否事由

登録を受けようとする者が以下のいずれかの事由に該当する場合は、遊漁船業者としての適格性を欠く者として登録を受けることはできません。

  • 登録を取り消され、その処分のあった日から2年を経過しない者
  • 法人であるものが登録を取り消された場合において、その処分のあった日前30日以内にその遊漁船業者の役員であった者でその処分のあった日から2年を経過しないもの
  • 事業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 遊漁船業法、船舶安全法、船舶職員及び小型船舶操縦者法、漁業法、水産資源保護法、これらの法律に基づく命令等の規定に違反し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 遊漁船業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が欠格事由のいずれかに該当するもの
  • 法人でその役員のうちに欠格事由のいずれかに該当する者があるもの
  • 申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているとき

遊漁船業務主任者

遊漁船業者は、遊漁船における利用者の安全管理その他の業務を行わせるため、以下の要件をすべて満たす者のうちから遊漁船業務主任者を選任する必要があります。(船長が遊漁船業務主任者の職を兼ねることは問題ありません。)

  • 海技士(航海)又は1級・2級小型船舶操縦士の免許を受けていること
  • 小型船舶において船長を兼務する場合は、特定操縦免許を受けていること
  • 遊漁船業に関して1年以上の実務経験を有すること、又は遊漁船業務主任者のもとで10日間(1日につき5時間以上)以上の実務研修を修了していること
  • 遊漁船業務主任者講習を修了した者であって、修了証明書の交付を受けた日の属する年の翌年の1月1日(交付を受けた日が1月1日である場合には同日)から5年を経過していないものであるこ
実務経験と実務研修

遊漁船業務主任者に選任するためには、その者が遊漁船業に関して1年以上の実務経験を有すること、又は遊漁船業務主任者のもとで10日間(1日につき5時間以上)以上の実務研修を修了していることのどちらかの要件を満たす必要があります。

いずれも第三者による証明が必要になりますが、どちらに該当するかによって証明書の記載方法も異なるため、実務経験であるか実務研修であるかについては、しっかりと把握するようにしてください。

実務経験遊漁船業に関して1年以上の実務経験を有すること
実務研修遊漁船業務主任者のもとで10日間(1日につき5時間以上)以上の実務研修を修了していること
※どちらかの要件を満たすこと
遊漁船業務主任者講習

遊漁船業務主任者は、上記の実務経験又は実務研修とは別に、農林水産大臣が認定する団体が実施する遊漁船業務主任者講習を受講する必要があります。また、遊漁船業務主任者を継続して選任する場合は、5年に1回はこの講習を受講させる必要があります。

欠格事由

上記の要件をすべて満たす者であっても、以下のいずれかの事由に該当する者については、適格性を欠く者として遊漁船業務主任者として選任することはできません。

  • 都道府県知事の業務改善命令により遊漁船業務主任者を解任され、解任の日から2年を経過しない者
  • 登録を取り消され、その処分のあった日から2年を経過しない者
  • 法人であるものが登録を取り消された場合において、その処分のあった日前30日以内にその遊漁船業者の役員であった者でその処分のあった日から2年を経過しないもの
  • 事業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 遊漁船業法、船舶安全法、船舶職員及び小型船舶操縦者法、漁業法、水産資源保護法、これらの法律に基づく命令等の規定に違反し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 遊漁船業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が欠格事由のいずれかに該当するもの

乗客損害賠償保険への加入

不測の事故に備えるため、遊漁船として使用する船舶は、すべて乗客損害賠償保険への加入が義務付けられています。加入する保険についても、保険契約額が乗客定員1人あたリ3千万円以上のものである必要があります。また、磯渡し等の業務を行う場合は、船舶だけではなく、磯渡し後の損害を賠償する保険(船舶検査証書の定員1人あたり3千万円以上)にも加入する必要があります。

なお、損害賠償保険が団体契約の場合は、その団体が発行する保険加入証書の写しが必要となります。

業務規程

遊漁船業者は、遊漁船業の実施に関する業務規程を定め、都道府県知事に対して届け出るものとされています。届出は登録後営業を開始する前でも構いませんが、実務上は申請書類と併せて提出し、担当者からチェックを受けるのが一般的です。

また、業務規程には、最低限以下の事項について具体的な内容を記載する必要があります。

  • 利用者の安全の確保及び利益の保護並びに漁場の安定的な利用関係の確保のため必要な情報の収集及び伝達に関する事項
  • 利用者が遵守すべき事項の周知に関する事項
  • 出航中止条件及び出航中止の指示に関する事項
  • 気象若しくは海象等の状況が悪化した場合又は海難その他の異常の事態が発生した場合の対処に関する事項
  • 漁場の適正な利用に関する事項
  • 遊漁船業者及びその従業者が遵守すべき事項

登録申請に必要となる書類

  • 遊漁船業登録申請書
  • 誓約書(申請者、役員、業務主任者、法定代理人)
  • 実務経験・実務研修証明書
  • 業務主任者講習会修了証明書の写し
  • 業務主任者の海技免状(航海)又は小型船舶操縦免許証(特定)の写し
  • 遊漁船の船舶検査証書の写し
  • 損害賠償保険証書の写し
  • 住民票の抄本又はこれに代わる書面(運転免許証、健康保険証等)(申請者、役員、業務主任者、法定代理人)
  • 業務規程(正副2部)
  • 登記事項証明書(法人)

登録後に必要となる手続き

登録の要件を満たしていることが確認され、遊漁船登録簿に記載されると、申請者の所在地に登録の完了通知が送付されます。ただし、登録完了後すぐに営業を開始することができるわけではなく、営業開始までの間に以下の手続きを行う必要があります。

  • 登録票及び登録標識の作成・設置
  • 利用者名簿の備付け
  • 業務規程の作成・届出

このうち業務規程については、登録申請時にすでに提出していれば、再度の届出は不要になります。

登録標・登録標識

遊漁船業者は、営業所ごとに登録標を、遊漁船ごとに登録標及び登録標識を、それぞれ公衆の見やすい場所に掲示する必要があります。なお、遊漁船業者以外の者は、標識又はこれに類似する標識を掲示することはできません。

登録標
登録標
登録標識
登録標識

遊漁船業登録サポート

弊所では、遊漁船業登録申請の代行を全国規模で承っております。都道府県担当課との協議から、業務規定を含む書類の作成、必要書類の収集及び申請の代行に至るまで、しっかりとフルサポートいたします。海事代理士事務所を併設していることから、船舶に関する手続きも一括してお任せいただけます。また、別料金ではありますが、停泊場所探しのサポートや、事業再構築補助金をはじめとする各種補助金の交付申請のサポートも承っております。

弊所は「話しの分かる行政書士事務所」を標榜しているため、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応には自信を持っています。遊漁船業登録申請でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

遊漁船業新規登録申請 88,000円~
遊漁船業更新登録申請44,000円~
※税込み

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