新規就農を目指す方へ│青年等就農計画の認定(認定新規就農者制度)と支援策を行政書士が解説

農家の青年

会社勤めを辞めて農業の道に進みたい、実家の農業を継ぐ前に自分の経営を始めてみたいなど、新たに農業を始めようと考える方にとって、最初の数年間をどう乗り切るかは大きな課題です。農地や機械、ハウスといった初期投資に多額の資金が必要になる一方で、作物が安定して売れるようになるまでには時間がかかり、就農直後は収入が不安定になりがちだからです。

こうした新規就農者を支えるために設けられているのが、農業経営基盤強化促進法に基づく「認定新規就農者制度」です。新たに農業を始める方が「青年等就農計画」を作成して市町村の認定を受けると、無利子の青年等就農資金や、就農直後の所得を支える経営開始資金、機械・施設の導入を後押しする補助事業など、さまざまな支援を重点的に受けられるようになります。

そこで本稿では、これから農業を始めようと考えている方に向けて、認定新規就農者制度の仕組みと対象者、青年等就農計画の記載事項と認定の基準、有効期間や変更・取消しのルール、そして認定を受けることで利用できる支援策や融資制度までを、行政書士が詳しく解説します。

認定新規就農者制度とは

認定新規就農者制度は、将来において効率的かつ安定的な農業経営の担い手に発展するような青年等の就農を促進するため、新たに農業経営を営もうとする青年等が作成する青年等就農計画を市町村が認定し、認定を受けた者に対して無利子資金の貸付けなどの支援措置を重点的に講じる制度です。平成26年度から農業経営基盤強化促進法に位置付けられ、すでに農業を営む経営者を対象とした「認定農業者制度」と同じように、市町村が計画を認定する仕組みがとられています。

制度の土台となっているのは、都道府県が定める「農業経営基盤強化促進基本方針」と、市町村が定める「農業経営基盤強化促進基本構想」です。基本構想には、その市町村で新たに農業経営を営もうとする青年等が目標とすべき農業経営の指標として、営農の類型ごとに経営の規模や生産方式、目標とする所得水準や労働時間などが示されており、青年等就農計画はこの指標に照らして審査されることになります。

基本方針で示される新規就農者の目標は、農業経営の開始から5年後に達成すべきものとして設定されており、その水準は、その地域で農業経営によって生計が成り立つものとされています。つまり、青年等就農計画は、就農から5年後に農業で生活していける経営を実現するための道筋を示す計画であり、単なる夢や希望ではなく、数字の裏付けのある計画であることが求められているといえます。

認定を受けた認定新規就農者は、令和7年3月末時点の農林水産省の資料でも全国で多数にのぼっており、新規就農者の多くがこの制度を入口として支援策を活用しています。後述する経営開始資金や経営発展支援事業、新規就農者チャレンジ事業などは、いずれも申請様式の共通書類として青年等就農計画が位置付けられているため、支援策の活用を考えるのであれば、まずこの計画の認定を目指すことが出発点となります。

青年等就農制度

対象となる青年等

青年等就農計画を作成することができる「青年等」は、農業経営基盤強化促進法の基本要綱で、次のいずれかに該当する者とされています。

これから農業経営を始める方だけでなく、農業経営を開始してから5年以内の方も対象に含まれますが、すでに認定農業者となっている方は対象外です。年齢は農業経営を開始した時点で判断され、法人の場合は登記日など農業経営を開始したと判断できる日における役員の年齢で判断される扱いとなっています。

  1. 青年(18歳以上45歳未満)(地域に担い手がいない等やむを得ない事情があると市町村長が認める場合は50歳未満)
  2. 65歳未満の者であって、商工業その他の事業の経営管理に3年以上従事したもの
  3. 65歳未満の者であって、商工業その他の事業の経営管理に関する研究又は指導、教育その他の役務の提供の事業に3年以上従事したもの
  4. 65歳未満の者であって、農業又は農業に関連する事業に3年以上従事したもの
  5. 65歳未満の者であって、農業に関する研究又は指導、教育その他の役務の提供の事業に3年以上従事したもの
  6. 2〜5の者と同等以上の知識及び技能を有すると認められる者
  7. 上記に掲げる者であって、法人が営む農業に従事すると認められる者が役員の過半数を占める法人

45歳以上の方であっても、会社員として経営管理に3年以上携わった経験や、農業法人で3年以上働いた経験などがあれば、65歳未満まで認定を受けることができます。脱サラして農業を始める方の多くは、この知識・技能を有する者の区分で申請することになり、その場合は、それまでの職歴や受講した研修などが、計画の目標を達成するために適切なものであるかどうかも審査の対象となります。

親の農業経営を継ぐ方や、親族の経営とは別に新たな農業部門を始める方も対象となりますが、この場合は、自らの農業経営の収支に関する帳簿をつけ、自己名義の預貯金口座を開設して、親族の経営との区分を明確にすることが条件とされています。また、過去に農業に従事した経験があり、現在は農業以外の仕事をしている方や、農業法人の従業員として働いている方も、新たに農業経営を営もうとするのであれば対象に含まれます。

なお、申請先の市町村に住所や農地を持っていなくても認定申請を行うことができます。たとえば、都市部に住みながら郊外の市町村で農地を借りて就農する場合や、複数の市町村にまたがって農業を営む場合でも、就農する市町村に申請すれば足ります。複数の市町村で認定を希望する場合は、それぞれの市町村に同一の内容で申請することも可能です。

青年等就農計画の記載事項と作成のポイント

青年等就農計画には、農業経営基盤強化促進法第14条の4第2項に基づき、次の事項を記載することとされています。

  1. 農業経営の開始の時における農業経営の状況(既に農業経営を開始した青年等にあっては、農業経営の現状)
  2. 農業経営の開始から相当の期間を経過した時における農業経営に関する目標
  3. 目標を達成するために必要な施設の設置、機械の購入その他の措置に関する事項
  4. 65歳未満の知識・技能を有する者にあっては、その有する知識及び技能に関する事項

計画書は、農林水産大臣が告示で定める様式「青年等就農計画認定申請書」で作成します。具体的には、就農地や営農類型、経営開始時と5年後の目標となる作付面積・飼養頭数、販売額や所得の見込み、年間農業従事日数、必要となる機械・施設とその資金調達方法、これまでの研修歴などを記入していく形式で、農林水産省のホームページで様式と記入イメージ、記載方法の参考資料が公開されています。

計画づくりで最も重要なのは、目標所得や販売額の数字に、作付面積や単収、販売単価といった根拠をしっかり持たせることです。認定の審査では、これまでの研修経験や生産方式など、計画に掲げられた各事項の間に整合性があるか、農業労働力を確保できる見込みがあるかといった点から、目標の達成が確実かどうかが総合的に判断されます。たとえば、研修で学んだことのない作物を大規模に作付けする計画や、労働力に見合わない規模の計画では、達成の見込みが低いと判断されかねません。

基本要綱では、年間農業従事日数を150日以上と見込むことが望ましいとされているほか、経営の適正な管理を農業簿記などで行う見込みがあるかどうかも審査の対象とされています。また、自然災害などのリスクに備えるため、農業版BCP(事業継続計画書)を作成して計画に添付するよう、都道府県や市町村から促される場合もあります。計画書を書き始める前の段階で、都道府県の普及指導センターや就農予定地の市町村に相談し、地域の基本構想の指標や審査のポイントを確認しておくことが、認定への近道となります。

認定の基準と手続きの流れ

市町村は、申請された青年等就農計画が次の要件を満たす場合に、認定を行うこととされています。

  • その計画が市町村の基本構想に照らして適切なものであること
  • その計画が達成される見込みが確実であること
  • 65歳未満の知識・技能を有する者にあっては、その有する知識及び技能が、計画の有効期間終了時における農業経営に関する目標を達成するために適切なものであること

認定までの手続きは、おおむね次の流れで進みます。

  1. 都道府県(普及指導センター)や就農予定地の市町村への事前相談
  2. 青年等就農計画認定申請書の作成・市町村への提出
  3. 市町村による審査(関係者による面接等)
  4. 認定の通知
  5. 市町村や都道府県などの関係機関によるフォローアップ

基本構想の指標に定められていない営農類型であっても、目指す所得や経営規模、生産方式などの目標の内容を踏まえて認定される扱いとなっています。また、計画上の目標所得が基本構想の水準を下回る場合でも、有機栽培や直接販売に取り組むなど、意欲を持って経営の基礎の確立に向けた取組を続け、将来的には基本構想の水準に到達することが見込まれるのであれば、計画を適切と判断できるとされています。

審査にあたって市町村は、新規就農者を支える地域のサポート体制などの関係者から意見を聴くことが適当とされており、面接などの方法で審査が行われるのが一般的です。研修先の農業者(指導農業士など)の意見も十分に尊重されることになっているため、研修中から指導者と信頼関係を築き、計画づくりの段階で助言をもらっておくことは、審査のうえでも大きな意味を持ちます。

認定されなかった場合、市町村は、却下の理由を認定要件との関係を明らかにして具体的に通知することとされており、その際には、行政不服審査法に基づく審査請求ができる旨も記載されます。却下の理由を踏まえて計画を練り直し、再度申請することも可能ですから、不認定となった場合でもあきらめず、どの要件が足りなかったのかを確認することが大切です。

有効期間・変更・取消し・失効

青年等就農計画の有効期間は、認定をした日から起算して5年とされています。すでに農業経営を開始している方の場合は、認定の日から、農業経営を開始した日から起算して5年を経過する日までとなるため、就農してから時間が経ってから申請すると、その分だけ有効期間が短くなる点に注意が必要です。計画を変更した場合や、新たに他の市町村で認定を受けた場合も、有効期間は当初の計画の終期までとされています。

認定を受けた後、計画に記載した目標の営農部門や就農地を変更する場合や、2割以上の増減を伴って所得目標や年間農業従事日数を変更する場合などには、その変更について市町村の認定を受けることになります。たとえば、当初は露地野菜で計画していたものを施設園芸に切り替える場合や、就農地を別の市町村に移す場合などがこれにあたるため、計画と実際の経営にずれが生じたときは、早めに市町村へ相談しておきましょう。

認定新規就農者は、毎年、計画の達成状況や経営課題を市町村に報告し、市町村は面談などを通じてその状況を把握することとされています。そのうえで、計画の認定要件に該当しなくなったとき、計画に従って必要な措置を講じていないと認められるとき、法人が役員の要件を満たさなくなったときには、認定が取り消される可能性があります。もっとも、病気や災害などのやむを得ない理由で営農を休止する場合は、必ずしも取消事由とはならないとされており、取消しにあたっては事前の通知と聴聞の手続きも設けられています。

また、計画の有効期間内に経営改善計画の認定を受けて認定農業者となった場合には、その認定の日から青年等就農計画は効力を失います。市町村は、有効期間の満了が近づいた認定新規就農者に対して、認定農業者への移行を促すよう努めることとされており、認定新規就農者制度は、5年間で経営の基礎を固め、その後は認定農業者として経営の改善・発展を目指していくという流れを想定した制度といえます。

利用できる主な支援策

認定新規就農者になると、次のような支援策を利用できるようになります。いずれも、令和8年度時点の農林水産省の資料に基づく内容です。

支援策主な内容
経営開始資金就農直後の所得を確保するため、経営開始から最長3年間、月13.75万円(年間165万円)を交付(原則49歳以下)
経営発展支援事業機械・施設、家畜導入、果樹・茶の新植・改植、機械リース等の初期投資を支援。通常枠は国費上限500万円(経営開始資金の交付対象者は上限250万円)、国の補助上限1/2(原則49歳以下)
新規就農者チャレンジ事業早期の経営発展に必要な農業用機械・施設の導入等を支援。国費上限は個人1,500万円・法人3,000万円、購入の補助率3/10以内(独立・自営就農時65歳未満)
青年等就農資金農業経営の開始に必要な機械・施設の取得等の資金を無利子で貸付け
農地利用効率化等支援事業地域の中心となる経営体等に対し、農業用機械等の導入を支援
経営所得安定対策米、麦、大豆等の作物を生産する方の経営安定を支援
農業経営基盤強化準備金経営所得安定対策等の交付金を活用して計画的に規模拡大を図る取組を税制面から支援(青色申告が必要)
農協等向け新規就農者税制農協等が取得した機械設備や農業用ハウスを認定新規就農者に利用させる場合の固定資産税を軽減

このうち経営開始資金は、令和8年度から交付額が月12.5万円(年間150万円)から月13.75万円(年間165万円)に引き上げられました。交付主体は市町村で、夫婦で経営を開始する場合の取扱いや、前年の世帯所得に関する要件なども設けられているため、申請前に市町村へ要件を確認しておくことが欠かせません。なお、研修期間中の生活を支える「就農準備資金」も、同額を最長2年間交付する制度として用意されています。

経営発展支援事業は、都道府県が新規就農者の初期投資を支援する場合に、都道府県の支援分の2倍を国が支援する仕組みです。通常枠では、独立・自営就農する認定新規就農者であること、経営開始5年目までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画であること、地域計画の目標地図に位置付けられていること、機械・施設の取得費用の本人負担分について金融機関から融資を受けていることなどが要件とされています。

新規就農者チャレンジ事業は、令和8年度当初予算で措置された比較的新しい事業で、対象年齢が65歳未満まで広がっている点が特徴です。ただし、地域計画の目標地図に位置付けられていることや、導入する機械等について共済に加入することなどが要件とされ、経営開始資金との同時受給はできません。

また、経営面積の3割以上の拡大や付加価値額の1割以上の拡大などの成果目標を選んで取り組む必要があるなど、事業ごとに条件が大きく異なるため、どの支援策を組み合わせるかは、計画づくりの段階から検討しておくとよいでしょう。

青年等就農資金と融資の特例

認定新規就農者が利用できる融資の中心となるのが、日本政策金融公庫の「青年等就農資金」です。主な貸付条件は次のとおりです。

項目内容
貸付対象者認定新規就農者
資金使途農地等の改良・造成、農業経営用施設・機械等の改良・造成・取得、農産物の加工処理・流通販売施設等の取得、創立費・開業費等の繰延資産、家畜・果樹の導入や農地賃借料の支払い等
貸付限度額3,700万円(特認1億円)
貸付利率無利子
償還期間17年以内(うち据置期間5年以内)

青年等就農資金は、無利子で長期間借りられる点が大きな魅力ですが、農地の取得費用は資金使途に含まれていません。また、借受希望額や経営状況によっては、連帯保証人や物的担保が必要になる場合もあります。融資の窓口は日本政策金融公庫の支店のほか、公庫の受託金融機関や農業協同組合などとなっており、計画の内容とあわせて事前に相談しておくことが大切です。

農地を取得したい場合には、日本政策金融公庫の「経営体育成強化資金」を利用することができ、認定新規就農者については、貸付限度額を1,000万円とし、据置期間を3年以内から5年以内に延長する特例措置が設けられています。さらに、農協などが取り扱う「農業近代化資金」についても、認定新規就農者は据置期間が原則3年以内から5年以内に、償還期限が原則15年以内から17年以内に延長される特例を受けることができます。

これらの融資は、青年等就農計画の目標達成のために必要な資金であることが前提とされています。そのため、計画に記載していない機械や施設の購入、単なる資金繰りのための借入れには利用できない点に留意が必要です。また、経営発展支援事業のように、補助を受けるために金融機関の融資を受けていることが要件とされる支援策もあるため、補助金と融資を一体的に組み立てる視点が、資金計画を立てるうえで欠かせません。

就農に関する相談窓口

令和5年4月に施行された改正農業経営基盤強化促進法により、都道府県は「農業経営・就農支援センター」としての機能を担う体制を整備することとされました。このセンターは、就農を希望する方や農業者からの相談に応じ、情報提供を行うとともに、就農希望者の希望に応じて市町村などの関係者を紹介し、就農に必要な調整を行う拠点として位置付けられています。かつての「青年農業者等育成センター」の役割は、このセンターに引き継がれています。

青年等就農計画の作成にあたっては、都道府県の普及指導センターや市町村、研修教育施設などの関係機関が、必要な指導・助言を積極的に行うこととされています。農林水産省も、申請様式の作成前に都道府県の普及指導センターや認定主体の市町村に必ず相談するよう案内しており、計画書を独力で書き上げてから持ち込むよりも、早い段階で相談しておくほうが、結果として認定までの時間を短くすることができます。

農地の確保にあたっては、地域計画の存在も意識しておく必要があります。地域計画は、市町村が地域の農業者などの協議を踏まえて、10年後の農地利用の姿を「目標地図」として示すもので、経営発展支援事業や新規就農者チャレンジ事業では、この目標地図に位置付けられていることが要件とされています。就農を希望する地域の地域計画の内容や、新規参入を受け入れるエリアの設定状況を確認し、市町村や農業委員会、農地中間管理機構と連携しながら農地を探していくことが、就農の成否を左右します。

全国の就農相談窓口は、全国農業会議所が運営する新規就農のポータルサイトなどで探すことができます。就農を希望する地域が決まっていない段階でも、各地の支援体制や研修制度を比較しながら相談することができるため、まずは情報収集から始めてみるとよいでしょう。

新規就農サポート

青年等就農計画は、就農から5年後の経営の姿を数字で示す計画であり、作付計画や販売計画、資金計画を整合性のある形でまとめ上げるには、相応の時間と労力がかかります。とくに会社勤めを続けながら就農の準備を進めている方や、研修に追われている方にとっては、計画書の作成と並行して、市町村や普及指導センター、金融機関との調整を進めるのは大きな負担となりがちです。

さらに、認定後に利用する経営開始資金や経営発展支援事業、新規就農者チャレンジ事業などは、それぞれ要件や申請様式が異なり、地域計画への位置付けや融資の有無など、事前に整えておくべき条件も少なくありません。どの支援策を組み合わせるかによって、計画の書き方や資金計画も変わってくるため、早い段階で全体像を描いておくことが、就農を成功させるための鍵となります。

弊所では、兵庫・大阪の全域で、青年等就農計画の作成支援をはじめ、支援策の申請書類の作成、融資の申込みに向けた資料の準備まで、新規就農に関わる手続きを幅広く有料サポートしています。作付計画や資金計画の数字の組み立てから、市町村や関係機関とのやり取りまで、就農を目指す方の事情に合わせて柔軟に対応いたします。これから農業を始めようとお考えの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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