角打ちは酒類販売業免許だけで可能?飲食店営業許可との境界線を解説

角打ちコーナーのイメージ

酒屋の一角に立ち飲みスペースを設ける「角打ち」(かくうち)は、近年あらためて注目を集めているスタイルです。すでに酒類販売業免許を持っている酒販店であれば、そのまま角打ちを始められると考えている方も少なくありません。しかし実際には、角打ちのやり方次第で、食品衛生法上の飲食店営業許可まで必要になってしまうケースがあります。

そもそも酒場や料理店と同一の場所に酒類の販売場を設けることは、酒税法第10条9号にいう「取締り上不適当と認められる場所」に該当するため、原則として認められていません。角打ちという営業形態は、一見するとこの原則に反しているように見えますが、実際にはある工夫によって成立しています。

そこで本稿では、角打ちの代表的な3つのスタイルを比較しながら、どのようなやり方であれば酒類販売業免許だけで成立し、どこからが食品衛生法上の飲食店営業許可を要するのかという境界線を整理して解説します。

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角打ちとは

角打ちとは、酒屋の店内やその一角で、購入したお酒をその場で飲むスタイルのことを指します。もともとは、升に入れられた日本酒を升の角に口をつけて飲んでいたことが名前の由来とされており、九州や北陸をはじめとする地域では、古くから酒屋の営業形態のひとつとして根付いてきました。

近年では、こうした昔ながらの角打ちに加えて、酒屋がリニューアルの一環として立ち飲みスペースやイートインコーナーを新設し、若い世代やワイン・クラフトビール愛好家を取り込もうとする動きも見られます。仕入れたお酒をそのまま試すことができる場として、購入前の試飲的な役割を兼ねているケースも多く、単なる「飲む場所」以上の付加価値を持つ営業形態として注目されています。

このように角打ちは、古くからの酒屋文化として親しまれてきた側面と、近年のリブランディング施策として活用されている側面の両方を持つ、独特な営業スタイルです。ただし、酒屋がこのスタイルを取り入れるにあたっては、単に「お酒を飲めるスペースを作ればよい」という単純な話では済まない、許可制度上の論点が存在します。

角打ちのスタイル比較

前章で触れたとおり、角打ちは酒屋がお客様に飲用スペースを提供する営業形態ですが、実際の現場では、お客様が自分で開栓して飲むだけの気軽なものから、店員が注文を受けて提供する居酒屋に近いものまで、運営実態に幅があります。店側がどこまでサービスに関与するかによって必要な許可が変わってくるため、代表的な3つのパターンを整理すると、次のようになります。

スタイル内容必要な許可
イートイン形式お客様が購入したお酒を自分で開栓し、自分で飲む。店側は場所を提供するのみ酒類販売業免許のみ(食品衛生法上の許可は原則不要)
立ち飲み・居酒屋型店員が注文を受けて提供し、開栓・注ぐ・グラスの提供や回収まで行う酒類販売業免許+飲食店営業許可
試飲スペース購入前の商品として、お酒をグラス等に注いで試飲してもらう無料試飲は判断が分かれるが、有料試飲は飲食店営業許可が必要

イートイン形式は、店側の関与を最小限にとどめる限り酒類販売業免許のみで対応できる一方、立ち飲み・居酒屋型は実質的に飲食店と変わらないサービス内容になるため、酒類販売業免許に加えて食品衛生法上の飲食店営業許可を取得する必要があります。角打ちという同じ呼び名を使っていても、この2つは許可制度上まったく別のカテゴリーに属していることになります。

試飲スペースについては、やや判断が分かれる領域です。購入を検討してもらうための無料試飲であれば販売促進活動の一環として扱われる余地がありますが、有料でグラスに注いで試飲させる場合は飲食物の提供とみなされ、飲食店営業許可が必要になるとされています。

無料か有料かという一点だけで判断が変わってくるため、試飲サービスを取り入れる際には提供方法を含めて事前に保健所へ確認しておくことをおすすめします。
次の章では、この3パターンのうち最も相談の多い「イートイン形式」が、なぜ酒類販売業免許だけで成立するのか、その法律上の理由を掘り下げていきます。

酒販免許だけで成立する理由

角打ちの本来的なスタイルは、お客様が酒屋で購入したお酒を、自分自身で栓を開け、自分で飲むというものです。この場合、店側が行っているのはあくまで「酒類の販売」であり、飲食物を調理・提供する「飲食業」には該当しません。

食品衛生法上の営業許可は飲食物の提供行為に対して必要となる許可であるため、店側が提供行為そのものを行っていないのであれば、酒類販売業免許のみで営業が成立することになります。

実際、酒類の小売行為自体は酒類販売業免許の範囲内で完結しており、購入後にお客様がどこでどのように飲むかは、原則として販売業者の管理下にある話ではありません。公園でお酒を飲むのが自由であるのと同じように、酒屋の軒先やイートインスペースで購入したお酒をお客様自身が開けて飲む行為は、酒屋側の営業行為とは切り離して考えられているわけです。

このため、椅子や簡単な立ち飲み台を置く程度であれば、それだけで直ちに飲食店営業とみなされるわけではありません。あくまで「誰が」「どのような行為を行っているか」がポイントであり、お客様自身が完結させる行為である限りは、酒類販売業免許の枠内で対応できることになります。

飲食店営業とみなされる境界線

前章の表で整理したとおり、店員が開栓・提供・グラスの回収まで行えば飲食店営業許可が必要になる一方、判断に迷いやすいのが、椅子やテーブルを設置して長居を前提とした環境を整えるケースです。

単に立ったまま短時間で飲んで帰るスペースを提供する程度であれば、まだセルフサービスの範囲内と評価されやすい一方で、腰を落ち着けて飲食できるような設えにすればするほど、実質的に飲食店を営んでいると評価される可能性が高まります。

こうした境界線は法律に明確な数値基準があるわけではなく、最終的には個別の実態を見て判断される部分です。「うちは椅子を置いているだけだから大丈夫」といった自己判断で進めるのではなく、角打ちスタイルを具体的に検討する段階で、保健所や酒類指導官に実際の運用イメージを説明し、事前に確認しておくことが望ましいといえます。

飲食スペースの区分要件

椅子やテーブルを備えた飲食スペースを店内に設ける場合、酒類の販売スペースと飲食スペースを明確に区分することが求められます。これは、飲食店と酒類販売業の併設が例外的に認められる場合と基本的に同じ考え方であり、保管場所・仕入先・会計場所・記帳という4つの観点から区分を整えることになります。

区分項目求められる内容
保管場所飲食(イートイン)スペースとは壁やパーティション等で仕切られた、独立した販売スペースを確保すること
仕入先販売用の酒類と、店側が飲食提供として扱う酒類がある場合は、それぞれの仕入れ・伝票を区分すること
会計場所酒類販売としての会計と、飲食提供としての会計を明確に分けること
記帳酒類の受払いに関する帳簿を、飲食提供分と明確に区分して記帳すること

これらの区分は、壁を作るような大掛かりな内装工事までは求められない場合もありますが、パーティションやレイアウトの工夫によって、販売スペースと飲食スペースが視覚的・動線的に独立していると認められる状態を作ることが基本になります。区分の程度については、担当する行政窓口によって求められる厳密さに差があるため、レイアウトを固める前に事前相談を行っておくと安心です。

なお、酒販店とは別の運営主体(たとえば商業施設側)が管理する共用の飲食スペースで、購入したお酒をお客様が飲むという形態であれば、そもそも酒販店側の営業行為とは切り離して考えられるため、区分要件の対象にはなりません。ただし、こうした形態は施設の設計段階から税務署等と調整しておく必要があり、小規模な個人店で実現するにはハードルが高いのが実情です。

Q. お客様が自分で栓を開けて飲むだけであれば、椅子やテーブルを置いても問題ありませんか。
A. 椅子やテーブルの設置自体が直ちに違法になるわけではありませんが、長居を前提とした環境を整えるほど、飲食店営業とみなされるリスクは高まります。具体的な設備内容は事前に保健所へ相談しておくことをおすすめします。


Q. サービスでお酒を注いであげる程度なら大丈夫ですか。
A. グラスに注ぐ行為は飲食物の提供とみなされやすく、食品衛生法上の飲食店営業許可が必要になる可能性が高い行為です。無償・有償を問わず注意が必要です。


Q. 角打ちスペースと販売スペースを完全に別の部屋にする必要がありますか。
A. 必ずしも別室にする必要はなく、パーティションやレイアウトの工夫で区分が認められる場合もあります。ただし程度の判断は担当窓口によって差があるため、事前確認が望ましいです。


Q. 商業施設の共用スペースで自分の店のお酒を飲んでもらう形式なら、区分要件は不要ですか。
A. 共用スペースが酒販店とは別の運営主体によって管理されている場合、区分要件の対象外になり得ます。ただし施設側との事前調整が前提となるため、実現のハードルは高くなります。

まとめ

角打ちは、イートイン形式・立ち飲み型・試飲スペースといった運用スタイルの違いによって、必要な許可が異なる営業形態です。お客様自身が購入したお酒を自分で開けて飲むイートイン形式であれば酒類販売業免許のみで足りますが、店員が開栓やグラス提供を行う立ち飲み型や、有料試飲を行う場合には、食品衛生法上の飲食店営業許可が必要になります。

飲食スペースを店内に設ける場合には、酒税法上の原則に従い、販売スペースと飲食スペースを保管場所・仕入先・会計場所・記帳の観点から明確に区分することが求められます。「うちの角打ちはどこまでなら大丈夫か」を自己判断で進めず、具体的な運用イメージを固めた段階で専門家や行政窓口に相談しておくことが、後々のトラブルを避ける一番の近道です。

弊所では、角打ちを含む酒販店と飲食提供の兼業についてのご相談や、必要な許可の整理・申請サポートも承っています。どこまでなら自店のスタイルで問題ないのか判断に迷う段階でも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。

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