酒類販売場の移転許可申請│必要なケースや手続方法を解説

酒類販売業免許は「人」だけでなく「場所」にも紐づく免許です。そのため、事務所や店舗を別の建物へ移す場合には、免許をそのまま持ち運べるわけではなく、あらためて移転先の場所について許可を受け直す「移転許可申請」という手続きが必要になります。
見落とされがちなのが、この許可が下りるまでの間、移転先では酒類を販売できないという点です。移転前の販売場を退去してから許可が下りるまでの間に空白期間が生じると、その間は酒類の販売そのものができなくなってしまいます。無許可のまま移転先で販売を始めてしまうと、無免許営業として罰則の対象になるおそれもあるため、スケジュール管理が重要になります。
そこで本稿では、どのような場合に移転許可申請が必要になるのか、申請先や審査の担当がどこになるのか、必要書類や手続きの流れ、そして実務上とくに注意しておきたいポイントについて解説していきます。
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移転許可申請が必要なケース
登記上の住所変更や、同じ建物内での移動であれば、事前許可を要しない異動申告で足りますが、販売場自体が別の建物に移る場合は、必ず移転許可申請が必要になります。
つまり、販売場に関するすべての変更が「移転」に該当するわけではなく、実際に酒類を販売している「場所」そのものが変わるかどうかが判断の分かれ目となります。
| ケース | 必要な手続き |
|---|---|
| 販売場を別の建物へ移す | 移転許可申請 |
| 同一建物内でフロアを移す・販売場を拡大する | 異動申告(移転許可は不要) |
| 販売場はそのままで、本店所在地(登記上の住所)だけが変わる | 異動申告(移転許可は不要) |
| 販売場と本店所在地が同一で、その住所自体が移転する | 移転許可申請 |
なお、移転許可申請と、免許の条件(取扱品目や販売方法など)を変更する「条件緩和・条件解除の申出」は、同時に行うことができません。どちらも審査に原則2か月程度を要するため、移転と条件変更の両方を予定している場合は、優先度の高い方から順に手続きを進める必要があります。
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申請先・審査担当の違い
移転許可申請でとくに間違えやすいのが、申請書の提出先と、実際に審査・決裁を行う税務署が異なるという点です。
たとえば、兵庫県内で営業していた事業者が大阪府内へ販売場を移す場合、申請書自体は移転前の販売場を管轄する税務署に提出しますが、審査を行い最終的に許可を出すのは移転先を管轄する税務署になります。
移転先の税務署へ誤って直接提出してしまうと受理されない可能性があるため、提出前に酒類指導官へ確認しておくと安心です。
| 項目 | 該当する税務署 |
|---|---|
| 申請書の提出先 | 移転前の販売場を管轄する税務署 |
| 申請書の宛先(申請書に記載する宛名) | 移転先の販売場を管轄する税務署 |
| 実際の審査・決裁 | 移転先の販売場を管轄する税務署 |
| 許可後の移転許可通知書の受け取り | 移転先の販売場を管轄する税務署 |
必要書類
移転許可申請では、既にその事業者が酒類販売業免許を取得していることが前提になるため、新規申請時のように事業者自身の適格性(人的要件や経営基礎要件)を証明する書類まで一から揃える必要はありません。中心となるのは、移転先の「場所」に関する書類です。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 移転先の賃貸借契約書の写し | 賃貸物件の場合。事業用としての契約であることが必要(居住用契約では許可されません) |
| 建物使用承諾書 | 契約内容だけでは酒類販売場としての使用が確認できない場合に必要になることがある |
| 間取り図・敷地の状況を示す図面 | 移転先の販売場の位置や区画が分かるもの |
| 建物の全部事項証明書(謄本) | 移転先建物の登記情報を確認するため |
| 土地の全部事項証明書(謄本) | 建物の敷地となる土地の登記情報を確認するため |
移転先が居住用物件の場合、契約上「事業用」としての使用が認められていなければ、移転許可を受けることはできません。物件を選ぶ段階から、酒類販売業の事業用として使用できる契約内容になっているかを確認しておくことが大切です。
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手続きの流れとスケジュール
移転許可申請の標準処理期間は、新規の免許申請と同様におおむね2か月とされています。申請から許可が下りるまでの間、酒類販売業免許はまだ移転前の販売場に紐づいたままであり、この間は移転前の場所でのみ販売を続けることができます。
無事に許可が下りると「移転許可通知書」が交付され、これを受け取ってはじめて移転先での酒類販売を開始することができます。逆にいえば、許可が下りる前に移転前の店舗や事務所を退去してしまうと、その時点で酒類の販売自体ができなくなってしまいます。家賃の二重負担を避けたい気持ちは理解できますが、許可が下りるまでは移転前の販売場を維持しておくことが、販売中止期間を作らないための基本的な対応になります。
なお、標準処理期間の2か月はあくまで目安であり、書類に不備があればさらに時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールを組んでおくことが実務上のポイントです。
Q. 移転先が同じ建物内のワンフロア上や下の階であれば、移転許可申請は不要ですか。
A. 不要です。同一建物内でのフロア移動は「移転」ではなく「異動」として扱われ、フロア図面などを添えた異動申告書の提出で足ります。
Q. 許可が下りる前に移転先で販売を始めてしまった場合、どうなりますか。
A. 無免許営業として扱われ、罰則の対象になり得ます。許可が下りるまでは、移転前の販売場でのみ販売を続けることになります。
Q. 移転と同時に取り扱う酒類の品目を増やしたい場合、まとめて申請できますか。
A. できません。移転許可申請と条件緩和・条件解除の申出は同時に行うことができず、それぞれ別の手続きとして順番に進める必要があります。
Q. 移転許可申請にも登録免許税はかかりますか。
A. 移転許可は新たな免許の発行ではなく、既存免許にかかる販売場の場所変更にあたるため、実務上は新たな登録免許税は発生しないとされています。ただし個別の状況によって取扱いが変わる可能性があるため、不安な場合は管轄税務署に確認しておくと安心です。
Q. 移転先が居住用の賃貸物件でも申請できますか。
A. 原則として認められません。移転先の物件が事業用として使用できる契約内容になっているかを、契約前に確認しておく必要があります。
まとめ
酒類販売場の移転許可申請は、販売場そのものを別の建物へ移す際に必要となる、審査を伴う手続きです。同一建物内での移動や、登記上の住所だけの変更であれば異動申告で足りますが、実際に酒類を販売する場所が変わる場合には、必ず移転先の許可を受ける必要があります。
申請書の提出先は移転前の販売場を管轄する税務署である一方、実際に審査・決裁を行うのは移転先を管轄する税務署であるという点や、許可が下りるまでは移転先での販売ができないという点は特に見落としやすいポイントです。標準処理期間の2か月を踏まえ、移転が決まった段階で早めに準備を始めることが、販売中止期間を作らないための一番の対策になります。
弊所では、酒類販売業免許の新規申請から、移転許可申請・条件緩和の申出まで一貫してサポートしています。移転のスケジュールが決まった段階でも構いませんので、どうぞお早めにご相談ください。
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