風俗営業の営業所における管理者について
風俗営業者は、営業所ごとに、営業所における業務の実施を統括管理する者のうちから、営業所における業務の適正な実施を確保するため必要な業務を行わせるため、管理者1人を選任する必要があります。
風俗営業の営業所にはなくてはならない管理者ですが、実情としては、管理者の存在やその職務を軽んじている風俗営業者は、案外少なくないように思うことが多々あります。
そこで本稿では、風俗営業の営業所における管理者の職務内容や選任の基準等について、詳しく解説していきたいと思います。
管理者の選任
風俗営業者は、営業所における業務の実施を統括管理する者のうちから、営業所ごとに専任の管理者1人を選任する必要があります。また、管理者として選任した者が欠けたときは、その日から14日以内に、新たな管理者を選任する必要があります。
ここで言う「統括管理する者」とは、全体をまとめて管理する者という意味であり、具体的には、店長や支配人等が該当します。営業者自らが営業所内における業務の実施を直接統括管理する場合には、営業者が自らを管理者として選任すればよく、他に管理者を選任する必要はありません。
また、「営業所ごとに専任」とは、その営業所に常勤して管理者の業務に従事しうる状態にあることをいい、原則として複数の営業所の管理者を兼任することはできません。
ただし、2つの営業所が接着しており、双方の店を同時に統括管理することができ、管理者の業務を適正に行い得る場合にあっては、2つの営業所の管理者を同一人とすることが認められる場合があります。
欠格事由
営業所における業務の実施を統括管理する者であっても、以下のいずれかの事由に該当する者は、管理者となることができません。
- 未成年者
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
- 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
- アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
- 風俗営業の許可を取り消され、取消しの日から起算して5年を経過しない者(許可を取り消された者が法人である場合においては、取消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日前60日以内に法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む)であった者で取消しの日から起算して5年を経過しないものを含む)
- 風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞の期日及び場所が公示された日から処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に許可証の返納をした者(風俗営業の廃止について相当な理由がある者を除く)で返納の日から起算して5年を経過しないもの
- 風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞の期日及び場所が公示された日から処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に合併により消滅した法人又は許可証の返納をした法人(合併又は風俗営業の廃止について相当な理由がある者を除く)の公示の日前60日以内に役員であった者で消滅又は返納の日から起算して5年を経過しないもの
- 風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞の期日及び場所が公示された日から処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に分割により聴聞に係る風俗営業を承継させ、若しくは分割により風俗営業以外の風俗営業を承継した法人(分割について相当な理由がある者を除く)又はこれらの法人の公示の日前60日以内に役員であった者で分割の日から起算して5年を経過しないもの
- 精神機能の障害により管理者の業務を適正に実施するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
管理者の業務
管理者は、風俗営業者の営業所における業務の実施に関し、風俗営業者又はその代理人、使用人その他の従業者(風俗営業者から風俗営業の業務の一部の委託を受けた者及びその者の代理人、使用人その他の従業者を含む)に対し、これらの者が法令の規定を遵守してその業務を実施するため必要な助言又は指導を行い、その他営業所における業務の適正な実施を確保するため必要な以下の業務を行います。
風俗営業者又はその代理人は、管理者が業務として行う助言を尊重しなければならず、風俗営業者の使用人その他の従業者は、管理者がその業務として行う指導に従う必要があります。
- 営業所における業務の適正な実施を図るため必要な従業者に対する指導に関する計画(例:法令遵守のため何月は特に何について指導するかなどの計画)を作成し、これに基づき従業者に対し実地に指導し、及びその記録を作成すること
- 営業所の構造及び設備が技術上の基準に適合するようにするため必要な点検の実施及びその記録の記載について管理すること
- パチンコ屋等営業にあっては、営業所に設置する遊技機が基準に該当しないようにするため必要な点検の実施及びその記録の記載について管理すること
- 客が大声若しくは騒音を発し、又は酒に酔って粗野若しくは乱暴な言動をすることその他営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼすことがないようにするために必要な措置について従業員に対する教育を行うことその他措置が適切になされるよう必要な措置を講ずること
- 営業所における業務の実施に関する苦情の処理を行うこと
- 都道府県の条例に特別の定めがある場合において、午前0時から条例で定める時までの時間においてその営業を営むときは、苦情の処理に関する帳簿及びその記載について管理すること
- 都道府県の条例の規定により客として立ち入らせてはならないこととされる未成年者を営業所内で発見した場合において、未成年者に営業所から立ち退くべきことを勧告することその他の必要な措置を講ずること
- 従業者名簿及びその記載について管理すること
- 接待飲食等営業にあっては、接客従業者の生年月日等の確認に係る記録について管理すること
- 風俗環境保全協議会における構成員となつた場合に、協議会の活動に参画すること
- パチンコ屋等営業にあっては、客がする遊技が過度にわたることがないようにするため、客に対する情報の提供その他必要な措置(例:ポスター等の営業所内での掲示、営業所の広告への掲載等による依存防止に関する相談窓口等の情報提供や、客自身又はその家族からの遊技使用上限金額等の申告に基づき過度な遊技を予防する仕組みの活用、過度な遊技を行わないよう客に対する注意喚起の実施、依存防止対策についての従業者への教育等)を講ずること
- 営業所における業務の一部が委託される場合において、委託に係る業務の適正な実施を図るため必要な委託に係る契約の内容(契約の内容には、風俗営業者の遵守すべき法令を受託者が遵守することを担保するための定めを盛り込むこと)、業務の履行状況その他の事項の点検の実施及びその記録の記載について管理すること
管理者の解任の勧告
公安委員会は、管理者が欠格事由に該当すると認めたとき、又は管理者がその職務に関し法令若しくは風営法に基づく条例の規定に違反した場合において、その情状により管理者として不適当であると認めたときは、風俗営業者に対し、管理者の解任を勧告することができます。ただし、この解任の勧告は行政処分ではなく、法的強制力はありません。
なお、解任の勧告を受けていないことが特例風俗営業者の認定の要件のひとつとされているため、特例風俗営業者の認定を受けるためには、勧告の実施に関する記録を適切に保管し、過去10年間の勧告の実施に関する記録が整備されているようにする必要があります。
管理者講習
風俗営業者は、公安委員会から、選任した管理者について管理者講習(定期講習、処分時講習及び臨時講習)を行う旨の通知を受けたときは、管理者に対して講習を受けさせる必要があります。
このうち定期講習は、すべての営業所の管理者について、管理者として選任された日からおおむね3年ごとに1回、受講することが義務付けられています。
ただし、特例風俗営業者の認定を受けた風俗営業者の認定に係る営業所の管理者であって、営業所の管理者として選任された後少なくとも1回以上定期講習を受けたことがあるものについては、その後の定期講習の受講は免除されます。
また、処分時講習は風俗営業の全部又は一部の停止が命じられた場合に営業所の管理者について処分の日からおおむね1年以内に1回、臨時講習は善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため管理者講習を行う必要がある特別の事情(特定の種類又は特定の地域の風俗営業について、同種の違反行為が多数行われている状況や少年のたまり場になっている状況等にあり、管理者を集めて講習を行うことによりこれらの事情を解消し、風俗営業の健全化を図ることが期待できる場合、法令の重要な改正があり管理者に周知させる必要がある場合等)がある場合に当該事情に係る営業所の管理者についてその必要の都度、それぞれ実施されます。
なお、管理者講習については、その受講の有無等の状況が特例風俗営業者の認定の要件のひとつとされているため、その受講状況等の記録を適切に保管し、過去10年間の受講記録が整備されているようにする必要があります。
定期講習 | ①法その他営業所における業務の適正な実施に必要な法令に関すること ②管理者の業務を適正に実施するため必要な知識及び技能に関すること | 4時間以上6時間以下 |
処分時講習 | ①定期講習の項中欄に掲げる講習事項 ②風俗営業者若しくはその代理人又は従業者が再び法令の規定に違反することを防止するために管理者として講ずべき措置に関すること | 4時間以上6時間以下 |
臨時講習 | 風俗営業に係る特別な事情に関する事項で、管理者の業務を適正に実施するため必要なものに関すること | 2時間以上4時間以下 |
管理者講習の通知等
管理者講習の実施予定期日の30日前までに、公安委員会から営業所宛てに管理者講習通知書が届きますが、この通知を受けた風俗営業者は、病気その他やむを得ない理由(以下参照)により管理者に管理者講習を受講させることができないときを除き、これを拒否することはできません。
通知を受けた風俗営業者は、急病、交通事故、災害による交通の途絶、法令の規定により身体の自由を拘束されていること、社会の慣習上やむを得ない緊急の用務が生じていること等、管理者が管理者講習を受講できないことについてやむを得ない合理的な理由がある場合は、講習実施予定期日10日前までに、公安委員会に対し、管理者講習を受講させることができない旨及びその理由を記載した書面を提出する必要があります。
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