同じ「お酒」でも中身は17種類?酒税法による酒類の定義と品目を整理してみた

ビール、日本酒、ウイスキー、見た目も味も製法もまったく違うこの3つですが、法律上は「酒類」という同じ大きな括りに入る仲間です。当たり前だと思うかもしれませんが、実はこの「酒類」という言葉、普段イメージしているよりもずっとシンプルかつ、ずっと細かいルールで定義されています。
酒税法という法律を開くと、お酒は発泡性酒類・醸造酒類・蒸留酒類・混成酒類という4つの大分類のもと、なんと17種類もの品目に細かく分けられています。ビールと発泡酒の違いはなんとなく知っていても、「みりん」や「粉末酒」まで法律上は立派な酒類の仲間だと聞くと、驚く方も多いのではないでしょうか。そしてこの分類、単なる豆知識ではなく、税率にも直結する結構シビアな話でもあります。
そこで本稿では、そもそも酒税法上「酒類」とは何を指すのかという定義から、17品目の分類の全体像、そして品目ごとに税率がどれだけ違うのかまで、行政書士の視点でざっくり整理してみました。お酒好きの方も、これから酒類ビジネスに携わる方も、「へえ」と思っていただける内容になっていると思います。
目 次
酒類とは
酒税法における「酒類」の定義は、実はとてもシンプルです。アルコール分1度以上の飲料であれば、それはもう酒類として扱われます。逆にいえば、アルコール分がどれだけ薄くても、1度を超えた瞬間に法律上は立派な「お酒」の仲間入りをするということです。
ノンアルコールビールがなぜ「ノンアルコール」を名乗れるのかといえば、多くの場合アルコール分をこの1度未満に抑えているからに他なりません。さらに面白いのは、この定義が液体だけにとどまらず、薄めればアルコール分1度以上になるアルコール、あるいは溶かせばアルコール分1度以上の飲料になる粉末状のものまで酒類の定義に含まれています。
なお、アルコール分と紛らわしい概念として「エキス分」というものもありますが、こちらはアルコールではなく、温度15度の状態で原容量100㎥中に含まれる不揮発性成分のグラム数を指すもので、後述する品目の分類基準としてたびたび登場します。アルコール分とエキス分、この2つの数字を押さえておくと、この後の分類がぐっと理解しやすくなります。
酒税法では、原料や製造方法の違いによって、酒類を発泡性酒類・醸造酒類・蒸留酒類・混成酒類という4つの区分に分け、そのもとに合計17の品目を定めています。まずは全体像を一覧にしてみます。
4分類17品目、まずは全体像
酒税法では、原料や製造方法の違いにより、酒類の課税上の分類として、発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類及び混成酒類の4つの区分と17の品目に分類しています。
| 大分類 | 品目 |
|---|---|
| 発泡性酒類 | ビール/発泡酒(その他の発泡性酒類は品目には含まれません) |
| 醸造酒類 | 清酒/果実酒/その他の醸造酒 |
| 蒸留酒類 | 連続式蒸留焼酎/単式蒸留焼酎/ウイスキー/ブランデー/原料用アルコール/スピリッツ |
| 混成酒類 | 合成清酒/みりん/甘味果実酒/リキュール/粉末酒/雑酒 |
こうして並べてみると、居酒屋のメニューでよく見る名前に混じって、「原料用アルコール」や「雑酒」といった聞き慣れない品目が並んでいることに気づきます。これらは決してマイナーな存在ではなく、れっきとした酒税法上の分類のひとつです。次の章から、大分類ごとに中身を見ていきます。
発泡性酒類
発泡性酒類は、ビール、発泡酒、そしてこれら以外でアルコール分11度未満の発泡性を持つ「その他の発泡性酒類」から成り立つ区分です。
名前のとおり「泡立つお酒」を軸にしたグループで、居酒屋の乾杯の一杯として最も馴染み深い存在ともいえます。ここでは特に細かい線引きがある、ビールと発泡酒の2品目を見ていきます。
ビール
ビールは、麦芽・ホップ・水を原料として発酵させたお酒のうち、アルコール分が20度未満のものを指します。麦以外の副原料(米・とうもろこし・果実・香辛料など)を使う場合も、原料に占める麦芽の重量比率や副原料の上限が細かく定められており、この比率を外れると法律上は「ビール」を名乗れず、発泡酒側に分類されてしまいます。
同じレシピでも麦芽比率がわずかに違うだけで品目が変わってしまうという、なかなかシビアな世界です。
発泡酒
発泡酒は、麦芽または麦を原料の一部として使った発泡性のお酒のうち、アルコール分が20度未満のものです。ビールに比べて原料の縛りがゆるやかで、麦芽比率が低い、あるいは規定量を超える副原料を使ったビール風のお酒は、この発泡酒に分類されます。
かつて「新ジャンル」「第3のビール」と呼ばれていた商品群は、発泡酒とも異なる原料構成(麦芽を使わない、または豆などを原料にする等)を取ることで、さらに別の税率区分に位置づけられてきました。
醸造酒類
醸造酒類は、清酒・果実酒・その他の醸造酒という3品目から成る区分で、原料を発酵させるだけで(蒸留の工程を経ずに)造られるお酒が中心です。
日本酒とワインという、系統も味わいもまったく異なる2つの国民的なお酒が、同じ大分類に属しているのがこのグループの面白いところです。
清酒
清酒、いわゆる日本酒は、米・米こうじ・水を原料として発酵させ、こしたお酒のうちアルコール分22度未満のものと定義されています。清酒かすなど一定の副原料を加える場合も認められていますが、その重量が米の重量の半分を超えないことが条件です。「こす」という工程を経ているかどうかが、後述する「その他の醸造酒」との分かれ目のひとつになります。
果実酒
果実酒はワインをはじめとする、果実または果実と水を原料に発酵させたお酒で、アルコール分20度未満のものが該当します。糖類を加えて発酵させることや、ブランデー・アルコール・香味料を一定量まで加えることも認められており、加える副原料の分量比率まで細かく規定されている点が特徴です。梅などの植物を浸して香りを移したお酒も、この果実酒の枠に含まれます。
その他の醸造酒
その他の醸造酒は、穀類・糖類などを原料に発酵させたお酒のうち、アルコール分20度未満かつエキス分2度以上のものが該当し、清酒にも果実酒にも当てはまらないお酒の受け皿になっています。どぶろくに近いお酒や、地域独自の発酵酒などが分類されることがあり、17品目の中でもとりわけ「その他感」が強い品目です。
蒸留酒類
蒸留酒類は、発酵させたアルコール含有物をさらに蒸留してアルコール度数を高めたお酒のグループで、連続式蒸留焼酎・単式蒸留焼酎・ウイスキー・ブランデー・原料用アルコール・スピリッツの6品目が含まれます。
「蒸留」という工程を経ることで、原料由来の風味を凝縮させたり、逆にクリアな味わいに仕上げたりと、造り手の個性が出やすいのもこのグループの特徴です。
連続式蒸留焼酎
連続式蒸留焼酎は、連続式蒸留機によってアルコール含有物を蒸留したお酒のうち、アルコール分36度未満のものを指します。いわゆる甲類焼酎がこれにあたり、連続的に蒸留を繰り返すことでクセの少ないクリアな味わいに仕上がるのが特徴です。
単式蒸留焼酎
単式蒸留焼酎は、穀類や芋類などを原料に発酵させたアルコール含有物を、連続式以外の蒸留機(単式蒸留機)で蒸留したお酒のうち、アルコール分45度以下のものです。いわゆる乙類焼酎や、泡盛の多くもこの単式蒸留焼酎に分類されます。原料や製法のバリエーションが豊富で、蔵ごとの個性が出やすい品目でもあります。
ウイスキー
ウイスキーは、発芽させた穀類と水を原料に糖化・発酵させたアルコール含有物を蒸留したお酒で、これにアルコールや香味料、色素などを加えたものも一定の条件下で含まれます。原料が果実ではなく穀類であるという点が、次に紹介するブランデーとの決定的な違いです。
ブランデー
ブランデーは、果実または果実と水を原料に発酵させたアルコール含有物、あるいは果実酒を蒸留したお酒です。原料が果実であるという一点を除けば、製法上の考え方はウイスキーとよく似ています。ブランデーにアルコールや香味料を加えたものも、一定の割合の範囲内であれば同じ品目として扱われます。
原料用アルコール
原料用アルコールは、連続式蒸留焼酎または単式蒸留焼酎に該当するお酒のうち、水以外の物品を加えず、かつアルコール分が45度を超えるものを指します。飲用としてそのまま楽しむというよりは、他の酒類の原料や工業用途として使われることの多い、いわば「黒子」的な存在です。
スピリッツ
スピリッツは、ここまでに紹介した個別の品目のいずれにも当てはまらない蒸留酒類のうち、エキス分2度未満のものをまとめて指す品目です。ジン、ウォッカ、テキーラ、ラムといった、バーでおなじみのスピリッツ類は、法律上はすべてこの「スピリッツ」という一つの品目に集約されています。
混成酒類
混成酒類は、合成清酒・みりん・甘味果実酒・リキュール・粉末酒・雑酒という6品目から成る、いわば「その他」寄りの区分です。
既存のお酒に糖類や香味料などを加えて造られるものが多く、調味料としておなじみのみりんや、家庭で漬け込む梅酒(リキュール)まで含まれる、17品目の中でも特にバラエティ豊かなグループです。
合成清酒
合成清酒は、アルコールや焼酎、あるいは清酒とぶどう糖などを原料に製造されたお酒のうち、香味や色沢が清酒に類似しているものを指します。アルコール分16度未満・エキス分5度以上であることなど、清酒に「寄せる」ための条件が細かく定められています。
みりん
みりんは、米・米こうじに焼酎やアルコールを加えてこしたお酒のうち、アルコール分15度未満でエキス分40度以上といった条件を満たすものです。調味料として扱われることの多いみりんですが、法律上はれっきとした酒税の対象品目であり、お酒売り場に置かれているのはこのためです。
甘味果実酒
甘味果実酒は、果実や果実酒に糖類やブランデー、香味料などを加えたお酒のうち、果実酒の定義には当てはまらないものを指します。梅酒やポートワインのように、甘みや風味を強めに加えたお酒がこの品目に位置づけられることがあります。
リキュール
リキュールは、酒類と糖類その他の物品を原料としたお酒のうち、エキス分2度以上のものを指す、かなり守備範囲の広い品目です。カシスリキュールやコーヒーリキュールはもちろん、家庭で漬け込む梅酒も、販売用として製造する場合はこのリキュールに分類されます。
粉末酒
粉末酒は、水に溶かせばアルコール分1度以上の飲料になる、粉末状の酒類です。液体のイメージが強いお酒の世界において、唯一「固体」の状態で存在が認められている品目といえます。
雑酒
雑酒は、ここまで紹介してきた16品目のいずれにも当てはまらないお酒をまとめて受け止める、最終受け皿的な品目です。新しいタイプのお酒が開発されるたびに、まずこの雑酒として扱われることも少なくありません。
品目によって違う税率
酒類の分類は、単なる整理整頓のためのものではありません。酒税の税率は品目ごとに細かく定められており、原則として酒類の製造場から出荷される数量、または保税地域から引き取られる数量に応じて課税されます。
| 区分 | 税率(1klあたり) |
|---|---|
| 発泡性酒類 | 155,000円 |
| その他の発泡性酒類 | 100,000円 |
| 醸造酒類 | 100,000円 |
| 蒸留酒類・混成酒類(アルコール分20度超は1度ごとに1万円加算) | 200,000円 |
| ウイスキー・ブランデー・スピリッツ(アルコール分37度未満) | 370,000円 |
| 合成清酒 | 100,000円 |
| みりん等 | 20,000円 |
| 甘味果実酒・リキュール(アルコール分13度以上は1度ごとに1万円加算) | 120,000円 |
| 粉末酒 | 390,000円 |
数字で並べると、発泡性酒類とその他の発泡性酒類(いわゆる第3のビール)の税率差や、みりんの税率の低さなど、品目ごとの扱いの違いがはっきり見えてきます。
同じ「お酒」という言葉でくくられていても、法律上の立ち位置と税負担はまったく別物だということが、この表からも伝わるのではないでしょうか。
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Q. ノンアルコール飲料は酒税法上まったく規制されないのですか。
A. アルコール分が1度未満であれば酒類には該当せず、酒税法の規制対象外になります。多くのノンアルコール飲料は、この1度未満に抑えることで「ノンアルコール」を名乗っています。
Q. 自家製の梅酒を作ると酒税法違反になりますか。
A. 家庭で消費する目的で、一定の条件のもとに既存の酒類に果実等を漬け込む場合には、例外的に認められています。ただし条件を外れる場合や販売目的の場合は無免許製造にあたるおそれがあるため注意が必要です。
Q. 同じ「焼酎」でも税率が違うのはなぜですか。
A. 焼酎は蒸留方法によって連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎に分かれており、品目としての扱いが異なります。さらにアルコール分によって税額も変動するため、同じ「焼酎」という呼び名でも税負担は一律ではありません。
Q. クラフトジンやクラフトウォッカも、この分類だとスピリッツになりますか。
A. はい、該当します。ウイスキーやブランデーのように原料や製法で個別に定義された品目に当てはまらない蒸留酒は、まとめてスピリッツという品目に分類されます。
まとめ
酒税法上の「酒類」は、アルコール分1度以上の飲料というシンプルな定義から出発しながら、発泡性酒類・醸造酒類・蒸留酒類・混成酒類という4分類、17品目という細かい世界に枝分かれしています。ビールと発泡酒の違いはもちろん、みりんや粉末酒といった意外な酒類の存在まで知っておくと、日頃何気なく手に取っているお酒の見え方が少し変わってくるかもしれません。
こうした分類は単なる雑学にとどまらず、酒類の製造や販売に関わる免許の種類、そして税率にまで直結する実務上のルールでもあります。これから酒類製造業や酒類販売業への参入を考えている方にとっては、避けて通れない基礎知識だといえます。
弊所では、酒類製造免許や酒類販売業免許をはじめとする、酒類に関するさまざまな手続きのご相談を承っています。取り扱いたいお酒がどの品目に該当するのか分からないという段階でも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。
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