国際結婚に必要となる手続きについて

婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

(日本国憲法第24条)

上記が日本国憲法において結婚(婚姻)について触れている条文です。このように婚姻というものは、夫婦となる両性の合意のみに基いて成立し、本来は他者や、ましてや行政が介入するものではありません。ただし、これが外国人との婚姻となると国際私法も絡むことになり、非常に煩雑な手続きを求められることになります。

そこで本稿では、外国人との国際結婚を視野に入れる皆さまのために、その概要や手続きについて詳しくご案内したいと思います。

婚姻の手続き

婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

(民法第739条第1項)

婚姻の手続きは非常に簡素です。基本的には上記条文にあるとおり、届出を行うことによって成立します。当然ながら行政官庁による許可も必要ありません。これが国際結婚となりますと、以下のような取扱いになります。

婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。

(法の適用に関する通則法24条1項)

婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。

(法の適用に関する通則法24条2項)

当事者の一方の本国法に適合する方式は、有効とする。ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない。

(法の適用に関する通則法24条3項)
本稿は日本人が外国人と結婚する場合において日本国内で手続きを行うことを想定して記述しています。
国際結婚における夫婦の戸籍

日本人については婚姻の事実を戸籍に記載するため、本籍地に婚姻届を提出することになります。 外国人パートナーについては戸籍がないため、配偶者として氏名や身分事項が記載されることはありませんが、筆頭者の欄に配偶者区分が記載され、身分事項欄に配偶者の氏名、国籍、生年月日が記載されることになります。なお、外国人パートナーの氏を名乗る場合には家庭裁判所の許可と氏変更の届出が必要になります。

国際結婚手続に必要な書類

国際結婚の手続きに必要な書類は、基本的には次の4つです。ただし、自治体によっては異なる書類や追加書類を必要とする場合もあるので、事前に必ず確認するようにしましょう。

  1. 婚姻届
  2. 戸籍謄本
  3. パスポート
  4. 婚姻要件具備証明書

婚姻要件具備証明書

何だか仰々しいネーミングですが、ざっくり説明するとパートナーが独身であることパートナーの国の法律で結婚することに問題がないことの2つを証明するための文書です。この文書は、パートナーの国の「在日大使館」「領事館」から発行されます。ただし、国によっては婚姻要件具備証明書を発行する制度がない場合もあるため、次のような代替書類を提出する必要があります。

代替書類

たとえば「宣誓書」などが該当します。パートナーの外国人が自国の領事館へ赴き、領事の前で「法律で定める結婚年齢に達していること」「日本人との結婚について法律上問題がないこと」を宣誓し「宣誓書」を作成してサインし交付を受けるのが一連の流れです。

なお、婚姻要件具備証明書もその代替書類も、パートナーの国の言語で書かれているため、日本の役所へ提出するときは、和訳した文書も提出する必要があります。翻訳文書については当事者はもちろんのこと、外注したものでも構いません。

手続きの流れ

①役所への事前確認

役所に連絡し、外国人パートナーの国籍を伝えた上で必要書類を確認します。婚姻要件具備証明書が発行されない国の場合であれば、代替書類を教えてもらいます。

②在日大使館への問い合わせ

パートナーの国の大使館・領事館にも問い合わせを行います。特に「必要書類」「大使館・領事館へは2人で出頭する必要があるのか」「婚姻要件具備証明書(または代替書類)を発行するための手続き」などについてはしっかりと確認するようにしましょう。

③書類の提出

必要書類が揃ったら役所へ提出します。要件を満たしていればその場で婚姻届が受理され、日本国内では婚姻が成立することになります。ここで法的要件を満たしていないと判断された場合は、書類預かりの状態となり、「受理照会」へ出され、法務省の判断を待つことになります。

④婚姻届受理証明書の受領

婚姻届が受理された後は、同じ窓口で婚姻届受理証明書を受領します。婚姻届受理証明書とは、日本国内で婚姻手続きを行い受理されたことを証明する書類のことです。

⑤婚姻届受理証明書の届出

婚姻届受理証明書の受領後は、パートナーの国の大使館または領事館で手続きを行います。婚姻届受理証明書以外の必要書類は国によってさまざまなので、手続きを行う前に確認をしておきましょう。

⑥婚姻届受理証明書の受領

大使館・領事館で婚姻の届出が受理されると婚姻届受理証明書が発行され、パートナーの国での婚姻手続きも完了し、晴れて国際結婚が成立します。

おめでとうございます!

婚姻届受理証明書は、パートナーが日本に滞在するための在留資格の変更申請を行う際に必要な書類となるので、大切に保管しておきましょう。

配偶者ビザとは

婚姻手続きが完了しても、すぐに日本で一緒に生活できるわけではありません。なぜならば日本に滞在する外国人パートナーには、以下のような配偶者ビザ(在留資格)が必要とされているからです。

日本人の配偶者等ビザ

日本人と外国人が結婚した場合の在留資格です。

永住者の配偶者等ビザ

永住者(特別永住者の方も含む)と外国人が結婚した場合の在留資格です。

配偶者ビザの取得

配偶者ビザの取得は、昨今の偽装結婚増加に伴って審査が厳格化しています。このため、次のようなケースでは配偶者ビザを取得することはできません。

  • 実質的に社会生活上の夫婦としての状態にないとき
  • 夫婦の一方または双方が婚姻生活を続けていく意思のないとき
  • 夫婦としての共同生活の実態を欠いていてその回復の意思のないとき

また、次のようなケースにおいても偽装結婚を疑われることがあり、手続きはやや難化することになります。

  • 交際期間が極端に短い場合
  • 夫婦に年齢差がある場合
  • お見合い結婚の場合
  • 日本人側の収入が低い場合
  • 出会いが風俗営業店や出会い系サイトである場合

パートナーが日本に滞在するケース

この場合は、既に就労可能なビザを取得している可能性があります。必ずしも配偶者ビザへの変更は必要ありませんが、変更により原則として就労制限がなくなるため、日本国内での生活は格段に設計しやすくなります。

パートナーが海外にいるケース

日本人配偶者が出入国在留管理局において「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書の交付を申請します。不備がなければ申請から約1~3か月後に在留資格認定証明書が発行されるので、これを受領します。

受領した在留資格認定証明書を海外のパートナーの元に送付し、海外のパートナーがその他の必要書類とともに在外日本大使館(領事館)にて発給を申請します。ビザの発給を受けることにより、ようやくパートナーは来日することができます。

パートナーを短期滞在で呼ぶ方法

外国人パートナーが自国の在外日本大使館(領事館)に「短期滞在」のビザ(在留資 格)を申請し発給を受けて来日する方法もあります。比較的簡単に発行される「短期滞在」の在留資格ですが、「短期滞在」からの在留資格変更は、原則としてやむを得ない特別の事情に基づくものでなければならないこととされているため、国際結婚を理由とした変更が必ずしも認められるわけではないことに注意しましょう。 なお、日本と査証(ビザ)免除協定を結んでいる国においては、この申請も不要となります。

いわゆるオーバーステイになった場合には、外国人パートナー自らが出入国在留管理局に出頭して申告しても最低1年間は再度日本に入国できなくなってしまうので注意が必要です。

必要となる書類

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 戸籍全部事項証明書
  • 住民税納税証明書
  • 住民票の写し
  • 結婚証明書
  • 質問書
  • 身元保証書等
配偶者ピザの申請方法について

在留特別許可

不法滞在となってしまった外国人パートナーと引き続き日本で婚姻生活を維持するためには「在留特別許可」を求めることになります。この「在留特別許可」は、退去強制手続きが前提となっており、その手続き中において申し出ることになります。「在留特別許可」は法務大臣の自由裁量に委ねられているため、申請の様式もなく申出によって必ず許可を取得できる性質のものではありません。

まとめ

愛に国境は存在しない。

こんな格言もあるとおり、人間の営みや愛情に人種の別や国境は存在しません。ただし、残念ながら手続きは存在しています。

面倒な手続きであることに間違いはありませんが、適切に手続きを踏むことによって享受することができる社会的なメリットは多岐にわたります。事前に手続きを確認してしっかりと準備して婚姻し、これからも国境を越えた愛を育んでいただければ幸いです^^

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