ご存じですか?尼崎市屋外広告物条例について

屋外広告物
出典元:尼崎市公式サイト

広告物等は、良好な景観又は風致を害し、及び公衆に対し危害を及ぼすおそれのないものであるとともに、地域の良好な景観の形成に配慮したものでなければならない。

(尼崎市屋外広告物条例第6条)

広告物は、本来は国民の表現の自由を実現するためのものですが、地域の良好な景観の形成という公共の福祉との調和を図るため、各自治体においては、条例によって一定の制限が設けられています。

本稿では意外に見落とされがちなこの屋外広告物の規制について、尼崎市における条例をひも解きながら解説してみたいと思います。

屋外広告物とは

  1. 常時又は一定の期間継続して表示されるもの
  2. 屋外で表示されるもの
  3. 公衆に表示されるもの
  4. 看板・立看板・はり紙・はり札・広告塔・広告板であるもの

屋外広告物とは、営利非営利の別や表示する内容に関わらず、上の4つの要件をみたす表現物のことを指します。また、文字により表示されたものだけでなく、絵・商標・シンボルマークなどの一定の概念・イメージなどが表示されているものもすべて屋外広告物に含まれます。

該当するもの該当しないもの
道路標識
看板
電車・バスの車体の広告
アドバルーン
屋外に設置されたラックのパンフレット
選挙ポスター
個人住宅の標札
ショーウインドウ中のディスプレイ
街頭で配布されるビラ
駅の構内ホームの看板
音響による広告

自家用広告物等

氏名、名称、店名、商標、事業や営業の内容を表示するため、自己の居宅、事業所、営業所、作業場に表示し、又は設置する広告物等をいいます。

管理用広告物等

自己の所有し、又は管理する土地や物件に管理上の必要に基づき表示し、又は設置する広告物等をいいます。

広告物等の規制

市長の許可 

市の区域(禁止地域等を除く)内において、広告物等を表示し、又は設置しようとする者は、市長の許可を受けなければならない。

(尼崎市屋外広告物条例第8条)

意外に知らない方が多いのがこちらの規制です。尼崎市内において、上記の広告物等を表示又は設置しようとする者は、あらかじめ市長の許可を受ける必要があります。

また、尼崎市では禁止地域等が設定されており、この地域内においてはそもそも屋外広告物を表示したり設置することはできないものとされています。

許可の有効期間は2年以内において市長が定めるものとされており、期間の満了後に継続して広告物等を表示又は設置しようとするときは、期間満了の30日前(許可期間が30日以内のものにあっては10日前)までに更新の申請をして再び許可を受ける必要があります。

このほか、許可を受けた広告物等の内容に変更を加えたり、改造し、移転しようとする際にも、軽微な変更又は改造をしようとするときを除き、あらかじめ変更等の許可を受ける必要があります。

総表示面積の規制

市長が指定する区域、第1種住居地域、第2種住居地域及び準住居地域においては、広告物等の表示面積の合計は、自家用広告物等を除き、10㎡を超えることはできません。また、次のようなルールも存在しています。

広告物等のうち、高さが15mを超える建築物に表示し、又は設置するものの表示面積の合計は、一の建築物の壁面の合計面積に2分の1を乗じて得た面積を超えてはならない。

(尼崎市屋外広告物条例第14条第1項)

要するに、高さ15mを超える建築物の壁面に表示したり設置する広告物等は、その壁面の半分以下の面積までしか占有できませんよ、という規制です。

表示面積について
近隣商業地域
商業地域
地上から52mまでの高さの部分の面積の合計
その他の地域地上から47mまでの高さの部分の面積の合計

禁止地域等

次の地域及び場所においては、これらの地域のうち市長が指定する区域を除き、広告物等を表示し、又は設置することはできません。

  1. 第1種低層住居専用地域
  2. 第2種低層住居専用地域
  3. 第1種中高層住居専用地域
  4. 第2種中高層住居専用地域
  5. 景観地区
  6. 風致地区
  7. 特別緑地保全地区
  8. 伝統的建造物群保存地区
  9. 兵庫県景観条例により指定された景観形成地区及び風景形成地域
  10. 尼崎市都市美形成条例に規定する都市美形成地域
  11. 文化財保護法により指定(仮指定)された建造物や記念物及びその周囲50m以内の地域
  12. 尼崎市文化財保護条例や兵庫県文化財保護条例により指定された文化財、有形文化財、記念物及びこれらの周囲50m以内の地域
  13. 道路、鉄道、軌道及び索道の区間並びにこれらから展望することができる地域のうち、市長が指定する区域
  14. 都市公園法に規定する都市公園の区域及びその他の公園、緑地等の公共空地のうち、市長が指定する区域
  15. 河川、運河、水路、池沼、海浜、港湾、駅前広場及びこれらの付近の地域のうち、市長が指定する区域
  16. 官公署、学校、図書館、公会堂、公民館、博物館、美術館、体育館及び公衆便所の敷地
  17. 古墳及び墓地、火葬場及び葬儀場の敷地並びに社寺及び教会の境域
  18. その他、良好な景観又は風致を維持するため特に必要があるものとして市長が指定する地域又は場所

次の広告物等で市長の許可を受けたものについては、上記の禁止地域内であっても、表示又は設置することが可能です。分かりやすく伝えると、公共性の高い広告物等であったり、公共の福祉にあまり害を与えないようなものが該当します。

  1. 自家用広告物等で規則で定める基準に適合するもの
  2. 道標、案内図板その他公共的目的をもって表示し、又は設置する広告物等で規則で定める基準に適合するもの
  3. 禁止地域等のうち市長が指定する地域又は場所に、公衆の利便に供することを目的として表示し、又は設置する広告物等で規則で定める基準に適合するもの
  4. 自動車に表示する広告物
  5. 道路、鉄道、軌道及び索道の区間並びにこれらから展望することができる地域のうち、市長が指定する区域に表示し、又は設置する広告物等で当該区間から視認できないもの

禁止物件

次の物件には、広告物等を表示し、又は設置することはできません。

  1. 橋りょう、トンネル、高架の構造物及び道路の分離帯
  2. 石垣、擁壁その他これらに類するもの
  3. 街路樹及び路傍樹
  4. 信号機、道路標識、航路標識、道路情報管理施設、カーブ・ミラー及び道路上のさく並びに駒止、里程標その他これらに類するもの
  5. パーキング・メーター及びパーキング・チケット発給設備
  6. 市長が指定する区域内にある電柱、街灯その他これらに類するもの
  7. 消火栓、火災報知機及び消防の用に供する望楼
  8. 郵便差出箱、信書便差出箱及び公衆電話所
  9. 発電用風力設備、送電塔、送受信塔及び照明塔
  10. 煙突及びガスタンク、水道タンクその他これらに類するもの
  11. 銅像、神仏像、記念碑その他これらに類するもの
  12. 景観法により指定された景観重要建造物及び景観重要樹木
  13. 景観の形成等に関する条例により指定された景観形成重要建造物及び景観形成重要樹木
  14. その他、良好な景観又は風致を維持するため特に必要があるものとして市長が指定する物件

次の物件には、はり紙、はり札、広告旗、立看板その他これらに類するもの、これらを掲出する物件又はこれらを支える台を表示又は設置することはできません。このほか、道路の路面には広告物を表示することはできません。

  1. 電柱、街灯その他これらに類するもの
  2. アーチの支柱及びアーケードの支柱

禁止広告物等

次の広告物等については、これを表示し、又は設置することはできません。

  1. 著しく汚染し、退色し、又は塗料等のはく離した広告物等
  2. 著しく破損し、又は老朽化した広告物等
  3. 倒壊又は落下のおそれがある広告物等
  4. 信号機又は道路標識等に類似し、又はこれらの効用を妨げるような広告物等
  5. 道路交通の安全を阻害し、又は阻害するおそれがある広告物等

適用除外

次の広告物等については、公共性の高さをかんがみて、上記の規定は適用されません。

  1. 法令の規定により表示又は設置する広告物等
  2. 国、地方公共団体及び市長が指定する公共的団体が公共的目的をもって表示し、又は設置する広告物等で規則で定めるもの(市長に届け出たものに限る)
  3. 公職選挙法による選挙運動のため使用するポスター、立札等及びこれらを掲出する物件
  4. 公益上必要な施設及び物件に寄贈者名等を表示し、又は設置する広告物等で規則で定める基準に適合するもの

屋外広告物許可申請

許可の基準

市長は、広告物等が条例の規定に適合し、かつ、規則で定める許可の基準に該当する場合に限り、許可をすることができる。

(尼崎市屋外広告物条例第9条)

市長は、広告物等が別に定める基準に適合する場合であって、地域の良好な景観の形成に資し、かつ、公衆に対する危害を及ぼすおそれがないと認めるときは、許可をすることができる。

(尼崎市屋外広告物条例第10条)

この条文に基づき、規則で定められた基準をクリアした広告物等については、許可を受けて表示又は設置することができるようになります。気をつけていただきたいのは、あくまで「許可することができる」という条文であるため、市長の裁量によっては「許可しないことがある」という点です。このことからも、市の担当者とは事前にしっかり協議する必要があるといえそうです。

なお、許可に係る広告物等には、許可を受けた旨の表示をする必要があります。

許可が不要な広告物等

次の広告物等については、市長の許可を受けることなく表示又は設置することができるほか、禁止地域内においても表示又は設置することが可能です。

  1. 自家用広告物等、管理用広告物等で規則で定める基準に適合するもの
  2. 冠婚葬祭又は祭礼のため、一時的に表示し、又は設置する広告物等
  3. 講演会、展覧会、音楽会等のため、その会場の敷地内に表示し、又は設置する広告物等で規則で定める基準に適合するもの
  4. 電車又は自動車に表示する広告物で規則で定めるもの
  5. 道路運送車両法による登録を受けた自動車でその使用の本拠の位置が他の地方公共団体の区域内に存するものに、当該地方公共団体の区域において適用される広告物等の規制に関する条例の規定に従って表示する広告物
  6. 人、動物、車両(電車自動車を除く)、船舶又は航空機に表示する広告物
  7. 地方公共団体が設置する公共掲示板に当該地方公共団体が定める規程に従って表示する広告物
  8. 禁止地域等のうち市長が指定する区域及び禁止地域等以外の地域に、営利を目的としない活動のため表示するはり紙、はり札、広告旗、立看板及びこれらを掲出する物件で規則で定めるもの(市長に届け出たものに限る)

猶予期間

当初は基準をクリアしていたものの、後に基準に適合しなくなった場合はどうなるのでしょうか。

現に適法に表示され、又は設置されている広告物等については、基準に適合しないこととなった日(基準日)から一定の期間、表示又は設置を継続することができます。

許可の残存期間が1年を超えるもの1年間
許可の残存期間が1年以内のもの許可の残存期間
規則で定める堅固な広告物等規則で定める期間
猶予期間内に許可の申請があったとき許可申請に対する処分がなされる日まで

広告物等管理者

許可に係る広告物等を表示し、又は設置する者は、広告物等を管理する者(広告物等管理者)を置かなければならない。

(尼崎市屋外広告物条例第20条第1項)

広告物等を表示又は設置する者は、広告物等管理者を設置する必要があり、設置した際には速やかにその旨を市長に届け出なければなりません。変更又は廃止したときも同様です。

広告物等管理者に特別な資格は必要ありませんが、尼崎市内に住所、事業所又は営業所を有する者であることが原則です。該当する者がいない場合においては、尼崎市に隣接する市(西宮市、伊丹市、大阪市など)に住所を有する者を広告物等管理者とします。

届出の義務

広告物等を表示又は設置する者は、次のような場合には、速やかにその旨を市長に届け出なければなりません。

届出が必要な場合届出義務者
広告物等を表示又は設置する者の変更新たに広告物等を表示又は設置する者となった者
氏名又は住所の変更広告物等を表示又は設置する者
広告物等管理者
名称・主たる事務所の所在地・代表者の氏名の変更広告物等を表示又は設置する者
広告物等管理者
広告物等が滅失したとき広告物等を表示又は設置する者
広告物等管理者

除却義務

広告物等を表示・設置する者又は広告物等管理者は、次のいずれかに該当するときは、直ちに当該広告物等を除却(撤去)し、速やかにその旨を市長に届け出なければなりません。

  1. 許可の期間が満了したとき
  2. 許可が取り消されたとき
  3. 広告物等の表示又は設置が必要でなくなったとき
  4. 当該広告物が禁止広告物等に該当したとき
  5. 猶予期間が経過したとき。

許可の取消し

市長は、許可を受けた者が次のいずれかに該当するときは、許可を取り消すことができます。

  1. 許可の条件に違反したとき
  2. 広告物等の内容に変更を加え、又は広告物等を改造し、若しくは移転したとき
  3. 市長の命令に違反して広告物等の表示若しくは設置の停止又は広告物等の改修、移転、除却その他良好な景観を形成し、風致を維持し、若しくは公衆に対する危害を防止するための必要な措置を講じなかったとき
  4. 偽りその他不正の手段により許可を受けたとき。
許可基準と申請手続きについて

まとめ

簡単な解説にとどめようとしましたが、思った以上のボリュームになってしまいました。この条例には最高で50万円の罰金が課される罰則もあり、見落としていると思わぬ損害が発生してしまうことにつながりかねません。「知らなかった」で済まされないのが行政手続きです。

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屋外広告物新規許可申請38,500円〜
屋外広告物更新許可申請27,500円〜
屋外広告物移転許可申請27,500円〜
上記の申請
+
道路使用占用許可申請
+38,500円〜
各種変更届22,000円
※税込み

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