金属くず商許可と金属くず行商の届出

金属くず

中古品の銅線やスクラップ金属の売買は日常的に行われている行為ではありますが、一部の道府県においては、金属くずの取引を営業として行おうとする際に金属くず商として許可を取得する必要があるという条例が存在しています。

中古品の売買を営業しようとする際に古物商許可が必要になることについてはよく知られた事実であるように感じますが、金属くず商の許可はこれとは別個の許可制度であり、たとえ古物商許可を取得していたとしても、条例の存在する自治体において金属くずを取引の対象とする営業を行う際は金属くず商許可が必要となります。

条例とはいえ法規範(ルール)であることに違いはないため、このことを知らないまま許可申請や届出を怠って営業をしていると、当然ながら罰則の対象になってしまいます。

そこで本稿では、金属くずを取引の対象とする営業をはじめる際に必要とされる金属くず商の許可および金属くず行商の届出について、詳しく解説していきたいと思います。

金属くず営業に関する条例

金属くず営業に関する規制が設けられている条例が存在する自治体は以下のとおりです。全国的に見渡すと決して多いとはいえませんが、近畿圏内では実に5府県もの自治体において金属くず商及び金属くず行商に関する規制が設けられています。

北海道北海道
関東茨城県
中部静岡県、長野県、福井県、岐阜県
近畿兵庫県、大阪府、奈良県、和歌山県、滋賀県
四国徳島県
中国島根県、岡山県、広島県、山口県

なお、これらはあくまでも都道府県条例を基準としたリサーチであり、上記以外の区域内であっても市町村レベルで規制が設けられている可能性があります。金属くず営業をはじめようとする市町村において規制が存在するかどうかについては、所轄の警察署に対してしっかりと確認を行うようにしてください。

★条例について

条例は各都道府県及び各市町村において制定される独自の法規範(ルール)であり、「都道府県条例」と「市町村条例」が存在しています。都道府県条例であればその都道府県、市町村条例であればその市町村の各区域内においてのみ効力を有します。したがって金属くず営業についても、各自治体によってそれぞれ取扱いが異なります。

金属くずとは

兵庫県金属くず営業条例によると、金属くずとは、金属塊、金属製品(半製品を含む)その他の金属(廃品を含む)であって、「正常な生産工程により生産されたもので、その生産目的に従い、売買し、交換し、加工し、又は使用されるもの」及び「古物営業法に規定する古物」以外のものとされています。

平たく説明すると、本来の目的以外の目的で加工したり使用する中古の金属であって、古物に該当しないものが金属くずに該当します。具体的には、おもに以下のような金属を中古品として取り扱う場合が想定されています。

  • 鉄、アルミ、ステンレス、 銅のスクラップ
  • 銅線、エナメル線、鋼線、電線
  • 合金、 鉛、亜鉛、ハンダ
  • アルミサッシ、ホイール
  • 配管、ラジエーター、コンプレッサー
  • 自動車や自転車等の金属部分等

上記以外の金属であっても、用途が本来の目的とは異なる金属であればその種類や性質は限定されていません。例えば販売するためにスクラップにした鉄や解体した自動車の部品等が金属くずに該当します。

なお、「古物に該当しないもの」が金属くずの該当条件であるため、古物に該当する金属の取引をしようとする際には古物商許可が必要になります。逆に言えば、金属くず営業に関する条例のある道府県において金属くずの取引を行う際には、古物商許可とは別個の金属くず商許可が必要です。

金属くず商許可

金属くず営業に関する条例が定められている道府県の区域内に営業所を設けて金属くずの取引(売買、交換又はこれらの行為を受託して行うこと)を営業として行おうとするときは、営業所の所在地を管轄する警察署を窓口として道府県公安委員会に対して申請を行い、金属くず商の許可を受ける必要があります。

金属くず商許可は営業所単位で受ける必要があり、道府県内に複数の営業所を設ける場合は営業所ごとに所轄の警察署に対して申請を行い、個別に許可を受ける必要があります。

なお、申請の際に納付する申請手数料は以下のとおりですが、金属くずの取引を取り扱う営業所を複数設置する場合は、営業所の数を乗じて(かけ算)計算した申請手数料を支払う必要があります。

地域申請手数料
兵庫県 8,500円
大阪府7,500円
奈良県8,500円
和歌山県12,000円
滋賀県8,700円

金属くず行商の届出

営業所を設けることなく、金属くず営業に関する条例が定められている道府県の区域内に出向いて金属くずの取引を営業として行おうとするときは、行商をしようとする個人の住所を管轄する警察署を窓口として道府県公安委員会に対して金属くず行商の届出を行う必要があります。

例えば条例が定められている道府県の区域内に所在する顧客のところに出向いて金属くずを買い付けに行くようなケースが金属くず行商に該当します。

法人であれば営業所を設置することが通常であるため、金属くず行商については個人名でのみ届出を行うことができます。

このように金属くず行商については個人単位の届出とされているため、基本的には行商を行う者ごとに届出を行う必要がありますが、自治体によっては事業主単位での届出を認めている地域もあります。また、区域外の事業者が金属くず行商届を行う際の届出先は主たる営業を予定している地域を管轄する警察署になります。

金属くず行商の取扱いについては地域差があり、区域外事業者の参入を不可とする地域や、岐阜県のように届出制ではなく許可制を採用している自治体も存在します。

なお、許可制を採用する岐阜県を除き、基本的に金属くず行商の届出について手数料は発生しません。

営業形態手続申請(届出)先
金属くず商許可申請営業所所在地を管轄する警察署
金属くず行商届出行商を行う「個人」の住所を管轄する警察署

まとめ

現在は一部の道府県にのみ適用されている規制ですが、金属の窃盗事件が多発していることからも、今後金属くず商の許可制度を採用する自治体は増えていくのではないかと予測しています。

冒頭でお伝えしたとおり条例とはいえ法規範(ルール)であることに違いはないため、規制を知らずに許可申請や届出を怠って営業をしていると罰則の対象ともなりえます。これは路上で信号無視をしておきながら、「赤信号を見落としていただけだから勘弁して」という理屈が通らないことと同様です。いずれにせよ適切な手続きのもと、適正な営業を心がけるようにしてください。

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古物営業許可申請33,000円
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