整骨院(接骨院)開業のための基礎知識

接骨院のイラスト

実は私が初めて手にした国家資格こそが柔道整復師免許でした。大学を辞め19歳で下積みを開始し、いつかは立派な整骨院を開業することを夢見ていました。それゆえ、柔道整復師に対しては、行政書士であること以上に強い思い入れがあります。

その後、尼崎において実際に整骨院を開院するに至るわけですが、紆余曲折を経て、現在は同市内で行政書士事務所を営んでいるのですから人生わからないものです。

本稿では、整骨院や鍼灸院の開業を目指す先生方のために、施術所を開設する際に必要とされている手続きについてご案内させていただきたいと思います。

施術所開設届

施術所の開設者は、開設後10日以内に、施術所の所在地を管轄する保健所に対し、施術所開設届を提出する必要があります。また、あん摩マッサージ、はり、きゅうの施術所を併設する場合には、それぞれの開設届を併せて提出することになります。

「開設後」である点にご注意ください。

届出は営業開始の要件とはなっていませんが、施術所において保険請求を行うためには、地方厚生局に対して、受領委任取扱契約の届出を行う必要があります。この際の添付書類として、施術所開設届の写しが求められているため、開業当日から保険請求を行うことはできません。

この期間はいわゆる「待機期間」のようなものであり、実際に営業を行っていることが、受領委任取扱契約の要件となっています。この仕組みを把握しないまま計画を実行してしまい、後々トラブルに発展してしまうケースもありますので、十分にご注意ください。

なお、多くの整骨院ではこの仕組みを逆手に取って、営業開始の時期をプレオープンとして設定しています。こうすることでかえってオープンまでの下準備をスムーズに進められるというメリットもあります。

届出に必要となる書類

  • 施術所開設届
  • 柔道整復師免許の原本と写し
  • 本人確認書類(提示)
  • 施術所平面図
  • 施術所周辺図
  • 定款の写し(法人)
  • 登記事項証明書(法人)
  • 賃貸契約書のコピー(賃貸の場合)
  • その他各保健所で求められる書類作成

保健所の実地検査

実地検査を行っている地域もあれば、行っていない地域もあるなど、地域ごとの対応に温度差があります。いずれにせよ、開業前後のスケジュールに大きく関わってきますので、事前に保健所に問い合わせをするなどして準備を進めるようにしましょう。

受領委任取扱契約の届出

すでに触れているように、施術所において保険請求を行う場合は、開設届の提出後、施術所を管轄する地方厚生局に対して受領委任取扱契約の届出を行う必要があります。これは個人と地方厚生局との契約の場合における取扱いであって、社団法人の会員の場合は、団体が地方厚生局と契約を締結する「団体協定」と呼ばれる形になります。

受領委任取扱契約とは、本来は施術料を全額支払った後に、患者側が保険者に請求して償還払いを受けるべきところを、施術所側が患者の自己負担分のみを先に受領し、後に残りの分を保険者に請求するというシステムに変更するための契約です。施術所は、この届出が受理された日から保険を取り扱えるようになります。

この取扱いにより、患者の施術料支払いや療養費請求手続きに係る負担が軽減され、保険者等への療養費請求手続きが明確化されることになります。

契約に必要となる書類

  • 確約書
  • 受領委任の取扱いに係る届出
  • 実務経験期間証明書
  • 施術管理者研修修了証の写し
  • 開設届の写し(保健所の受理印のあるもの)
  • 施術所平面図
  • 施術所周辺図
  • 施術管理者の柔道整復師免許証の写し
  • その他地方厚生局が求める書類

施術管理者

柔道整復師のイメージ

施術所は、施術や受領委任の取扱いを管理する有資格者を、施術管理者として施術所ごとに配置する必要があります。この施術管理者になるためには、資格取得後に、届出時期に合わせて以下の実務経験を有することが必要とされているほか、2日間の施術管理者研修を受講することが義務付けられています。

届出をする時期必要となる実務経験
〜2022年3月1年間
2022年4月〜2024年3月2年間
2024年4月〜3年間

実務経験証明書

施術管理者となる柔道整復師が従事していた期間を、従事していた施術所の管理者(開設者または施術管理者)が証明します。地方厚生(支)局において登録されている勤務柔道整復師の情報を実務経験の期間を確認するものとして使用することもできます。複数の施術所での経験を合算することもできますが、この場合は、複数の開設者または施術管理者の証明が必要となります。施術所の施術管理者が行方不明など連絡が取れない場合は、給与明細や源泉徴収表を添付する方法により実務経験を証明することも認められていますが、あくまで例外的な取扱いとなるため、恣意的な理由により連絡が取れないといった場合には認められません。

施術管理者研修

公益社団法人柔道整復研修試験財団が主催しており、研修費用は20,000円です。事前に申し込むことにより受講します。土日祝日の連続した2日間(16時間)で実施され、研修受講後2週間程度で施術管理者研修修了証が送付されます。

施術管理者が上記の要件を満たしているかどうかについては、事前にしっかりと確認するようにしましょう。

共済組合・防衛省等への届出

共済組合・防衛省等の保険を取り扱うためには、それぞれを管轄する機関に対して、届出を行う必要があります。この届出には、申請書のほか、確約書と柔道整復師免許証の写しが必要になります。なお、地方公務員関係は、地方公務員共済組合協議会に対して届出を行いますが、知事の承諾が必要とされる

都道府県やそもそも届出が不要な都道府県もあるため、事前にしっかりと確認するようにしましょう。

労災保険指定医療機関の指定

労災保険を取り扱うためには、管轄する都道府県労働局に対し、以下の書類を提出して申請し、都道府県労働局長による指定を受ける必要があります。届出に不備がなければ、約1~3か月程で通知書によって通知がなされます。

  • 申出書
  • 委任者選任届
  • 受任者選任届
  • 確約書
  • 指定機関登録報告書
  • 開設届の写し(保健所の受理印のあるもの)
  • 柔道整復師免許証の写し
  • 施術所平面図
  • 施術所周辺図

生活保護法等の指定

生活保護を取り扱うためには、施術者ごとに、施術所を管轄する福祉事務所に対して、以下の書類を提出することで申請を行い、生活保護法による指定を受ける必要があります。

  • 指定助産機関・施術機関指定申請書
  • 誓約書(指定助産機関・施術機関指定関係)
  • 柔道整復師免許証の写し(施術者ごと)
  • 契約書2通(協定団体に所属していない方)

開設時申請サポート

弊所では、施術所開設時の各種申請手続についてのサポートを取り扱っております。また、開設届とセットで実務経験証明書の取得についてもサポートをさせていただいています。

開業前の不安は、同じ柔道整復師であるからこそ理解することができます。煩らわしい事務手続きは手続きの専門家である行政書士に任せて、本業の準備に専念することをお薦めさせていただきます。

施術所開設届44,000円
施術所開設届
+
実務経験証明書取得
77,000円
変更届等22,000円
※税込み

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