全酒類卸売業の免許要件(基準)について

様々なお酒

酒類の販売業をしようとする場合には、酒税法の規定に基づき、販売場ごとに、その販売場の所在地の所轄税務署長から酒類販売業免許を受ける必要があります。このうち、全酒類卸売業免許とは、酒類販売業者又は酒類製造者に対し、原則として、全ての品目の酒類をを継続的に販売することが認められる免許です。

全酒類卸売業免許については、卸売販売地域ごとに算定した各免許年度において免許を付与等することができる件数(免許可能件数)が限られている等、酒類卸売業免許の中でも、取得難易度が際立って高い免許となっています。

そこで本稿では、これから全酒類卸売業免許の取得を目指す皆さまに向けて、要求されている免許要件(基準)について、詳しく開設していきたいと思います。

免許の申請等

全酒類卸売業免許の申請等は、免許年度のいつでも申請等販売場の所在地の所轄税務署において行うことができますが、抽選対象申請期間(毎年9月1日から9月30日までの間)に提出された申請書等のうち、申請書等の記載内容が完全で添付書類に不備がないもの(抽選対象申請書等)については、審査する順位を決定するために公開抽選を行った上でその順位に従って免許要件の審査を行い、その免許年度における免許可能件数の範囲内で免許が付与等されます。

各免許年度における卸売販売地域内の免許可能件数については、毎年9月1日(土・日曜日の場合は翌月曜日)に卸売販売地域内の各税務署において公告されるとともに、国税庁ホームページに掲載されます。

なお、7月1日から8月31日までに受理した申請等(法人成り等に伴い提出された申請書、営業の譲受けに伴い提出された申請書及び同一卸売販売地域内での販売場の移転の許可申請書を除く)については、同年9月1日に受理したものとして取り扱われます。そのため、受理した時点で、申請等販売場の所在する卸売販売地域における免許可能件数が残存している場合であっても、翌免許年度の免許可能件数をもって、免許が付与等されることになります。

申請書等は、原則として、申請販売場の所在地の所轄税務署の文書受付業務を担当する窓口に到達した時点で提出があったことになります。郵便等により提出される申請書等についても到達した時点で提出があったことになります。

申請書等が、申請販売場の所在地の所轄税務署の時間外文書収受箱に提出された場合申請書等が取り出された日の直前の開庁日に到達したものとみなされる
申請書等が、国税電子申告・納税システム(e-Tax)によって提出された場合送信された申請書等がe-Taxに記録された時点において提出があったこととみなされる

申請等に当たり提出する書類

申請書を提出する場合には、所定の添付書類を同時に提出する必要があります。ただし、抽選対象申請期間に申請書等を提出する場合には、申請等時提出分の書類のみの提出で差し支えありませんが、公開抽選の後、審査開始通知書を受けた際には、審査時提出分の書類を提出することになります。なお、申請書等の提出は、e-Taxによって行うことができます。

申請書等の記載漏れや提出書類の添付漏れがないか等の不備があった場合には、税務署から補正のための連絡が入りますが、税務署が指定した期限までに補正されない場合には、公開抽選の対象から除外されますのでご注意ください。

申請(申出)時提出分の書類

申請者は、抽選対象申請期間に、所轄税務署に対して下表の免許申請書を必ず提出する必要があります。「審査時」欄に○印の付された書類については、申請時点においては、提出しなくても差し支えありません。

公開抽選により決定した審査順位が、その卸売販売地域の免許可能件数の範囲内となった方については、指定された期限まで(審査開始通知の日から2週間以内)に、審査時提出分の書類を提出します。税務署が指定した期限までに審査時提出分の書類の提出がない場合には、後順位の申請書等が先に審査されることがあります。

公開抽選により決定した審査順位が、その卸売販売地域の免許可能件数の範囲外となった方については、審査時提出分の書類を提出する必要はありませんが、事後的な理由によって、免許可能件数の範囲内となった場合には、税務署からの連絡に基づき、審査時提出分の書類を提出する流れとなります。

また、審査順位が免許可能件数の範囲外となった申請書等について、新規免許等の付与件数が免許可能件数に達したことにより最終的に免許の付与等ができないこととなった場合には、その旨が書面にて通知されます。

新規販売場の免許申請
新規販売場の免許申請に必要となる書類
条件緩和(解除)の申出
条件緩和(解除)の申出に必要となる書類

審査時提出分の書類

公開抽選により審査順位が決まり、その卸売販売地域の免許可能件数の範囲内の審査順位になった方については、審査時提出分の書類を、指定された期限まで(審査開始通知の日から2週間以内)に提出する必要があります。

移転許可申請の場合は、提出する書類が異なるため、申請書等を提出する所轄税務署(税務署の管轄区域を異にする移転の場合は、移転前の販売場の所在地の所轄税務署)を担当する酒類指導官までお問い合わせください。

全酒類卸売免許の要件

酒類卸売業免許を受けるためには、申請者、申請者の法定代理人、申請法人の役員、申請販売場の支配人及び申請販売場が、人的要件場所的要件経営基礎要件及び需給調整要件の各要件を満たしていることが必要です。免許の要件を満たしていることについては、「酒類販売業免許の免許要件誓約書」により誓約します。

誓約の内容を偽るなど不正行為があった場合には、その不正行為が、審査段階で判明したときは拒否処分、免許の取得後に判明したときは取消処分の対象となります。不正行為により免許を取得した場合は、その不正行為によって取得した免許だけでなく、その者が有している全ての免許について取消処分を受けることがあります。

また、免許の取消処分を受けた場合には、①取消処分を受けた者、②取消処分を受けた者が法人であるときにはその法人の業務を執行する役員及び③これらの者が役員となっている法人は、原則として、取消処分を受けた日から3年を経過しなければ新たに免許を受けることはできません。

人的要件

①申請者が営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者である場合はその法定代理人が、②申請者又は法定代理人が法人の場合はその役員が、また、③申請販売場に支配人をおく場合はその支配人が、それぞれ、上記(1)、(2)、(4)、(5)及び(6)の要件を満たす必要があります。

  • 申請者が酒類等の製造免許若しくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の許可の取消処分を受けた者である場合には、取消処分を受けた日から3年を経過していること
  • 申請者が酒類の製造免許若しくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の許可の取消処分を受けたことがある法人のその取消原因があった日以前1年内にその法人の業務を執行する役員であった者の場合には、その法人が取消処分を受けた日から3年を経過していること
  • 申請者が申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けたことがないこと
  • 申請者が国税又は地方税に関する法令等に違反して、罰金の刑に処せられ又は通告処分を受けた者である場合には、それぞれ、その刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過していること
  • 申請者が、20歳未満(の者の飲酒の禁止に関する法律、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(20歳未満の者に対する酒類の提供に係る部分に限る)、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、刑法(傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合及び結集、脅迫又は背任の罪)又は暴力行為等処罰に関する法律の規定により、罰金刑に処せられた者である場合には、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること
  • 申請者が禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること

場所的要件

正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けることはできません。具体的には、①申請販売場が、製造免許を受けている酒類の製造場や販売業免許を受けている酒類の販売場、酒場又は料理店等と同一の場所でないこと、②申請販売場における営業が、販売場の区画割り、専属の販売従事者の有無、代金決済の独立性その他販売行為において他の営業主体の営業と明確に区分されていることが必要となります。

経営基礎要件

免許の申請者が破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合のほか、その経営の基礎が薄弱であると認められる場合は、免許を受けることができません。

具体的には、申請者(申請者が法人のときは代表権を有する役員又は主たる出資者を含む)が、消極的要件のいずれの場合にも該当しないかどうか、積極的要件の要件を充足するかどうかで判断されます。

消極的要件

  • 現に国税又は地方税を滞納している場合
  • 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けている場合
  • 最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が資本等の額(資本金、資本剰余金及び利益剰余金の合計額から繰越利益剰余金を控除した額)を上回っている場合
  • 最終事業年度以前3事業年度の全ての事業年度において資本等の額の20%を超える額の欠損を生じている場合
  • 酒税に関係のある法律に違反し、通告処分を受け、履行していない場合又は告発されている場合
  • 販売場の申請場所への設置が、建築基準法、都市計画法、農地法、流通業務市街地の整備に関する法律その他の法令又は地方自治体の条例の規定に違反しており、店舗の除却又は移転を命じられている場合
純資産の部

最終事業年度が、④<0(繰越損失)の場合で、繰越損失額(④)が、資本等の額(①+②+③-④)を超えている場合は、消極的要件に該当します。

また、各事業年度(過去3事業年度)において純損失が計上されている場合で、各事業年度の当期純損失の額が、各事業年度の資本等の額(①+②+③-④)×20%の額を全ての事業年度において超えている場合にも消極的要件に該当します。

積極的的要件

  • 経験その他から判断し、適正に酒類の卸売業を経営するに十分な知識及び能力を有すると認められる者又はこれらの者が主体となって組織する法人であること(経験要件)
  • 酒類を継続的に販売するために必要な資金、販売施設及び設備を有していること、又は必要な資金を有し免許を付与するまでに販売施設及び設備を有することが確実と認められること
  • 申請等販売場における年平均販売見込数量(卸売基準数量)が、全酒類卸売業免許に係る申請等については 100kl 以上、ビール卸売業免許に係る申請等については 50kl 以上であること
経験要件

申請者等(申請者等が法人の場合はその役員)及び申請等販売場の支配人がおおむね以下のいずれかの経歴を有する者であって、酒類に関する知識及び記帳能力等、酒類の卸売業を経営するに十分な知識及び能力を有し、独立して営業ができるものと認められる場合は、原則として、この要件を満たすものとして取り扱われます。

  • 酒類の製造業若しくは販売業(薬用酒だけの販売業を除く)の業務に直接従事した期間が引き続き10年(申請等販売場が沖縄県に所在する場合の申請者等の経歴については3年)以上である者
  • 酒類の製造業若しくは販売業(薬用酒だけの販売業を除く)の事業の経営者として直接業務に従事した者にあっては5年以上である者
  • 調味食品等の卸売業を10年以上継続して経営している者
  • 上記の業務に従事した期間が相互に通算して10年以上である者
  • 酒類業団体の役職員として相当期間継続して勤務した者又は酒類に関する事業及び酒類業界の実情に十分精通していると認められる者

需給調整要件

酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合には免許を受けることはできません。

全酒類卸売業免許については、それぞれの免許に係る販売場数と消費数量のそれぞれの地域的需給調整を行うために、都道府県を一単位として、卸売販売地域が設けられています。

条件緩和の要件

なお、他の卸売業免許から、全酒類卸売業免許への条件緩和(「通信販売を除く小売に限る」旨の免許条件が付された酒類販売場を有する酒類小売業者の方が、その販売場において全酒類の卸売も行いたい場合等) を受けるためには、申出者、申出者の法定代理人、申出法人の役員及び申出販売場の支配人並びに申出販売場において、①申出者等が酒税法第 14 条(酒類の販売業免許の取消し)に規定する酒類販売業免許の取消要件に該当していないこと、②申出販売場における年平均販売見込数量(卸売基準数量)が100kl以上であること及び③需給調整要件を満たしていることが必要です。

酒類卸売業免許の審査

酒類卸売業免許の審査は、原則として、全酒類卸売業免許については、公開抽選により決定した審査順位に従い、申請書等及び審査時提出分の書類の内容に不備がないか、申請者等及び申請等販売場が免許の要件に合致しているか等の点について行われるほか、必要に応じ、来署を求められたり、現地確認が行われることがあります。(免許の審査に当たっては、審査手続の実効性を確保する観点から、酒販組合に対して意見を聴取する場合があります。)

また、申請書等の提出後に決算期が到来し最新の財務諸表の内容を確認する必要がある場合など、追加的に書類を提出するよう求められることがあります。

標準処理期間

酒類卸売業免許申請等の審査に必要な標準的な日数(標準処理期間)は、原則として、申請書等の提出のあった日の翌日から2か月以内となります。ただし、添付が漏れている書類や審査を行う上で必要となる参考書類の追加提出又は申請書等の補正が必要となる場合には、その連絡をした日から、その書類の提出等があるまでの間の日数は、標準処理期間から除外されます。

また、公開抽選を実施した酒類卸売業免許の標準処理期間については、公開抽選により決定した審査順位に従って審査を開始した日から2か月以内となります。このため、審査順位が後順位の申請等は、審査開始日が遅くなる場合があります。

なお、審査を開始する際には、「全酒類卸売業免許審査開始通知書」により審査開始日等が通知されます。

免許の付与等

酒類卸売業免許が付与される場合。税務署から「酒類販売業免許に伴う登録免許税の納付通知書」により通知がなされた後に、税務署又は金融機関等で登録免許税を納付します。

登録免許税の額は、免許1件につき9万円(酒類小売業免許を条件緩和(解除)する場合は6万円)です。登録免許税の納付に係る領収証書は、「登録免許税の領収証書提出書」(現物)に貼付して、指定された期日までに税務署に提出します。

酒類卸売業免許を付与等する旨の通知は、原則として、税務署に提出された「登録免許税の領収証書提出書」により登録免許税が納付されていることの確認を受けた上で、「酒類販売業免許通知書」(条件緩和(解除)の場合は、「酒類販売業免許の条件緩和(解除)通知書」)が交付又は送付されることにより行われます。

なお、審査の結果、免許の要件を満たさないため、又は付与件数が免許可能件数に達したため等により免許を付与等できない場合には、その旨が書面で通知されます。

酒類卸売業免許者の氏名等の公表

国税庁では、免許の付与等を行った場合には、その免許者の、①免許等年月日、②申請等年月日、③免許者の氏名又は名称及び法人番号、④販売場の所在地、⑤免許等種類(卸小売の区分、全酒類・ビール・洋酒・輸出入・店頭販売等の区分)、⑥処理区分(新規、条件緩和等)について、免許を受けた日の翌月末から公表することとしています。

これらの情報は、国税庁ホームページ(外部サイト)『ホーム/税の情報・手続・用紙/お酒に関する情報/酒類の免許/免許の新規取得者名等一覧』に掲載されます。

酒類に関する免許取得サポート

弊所では、全国各域にわたり酒類販売業免許申請の代行を承っております。税務署との事前協議から、面倒な書類の作成、必要書類の収集及び申請の代行に至るまで、しっかりとフルサポートいたします。また、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」を標榜しているため、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。酒類販売業免許申請は、ケースごとに難易度や用意すべき書類が異なるため多少の変動はありますが、たとえば近年台頭する見積もりサイトには負けるつもりはありません。もちろん相見積りにも応じています。酒類販売業免許申請でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

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