AV新法を分かりやすく解説

足を組んで座る女性

AV新法は、正式名称を性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律(以下、AV新法)といい、アダルトビデオ(以下、AV)への出演に係る被害の防止と被害者の救済を目的として2022年2月に制定・施行された法律です。

弊所は多くの行政書士が回避するアダルトな手続きを取り扱う機会も多く、世にある様々な形態の営業を手続面からサポートしてきました。AV事業に直接関与したことこそありませんが、日常業務として取り扱う性風俗特殊営業との親和性も高く実法令に触れる機会が多いことから、関心のある皆さまに向けて、できるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。

文言の定義

法令は回りくどい表現が多いため、まずはAV新法中に登場する文言について、下表でしっかりと確認するようにしてください。

性行為性交若しくは性交類似行為又は他人が人の露出された性器等(性器又はこう門)を触る行為若しくは人が自己若しくは他人の露出された性器等を触る行為
性行為映像制作物性行為に係る人の姿態を撮影した映像並びにこれに関連する映像及び音声によって構成され、社会通念上一体の内容を有するものとして制作された電磁的記録又はこれに係る記録媒体であって、その全体として専ら性欲を興奮させ又は刺激するもの
性行為映像制作物への出演性行為映像制作物において性行為に係る姿態の撮影の対象となること
出演者性行為映像制作物への出演をし、又はしようとする者
制作公表撮影、編集、流通、公表(頒布、公衆送信(公衆(特定かつ多数の者を含む)によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと)又は上映)等(これらの行為に関するあっせんを含む)の一連の過程の全部又は一部を行うこと
出演契約出演者が、性行為映像制作物への出演をして、その性行為映像制作物の制作公表を行うことを承諾することを内容とする契約
制作公表者性行為映像制作物の制作公表を行う者として、出演者との間で出演契約を締結し、又は締結しようとする者
制作公表従事者制作公表者以外の者であって、制作公表者との間の雇用、請負、委任その他の契約に基づき性行為映像制作物の制作公表に従事する者

目的と成立背景

この法律は、性行為映像制作物の制作公表により出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがあり、また、現に生じていることに鑑み、性行為映像制作物への出演に係る被害の発生及び拡大の防止を図り、並びにその被害を受けた出演者の救済に資するために徹底した対策を講ずることが出演者の個人としての人格を尊重し、あわせてその心身の健康及び私生活の平穏その他の利益を保護するために不可欠であるとの認識の下に、性行為の強制の禁止並びに他の法令による契約の無効及び性行為その他の行為の禁止又は制限をいささかも変更するものではないとのこの法律の実施及び解釈の基本原則を明らかにした上で、出演契約の締結及び履行等に当たっての制作公表者等の義務、出演契約の効力の制限及び解除並びに差止請求権の創設等の厳格な規制を定める特則並びに特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の特例を定めるとともに、出演者等のための相談体制の整備等について定め、もって出演者の性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資することを目的とする。

(AV新法第1条)

上記がAV新法の目的について触れたド頭の条文ですが、長文かつ表現も分かりにくいため端折って解説すると、①AV出演被害の発生及び拡大の防止を図ること、②被害者を救済すること、③もって出演者の性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資することを立法の目的としています。

成立の背景としては、AV出演者の心身や私生活について重大な被害が相次いで発生していたという事実がありますが、2022年4月1日に施行された民法の改正において、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い、いわゆる未成年者取消権(親の同意なく結んだ契約を取り消す権利)の適用対象外となった18歳・19歳の若者を保護する必要性から議論が交わされ、これをきっかけとしてAV新法がスピード成立し、同年6月には早くも公布され、施行する流れとなりました。

なお、AV新法は年齢・性別の区別なく適用され、個人撮影AVや同人AVなどの非適正AVにも適用されます。

他方、AV新法に対する反対意見や、実態に則した法律改正を求める声も多く、新法ゆえまだまだ安定した法律であるとは言えないのが現状です。

実施及び解釈の基本原則

制作公表者及び制作公表従事者は、その行う性行為映像制作物の制作公表により出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがあり、また、現に生じていることを深く自覚して、出演者の個人としての人格を尊重し、あわせてその心身の健康及び私生活の平穏その他の利益を保護し、もってその性をめぐる個人の尊厳が重んぜられるようにしなければならない。

(AV新法第3条第1項)

ここではAV新法を運用する上での基本原則を確認していますが、上記の基本原則を踏まえ、出演者に対する性行為の強制を禁止するほか、AV新法、民法、刑法及び売春防止法その他の法令を、制作公表者及び制作公表従事者が有利になるよう解釈してはならない旨を定めています。

★民法第90条

民法第90条では、「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」として、公序良俗に違反する法律行為を無効とする定めを設けていますが、AV新法のいかなる規定も、この規定その他の法令の規定により無効とされる契約を有効とするものと解釈することはできません。

★刑法、売春防止法その他の法令

制作公表者及び制作公表従事者は、性行為映像制作物の制作公表に当たっては、AV新法により、刑法、売春防止法その他の法令において禁止され又は制限されている性行為その他の行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、出演者の権利及び自由を侵害することがないようにしなければなりません。

出演契約

出演契約についても出演者の利益の保護を図る規定が設けられており、具体的には、出演契約を性行為映像制作物ごとに締結しなければならないほか、出演契約は、書面又は電磁的記録でしなければ効力を生じない旨の定めが設けられています。

また、出演契約書等(出演契約に係る書面又は電磁的記録)の内容についても定めがあり、出演契約書等には、以下の事項を記載し、又は記録することが義務付けられています。

  • 制作公表者及び出演者の氏名又は名称その他制作公表者及び出演者を特定するために必要な事項
  • 出演契約の締結の日時及び場所
  • 出演者が性行為映像制作物への出演をすること
  • 出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影を予定する日時及び場所
  • 撮影の対象となる出演者の性行為に係る姿態の具体的内容
  • 性行為に係る姿態の相手方を特定するために必要な事項
  • 性行為映像制作物の公表の具体的方法及び期間
  • 性行為映像制作物の公表を行う者が制作公表者以外の者であるときは、その旨及び当該公表を行う者の氏名又は名称その他当該公表を行う者を特定するために必要な事項
  • 出演者が受けるべき報酬の額及び支払の時期
  • 性行為映像制作物について頒布又は上映を行う国名又は地域名(国内の一部で頒布又は上映を行う場合にあっては、その都道府県名)及び公衆送信を行う国名又は地域名(自動公衆送信装置を用いる場合にあっては、自動公衆送信装置の設置者の氏名又は名称及び住所地の属する国名又は地域名)

出演契約に係る説明義務

制作公表者は、出演者との間で出演契約を締結しようとするときは、あらかじめ、その出演者に対し、出演契約事項(出演契約書等に規定する事項)について出演契約書等の案を示して説明するとともに、以下の事項についてこれらの事項を記載し又は記録した書面又は電磁的記録(以下、説明書面等)を交付し又は提供して説明を行う義務を負います。

  • 第7条から第16条までに規定する事項(性行為映像制作物の撮影、撮影された映像の確認、性行為映像制作物の公表の制限、出演契約等の条項の無効、出演契約の取消し、出演契約の法定義務違反による解除、出演契約の任意解除等、解除の効果、差止請求権、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の特例)
  • 取消権については追認をすることができる時から、解除権については出演者が解除権を行使することができることを知った時から、それぞれ、時効によって消滅するまで、5年間行使することができること
  • 撮影された映像により出演者が特定される可能性があること
  • 相談機関の名称及び連絡先
  • その他内閣府令で定める事項

制作公表者は、説明を行うに当たっては、出演者がその内容を容易かつ正確に理解することができるよう、丁寧に、かつ、分かりやすく、これを行わなければならず、制作公表者以外の者は、出演契約の内容又は説明事項に関し、出演者を誤認させるような説明その他の行為をすることはできません。

出演契約書等の交付等義務

制作公表者は、出演者との間で出演契約を締結したときは、速やかに、出演者に対し、出演契約事項が記載され又は記録された出演契約書等を交付し、又は提供する義務を負います。

出演契約に関するポイント

以上をまとめると、出演契約に関する規定について、ポイントとなるのは以下のとおりです。

  • 出演契約を性行為映像制作物ごとに締結すること
  • 出演契約書等を交付すること
  • 出演契約は、書面又は電磁的記録でしなければ効力を生じないこと
  • 出演契約書等には、一定の必要事項を記載すること
  • 出演者に対し、出演契約事項について出演契約書等の案及び交付した説明書面等を示して説明すること

性行為映像制作物の撮影等

性行為映像制作物の撮影そのものについても、以下のとおり、出演者の利益を保護する規定が設けられています。

撮影の実施出演契約書等の交付等を受けた日又は説明書面等の交付等を受けた日のいずれか遅い日から1か月を経過した後でなければ、性行為映像制作物への出演に係る撮影を行うことはできない
撮影の拒絶性行為映像制作物への出演に係る撮影において、出演者は、出演契約において定められている性行為に係る姿態の撮影であっても、その全部又は一部を拒絶することができ、これ(拒絶)によって制作公表者又は第三者に損害が生じたときであっても、出演者は、その賠償の責任を負わない
債務履行の任意性の確保性行為映像制作物への出演に係る撮影に当たっては、出演者の健康の保護(生殖機能の保護を含む)その他の安全及び衛生並びに出演者が性行為に係る姿態の撮影を拒絶することができるようにすることその他その債務の履行の任意性が確保されるよう、特に配慮して必要な措置を講じなければならない

また、いかなる名称によるかを問わず、出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影に密接に関連する以下の出演者の姿態の撮影は、出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影とみなしてこれらの規定が適用されます。

  • 性交または性交類似行為に係る人の姿態
  • 他人が人の性器等(性器、肛門または乳首)を触る行為または人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させまたは刺激するもの
  • 衣服の全部または一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等もしくはその周辺部、臀部又は胸部)が露出されまたは強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させまたは刺激するもの

撮影された映像の確認

制作公表者は、性行為映像制作物の公表が行われるまでの間に、出演者に対し、出演契約に基づいて撮影された映像のうち出演者の性行為映像制作物への出演に係る映像であって公表を行うもの(制作公表者が公表に関する権原を有するものに限る)を確認する機会を与えなければなりません。

性行為映像制作物の公表の制限

出演者に熟慮する時間を与えるため、性行為映像制作物の公表は、性行為映像制作物に係る全ての撮影が終了した日から4か月を経過した後でなければ行うことはできません。

契約に関する特則

無効、取消し及び解除等に関しても、民法上の契約に対する特則が設けられており、出演者の利益の保護が図られています。

出演契約等の条項の無効

性行為映像制作物を特定することなく、出演者に契約の相手方その他の者が指定する性行為映像制作物への出演をする義務を課す契約の条項は無効となるほか、出演契約について定めた以下の条項は無効となります。

  • 出演者の債務不履行について損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項
  • 制作公表者の債務不履行により出演者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を免除し、又は制作公表者にその責任の有無若しくは限度を決定する権限を付与する条項
  • 制作公表者の債務の履行に際してされたその制作公表者の不法行為により出演者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を免除し、又は制作公表者にその責任の有無若しくは限度を決定する権限を付与する条項
  • 出演者の権利を制限し又はその義務を加重する条項であって、信義則に反して出演者の利益を一方的に害するものと認められるもの

出演契約の取消し

制作公表者が出演契約に係る説明義務若しくは出演契約書等の交付等義務に違反したとき、又は制作公表従事者が出演契約の内容又は説明すべき事項に関し出演者を誤認させるような説明その他の行為をしたときは、出演者は、その出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができます。

出演契約の法定義務違反による解除

以下に該当する事由があるときは、出演者は、催告をすることなく、直ちに出演契約の解除をすることができるほか、解除に伴う損害賠償の責任も負いません。

  • 撮影の実施の制限又は債務履行の任意性の確保の規定に違反して、その出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影(出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影とみなされる撮影を含む)が行われたとき
  • 出演者に対し、撮影された映像のうち当該出演者の性行為映像制作物への出演に係る映像であって公表を行うものを確認する機会を与えることなく、性行為映像制作物の公表が行われたとき
  • 性行為映像制作物の公表の制限に違反して、同条の期間を経過する前に性行為映像制作物の公表が行われたとき

出演契約の任意解除等

出演者は、性行為映像制作物の公表が行われた日から1年を経過するまでの間であれば、書面又は電磁的記録により、任意に、出演契約の申込みの撤回又は出演契約の解除をすることができます。

ただし、出演者が、制作公表者若しくは制作公表従事者が出演契約に係る説明義務の規定に違反して出演契約の任意解除等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことによりその告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は制作公表者若しくは制作公表従事者が出演契約書等の交付等義務の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによって期間を経過するまでにその出演契約の任意解除等をしなかった場合には、出演者が、制作公表者又は制作公表従事者が出演契約の任意解除等をすることができる旨を記載して交付した書面を受領した日から1年を経過するときまで、この期間は延長されます。

出演契約の任意解除等は、出演契約の任意解除等に係る書面又は電磁的記録による通知を発した時に効力を生じ、任意解除等があった場合においては、制作公表者は、出演契約の任意解除等に伴う損害賠償を請求することができません。

これらの規定に反する特約で出演者に不利なものは無効となるほか、制作公表者及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者に対し、出演契約の任意解除等に関する事項その他その出演契約に関する事項であって出演者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告げる行為や、出演者を威迫して困惑させる行為を行うことができません。

なお、出演契約が解除されたときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負います。

差止請求権

出演者は、出演契約に基づくことなく性行為映像制作物の制作公表が行われたとき又は出演契約の取消し若しくは解除をしたときは、性行為映像制作物の制作公表を行い又は行うおそれがある者に対し、制作公表の停止又は予防及びこれらに必要な措置を請求することができます。

制作公表者は、出演者がこの請求をしようとするときは、出演者に対し、その性行為映像制作物の制作公表を行い又は行うおそれがある者に関する情報の提供、その者に対する制作公表の停止又は予防に関する通知その他必要な協力を行う義務を負います。

プロバイダ責任制限法の特則

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)は、プロバイダ等の事業者の損害賠償責任について制限を設けつつ、インターネット上での誹謗中傷等について、削除や発信者情報開示等のルールを規定しています。

他方、AV新法では、性行為映像制作物が流通することによる出演者への権利侵害の程度が大きくなることから、プロバイダ責任制限法の特則を定め、プロバイダ等が削除や発信者情報開示請求に応じた場合において、その損害賠償責任を免除するという規定を設けて、削除や開示をしやすい仕組みを構築しています。

罰則

AV新法の規定に違反したときは、以下のとおり罰則が適用されます。なお、法人の代表者、管理人、代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して①の違反行為については1億円以下の罰金、②③の違反行為については100万円以下の罰金が科されます。(両罰規定)

3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科出演契約の任意解除等に関する事項その他その出演契約に関する事項であって出演者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告げ、又は威迫して困惑させたとき
6ヶ月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又は併科説明書面等を交付せず若しくは提供せず、又は説明すべき事項が記載され若しくは記録されていない説明書面等若しくは虚偽の記載若しくは記録のある説明書面等を交付し若しくは提供したとき
出演契約書等を交付せず若しくは提供せず、又は出演契約事項が記載され若しくは記録されていない出演契約書等若しくは虚偽の記載若しくは記録のある出演契約書等を交付し若しくは提供したとき
※個人事業主の代理人、使用人その他の従業者が、個人事業主の業務に関し、違反行為をしたときは、個人事業主に対しても、それぞれ同額の罰金が科されます。

まとめ

AV新法は、民法上の契約に関する事項を出演者に有利になるよう大幅に修正した特別法ではあるものの、一部出演者側からも反対意見が上がるなど、まだまだ安定した法律とは言えません。

そもそも制定・施行されてから間もない法律であり、施行後2年以内を目処に、施行状況等を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとされています。

他方、出演被害が存在することは事実であり、違反行為に適用される罰則も、児童買春・児童ポルノ禁止法違反と同様に厳罰が設けられているため、関係者の方は、規制の背景や目的も含めてしっかりと確認するようにしてください。

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