林道の占用許可と林道工事等に関する承認の申請について

林道

林道は、山間部と森林とを結ぶアクセス道であり、森林の適切な管理や間伐等の森林整備を行うための基盤としても重要な役割を果たしています。林道もまた公共物であり、一般道路と同じように通行や使用には一定の制限が設けられています。本稿においては兵庫県営の林道を占用する際に必要となる手続きを下敷きとして、普段あまり馴染みのない林道にまつわる制度について解説していきたいと思います。

林道とは

林道とは、森林の整備・保全を目的として森林地帯に設けられる道路の総称ですが、一般的には林業の受益地に設けられる全幅員3.0m以上の自動車道をこう呼んでいます。また、国土交通省が所管する一般道路とは異なり、林道は林業を管轄する農林水産省(林野庁)が所管しています。

林道には、国が国有林内に開設する国有林林道と地方公共団体や森林組合等が民有林内に開設する民有林林道がありますが、本稿においては民有林林道である兵庫県営林道について記述していきたいと思います。

林道占用許可とは

林道は道路交通法の適用される道路であり、一般交通の用に供するものであるため、原則として独占的に使用(占用)することはできません。

一方で、公衆の利便となるものや、林業のため他に余地がなくやむを得ない事情がある場合等については、林道占用許可を受けることにより使用することができるようになります。

林道工事の施行承認

林道の維持管理を行う管理者は所管の県民局長とされていますが、管理者以外の者が行う林道の工事については、管理者から承認を受けることによりこれを行うことが可能になります。

林道の許可申請

林道占用許可申請書
林道占用許可申請書記載例

林道を占用しようとする者は、占用開始日の30日前までに、管理者に対し、林道占用許可申請書に損害賠償責任負担請書を添付して提出することにより申請を行います。

損害賠償責任負担請書
損害賠償責任負担請書記載例

林道敷の占用は、林道の保全上支障のないものであり、かつ、必要最小限度の範囲に限り許可を受けることができます。また管理者は、林道の構造の保全、原状回復及び通行の安全等について、必要な条件を付することができるものとされています。

管理者が占用許可をしたときは、申請者に対して林道占用許可書が交付されます。占用許可の期間は原則として3年以内とされていますが、電気、通信、ガス及び水道事業の施設については期間を5年以内に延長することができます。

なお、占用者が占用許可の有効期間満了後、引き続き許可を受けようとするときは、有効期間満了の日の30日前までに、林道占用許可申請書を管理者に提出する必要があります。

占用料

占用料は占用を許可した際に徴収されますが、占用の期間が1年以上の場合における翌年度以降の占用料は、その年度分がその年度の初めに徴収されることになります。なお、林道の占用に係る費用については、林道の占用の許可を受けた者がその全額を負担します。

占用料の免除

以下の占用物件に係る占用については、高い公益性が認められることから、その占用料の全額が免除されます。

  1. 林道の開設の際に現に存する施設
  2. 林業の用に供する施設
  3. 地方財政法に規定する公営企業の行う事業に係るもの
  4. 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設し、又は災害復旧工事を行う鉄道施設及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構が管理を行う鉄道施設並びに鉄道事業法による鉄道事業者又は索道事業者がその鉄道事業又は索道事業で一般の需要に応ずるものの用に供する施設
  5. 公職選挙法による選挙運動のために使用する立札、看板その他の物件
  6. 街灯(広告物を添加しないもの)、公共の用に供する通路及び駐車場法に規定する都市計画として決定された路外駐車場
  7. かんがい排水施設その他の農地の保全上又は利用上必要な施設
  8. 沿道の土地から道路に出入するための通路施設
  9. カーブ・ミラー、くずかご、灰皿、花壇、掲示板等で営利目的がなく交通安全、道路の美化及び公衆の利便に著しく寄与する物件
  10. その他占用料を徴収することが公益上適当でないと管理者が認めるもの

占用許可の表示

占用許可の表示
占用許可の表示

占用者は占用許可を受けた期間中、次の事項を記載した標柱(別図)を、標柱を表示することが困難な場合、又は不適当な場合を除き、当該占用に係る場所に表示する必要があります。

  • 占用の目的・期間・内容・許可指令番号
  • 占用者の住所・氏名
  • 法人にあってはその名称及び代表者の氏名

林道掘削許可申請

林道掘削許可申請書
林道掘削許可申請書

占用者は占用許可を受けた期間中において、占用物の維持管理のために必要な掘削を行おうとするときは、林道掘削許可申請書を提出する必要があります。

林道掘削許可書
林道掘削許可書

管理者が林道掘削許可をしたときは、当該許可申請した者に対して林道掘削許可書を交付します。

占用の廃止

林道占用廃止届
林道占用廃止届

占用者が林道敷の占用を廃止するときは、林道占用廃止届を管理者に対して提出し、占用している工作物、物件又は施設を除去して林道敷を原状に回復させる必要があります。

林道工事の施行承認申請

工事施行承認申請書
工事施行承認申請書

管理者以外の者で、県管理林道敷に係わる工事を行う者は、工事開始日の30日前までに、管理者に対し、工事施行承認申請書に損害賠償責任負担請書を添付して提出することにより申請を行います。

また、工事に伴い設置される物件を林道に帰属させる場合は、上記の書類と併せて帰属承諾書を添付する必要があります。

なお、林道の占用に付随する工事施行承認については、占用許可申請に工事の内容を含めて申請します。この場合、工事施行承認申請書を提出する必要はありませんが、工事に伴い設置される物件を林道に帰属させる場合は、帰属承諾書を添付する必要があります。

帰属承諾書
帰属承諾書

林道工事の施行承認は、林道敷の管理上又は通行上支障がない場合に限り行われますが、管理者は、林道の構造の保全、原状回復及び通行の安全等について、必要な条件を付することができるものとされています。

工事施行承認書
工事施工承認書

管理者が工事施行承認をしたときは、申請者に対して工事施行承認書を交付します。

承認の標示

工事施行標示板
工事施行標示板

施行者は、工事の期間中、工事施行標示板を工事施工する箇所に設置する必要があります。

工事の届出

工事届出書
工事届出書

施行者は、工事に着手しようとするときは工事着手届を、工事完了後は直ちに工事完了届を、それぞれ管理者に対して提出します。なお、林道の工事に係る費用は、林道の工事の承認を受けた者がその全額を負担します。

まとめ

公共物に関する許認可については行政官庁の裁量権が大きく、なおかつ林道占用許可申請が一般的にはあまり馴染みのない手続きであるため、基本的に申請の際には県民局での協議を重ねることになるように思います。

弊所でも林道に関する許可申請の取扱いはありますが、実際の現場が山林であることも多く移動手段も限られているため、役割分担という形でのサポートとなります。その点事前にご承知おきいただいた上でどうぞお気軽にお問い合わせください。

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