動物取扱責任者となる者の資格について
動物取扱責任者は独立した資格ではありませんが、第一種動物取扱業の登録申請においては、事業所ごとに、常勤職員から専属の動物取扱責任者を1名以上選任して配置することを登録の要件としています。
一方で、動物取扱業の根拠法である動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動物愛護法)は近年厳格化傾向にあり、動物取扱責任者の資格要件が引き上げられたことに伴って、登録申請そのものよりも、動物取扱責任者となる資格を有する者を選任することの方が難しくなっています。
そこで本稿では、これから動物取扱業をはじめようとされる方、あるいは新たに動物取扱責任者を選任しようとされる方に向けて、現行の法令上、動物取扱責任者に選任することができる者の資格要件について詳しく解説していきたいと思います。
目 次
動物取扱責任者
動物取扱責任者は、行政と事業所との窓口役となり、施設従業員などに対して動物取扱責任者研修において得た知識及び技術に関する指導を行ない、施設管理や動物の健康及び安全の保持その他動物の適正な取り扱いなど、動物取扱業の適正な運営が行なわれるよう監督する立場にあります。
第一種動物取扱業においては、事業所ごとに動物取扱責任者を1名以上配置することが義務付けられていますが、動物取扱責任者は、後述する重要事項等の説明をする職員との兼務が認められています。
また、動物取扱責任者は事業所ごとに専属かつ常勤であることが要件とされているため、他の事業所と兼務することはできません。
欠格要件
以下のいずれかに該当する者は、後述する資格要件を満たしていたとしても、適格性を欠く者として、動物取扱責任者に選任することはできません。
- 精神の機能の障害によりその業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 登録を取り消され、その処分のあった日から5年を経過しない者
- 第一種動物取扱業者の登録を受けた者で法人であるものが登録を取り消された場合において、その処分のあった日前30日以内にその第一種動物取扱業者の役員であった者でその処分のあった日から5年を経過しないもの
- 業務の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 動物愛護法、化製場等に関する法律、外国為替及び外国貿易法、狂犬病予防法、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律又は特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の一定の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 登録の取消しの処分に係る通知があった日から処分をする日又は処分をしないことの決定をする日までの間に解散又は廃止の届出をした者(解散又は第一種動物取扱業の廃止について相当の理由がある者を除く)で届出の日から5年を経過しないもの
- 上記の期間内に合併、解散又は第一種動物取扱業の廃止の届出をした法人(合併、解散又は第一種動物取扱業の廃止について相当の理由がある者を除く)の役員であった者であって、通知があった日前30日に当たる日からその法人の合併、解散又は廃止の日までの間にその地位にあったもので届出の日から5年を経過しないもの
資格要件
動物取扱責任者は、上記の欠格要件に該当しない者であって、以下のいずれかに該当する資格を有するものから選任します。獣医師及び愛玩動物看護師については資格者であることのみが要件とされていますが、3と4の資格については少々表現が複雑なため、特にしっかりと確認するようにしてください。
- 獣医師
- 愛玩動物看護師
- 営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る半年間以上の実務経験(常勤の職員として在職するものに限る)又は取り扱おうとする動物の種類ごとに実務経験と同等と認められる1年間以上の飼養に従事した経験があり、かつ、営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る知識及び技術について1年間以上教育する学校その他の教育機関を卒業していること(学校教育法による専門職大学であって、当該知識及び技術について1年以上教育するものの前期課程を修了していることを含む)
- 営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る半年間以上の実務経験(常勤の職員として在職するものに限る)又は取り扱おうとする動物の種類ごとに実務経験と同等と認められる1 年間以上の飼養に従事した経験があり、かつ、公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって、営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る知識及び技術を習得していることの証明を得ていること
半年以上の実務経験
獣医師又は愛玩動物看護師でない者については、半年以上の実務経験又は1年以上の飼養経験のうち、必ずどちらかの経験を有することが求められます。
このうち半年以上の実務経験とは、平成18年6月1日以降、第一種動物取扱業の登録をした事業所において、常勤の職員として6か月以上勤務して動物を取り扱った経験のことを指します。なお、動物取扱業の種別ごとに認められる実務経験については下表のとおりです。
営もうとする動物取扱業の種別 | 飼養施設の有無 | 認められる実務経験 |
---|---|---|
販売 | あり | 販売(飼養施設を有して営むものに限る)及び貸出し |
なし | 販売及び貸出し | |
保管 | あり | 販売・保管・訓練(いずれも飼養施設を有して営むものに限る)、貸出し、及び展示 |
なし | 販売、保管、貸出し、訓練及び展示 | |
貸出し | 販売(飼養施設を有して営むものに限る)及び貸出し | |
訓練 | あり | 訓練(飼養施設を有して営むものに限る) |
なし | 訓練 | |
展示 | 展示 | |
競りあっせん | 販売、競りあっせん | |
譲受飼養 | 販売・保管・訓練(いずれも飼養施設を有して営むものに限る)、貸出し、展示及び譲受飼養 |
1年以上の飼養経験
1年間以上の飼養に従事した経験は、雇用関係が発生しない形(ボランティア等)又は常勤でない雇用形態等において、動物取扱業と同等と認められる飼養に従事した経験を想定しており、単なるペットとしての飼養経験は実務経験と同等とは認められません。また、飼養経験は、取り扱おうとする動物の種類ごとに必要とされています。
飼養経験に基づいて登録申請する場合は、実務経験の内容に応じて、関係機関等に確認を取る必要があります。
所定の学校の卒業
学歴を資格要件とする場合は、営もうとする動物取扱業の種別に係る知識及び技術について1年間以上教育する学校法人その他の教育機関を卒業している必要があります。なお、この場合は、カリキュラムの確認など申請手続きに一定の時間を要します。
所定の資格等の取得
所定の資格等を動物取扱責任者の資格要件とする場合に認められる資格等は下表のとおりです。
愛玩動物飼養管理士 | 公益社団法人 日本愛玩動物協会 | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 |
家庭動物管理士 (旧・家庭動物販売士) | 一般社団法人 全国ペット協会 | 販売 | 保管 | 貸出し | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 | |
愛犬飼育管理士 | 一般社団法人 ジャパンケネルクラブ | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 |
公認訓練士 | 一般社団法人 ジャパンケネルクラブ | 保管 | 訓練 | 譲受飼養 | ||||
公益社団法人 日本警察犬協会 | 保管 | 訓練 | 譲受飼養 | |||||
Jaha認定家庭犬しつけインストラクター | 公益社団法人 日本動物病院協会 | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 |
Gct (Good Citizen Test) | 一般社団法人 優良家庭犬普及協会 | 保管 | 訓練 | 譲受飼養 | ||||
トリマー | 一般社団法人 全日本動物専門教育協会 | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 |
動物看護師 | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 | |
家庭犬訓練士 | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 | |
動物介在福祉士 | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 競り あっせん | 譲受飼養 |
動物看護師(3級) | 公益社団法人 日本動物病院協会 | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 |
愛護動物取扱管理士 | 一般社団法人 新潟県動物愛護協会 | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 |
ペットシッター士 (H21年4月1日以降の取得者に限る) | 特定非営利活動法人 日本ペットシッター協会 | 保管 | 訓練 | 譲受飼養 | ||||
認定ペットシッター | ペットシッタースクール | 保管 | 訓練 | 譲受飼養 | ||||
動物取扱士(3級) | 特定非営利活動法人 九州鳥獣保護協会 | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 |
小動物飼養販売管理士 | 協同組合ペット・サービスグループ | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 |
認定動物看護師 | 一般財団法人 動物看護師統一認定機構 | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 |
実験動物技術者 | 公益社団法人日本実験動物協会 | 販売 | 保管 | 貸出し | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 | |
乗馬指導者資格(初級) | 公益社団法人全国乗馬倶楽部振興協会 | 販売 | 保管 | 貸出し | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 | |
乗馬指導者資格(中級以上) | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 | |
公認馬術指導者資格(コーチ、指導者) | 財団法人日本スポーツ協会(旧 日本体育協会) | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 |
競技別指導者資格(馬術コーチ、馬術指導員、馬術上級コーチ) | 販売 | 保管 | 貸出し | 訓練 | 展示 | 競り あっせん | 譲受飼養 |
重要事項等の説明をする職員
重要事項等の説明をする職員とは、顧客に対して適正な動物の飼養及び保管の方法等に係る重要事項を説明し又は動物を取り扱う職員として配置されるものです。第一種動物取扱業者においては、事業所ごとに、動物取扱責任者とともに、重要事項等の説明をする職員を1名以上配置することが義務付けられています。(動物取扱責任者は重要事項等の説明をする職員との兼務が認められています。)
欠格事由については動物取扱責任者と同様ですが、資格要件については以下のいずれかに該当する必要があります。
- 獣医師
- 愛玩動物看護師
- 営もうとする第一種動物取扱業の種別ごとに上表に定める種別に係る半年間以上の実務経験を有すること
- 公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって、営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る知識及び技術を習得していることの証明を得ていること
- 営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る知識及び技術について1年間以上教育する学校その他の教育機関を卒業していること(学校教育法による専門職大学であって、当該知識及び技術について1年以上教育するものの前期課程を修了していることを含む)
動物取扱業登録申請サポート
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