産業廃棄物収集運搬業許可を複数の自治体で申請する際の注意点について
都道府県(又は政令市)をまたいで産業廃棄物(以下、産廃)を収集し運搬する場合には、関与する自治体ごとに申請を行い、産業廃棄物収集運搬業の許可を取得する必要があります。
申請が全国的に統一された様式や手順によるものであればともかく、自治体ごとに少しずつ基準や手続方法が異なる点がこの手続きのややこしいところです。
そこで本稿では、産業廃棄物収集運搬業許可申請における自治体ごとの違いを中心に、注意すべきポイントについて分かりやすく解説していきたいと思います。
許可の申請先
産業廃棄物収集運搬業許可は、排出場所(荷積み地)及び産業廃棄物処分場の所在場所(荷降ろし地)の都道府県知事(又は政令市長)に対して申請を行います。
したがって、荷積み地と荷降ろし地の管轄が異なる場合は、両方の自治体で申請の手続きを行うことになります。たとえば荷積み地が兵庫県尼崎市で、荷降ろし地が堺市の場合は、兵庫県知事と大阪府知事の両方の許可が必要となります。(※運搬中に通過するだけの自治体に対しては申請する必要はありません。)
★許可申請の例
荷積み地又は荷降ろし地が大阪府内にある場合 | 大阪府知事の許可 |
政令市においてのみ事業を行う場合 | 政令市長の許可 |
大阪府内の政令市以外の市町村においてのみ事業を行う場合 | 大阪府知事の許可 |
大阪府内の政令市と他の市町村にまたがって事業を行う場合 | 大阪府知事の許可 |
大阪府内の政令市と他府県の政令市にまたがって事業を行う場合 | 大阪府知事と他府県知事の許可 |
兵庫県知事と奈良県知事の許可を取得した事業者が大阪府を通過する場合 | 大阪府の許可は不要 |
許可基準の違い
同じ申請であっても、そもそも許可を下す権限を持つ主体が異なるため、おのずと許可基準にも違いが生じます。ある自治体で基準をクリアして許可を取得した申請と同じ内容で申請しても、別の自治体では基準を満たしていないものと判断されることはそれほど珍しくはありません。
特に財産的基礎要件(資金要件)についてこの傾向が顕著であり、近いところで体感的に言えば、H県やO府はやや基準がマイルドで、K府には手厳しい印象を持っています。(あくまでも主観です。)
手続方法の違い
たとえばS県では事前に申請書類を郵送することにより本申請前に担当者が確認を行う工程を必須としています。また、多くの自治体では「先行許可証」(申請以前に他の自治体から取得した許可証)の提出により添付書類を省略することができる制度を採用していますが、H県にこの制度はありません。
提出書類にも多少の違いがあるため、面倒ではありますが複数の自治体での申請を同時に行う際は、手続方法や提出書類について事前にしっかりと確認するようにしてください。
記載内容の違い
大まかには一緒ですが、申請書類の様式についても自治体ごとに違いがあります。このため、既に他の自治体で許可を取得した申請書類のデータを丸々転用することはできません。
また、記載すべき内容や表記方法にも各自治体ごとに特色があり、たとえば参廃品目の表記についても以下のような微妙な違いがあります。
兵庫県 | ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず |
大阪府 | ガラスくず |
京都府 | ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず |
滋賀県 | ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず |
恐ろしいことに、「・」と「、」を誤表記しただけでも容赦なく補正指示が飛んできます。「いや、それくらい分かるやんか。。」と言いたくはなりますが、産業廃棄物収集運搬業許可の申請には正確性が求められるので、ここは黙って従うようにしましょう。苦笑
標準処理期間の違い
標準処理期間とは、申請が提出先の行政庁に到達してから許可不許可の処分決定を行うまでに通常必要とされる標準的な期間のことです。この期間から補正に要する日数、土日祝の日数は除かれます。
許可基準や手続方法に違いがあるのである程度仕方ありませんが、この期間については自治体ごとに明らかな遅い早いがあることを感じずにはいられません。したがって申請前には「どのくらいで許可が下りるのか」についてもしっかりと確認を行ってから計画を進めるようにしましょう。
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