建設業の営業所に固定電話が必要な理由

固定電話(子機)

建設業許可を申請するにあたっては、営業所の写真を添付するように求められますが、そこで画像に収めるべきものが、「パソコン」「FAX」「固定電話」のいわゆる「事務什器3点セット」と呼ばれる物品です。

パソコン → 分かる。
FAX → う〜ん、何とか理解。
固定電話 → ふぁっ??

令和の感覚で言えば、「え、今さら固定電話?」と思われる方も決して少なくないように思います。少し自嘲気味ですが、私の世代でいうところのフロッピーディスクやVHSのビデオテープに抱く少々ノスタルジックな感覚です。

実際、新規でオープンする非フランチャイズの飲食店等では、固定電話ではなく携帯電話で対応している店舗がほとんどではないかと思います。

ですが、これらの事務什器を建設業の営業所に備え付けさせていることにも、実はしっかりとした理由が存在しています。

そこで本稿では、建設業の営業所に何故いまだに固定電話の設置が求められるのかについて、掘り下げて解説していきたいと思います。

建設業法上の営業所

建設業法及び建設業法施行令では、建設業の営業所を「本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所」と規定しています。ここでいう「常時建設工事の請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積、入札、契約締結などの実体的な行為を行う事務所を指します。

法令が直接的表現で営業所について触れているのはこれくらいで、実は細かくつっこんだ表現がなされているわけではありません。ただし、以下の条文からも読み取れるように、建設業において営業所の設置はマストとされています。

建設業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう)を設けて営業をしようとする場合にあっては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあっては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。

(建設業法第3条第1項)

条文にあるとおり、営業所をどこに設置するのか、単数なのか複数なのかによって許可の申請先は異なります。つまり、分岐点となるのは営業所の「場所」と「数」であり、もとより営業所については「ある」ことが前提となっているのがお分かりいただけるのではないかと思います。

営業所設置の目的

携帯電話やノートパソコンがあれば、いつでもどこでも仕事ができる時代ですから、「フリー」の建設業があっても良いのではないかとお考えの方もいらっしゃるのではないかと思います。

この点について、建設業法ではその目的を示した冒頭の条文において以下のように触れてその指針を明らかにしています。

この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

(建設業法第1条)

例えば憧れのマイホームを工務店に発注したものと想定してください。用意した総額はローン含めて5,000万円としましょう。一般的な感覚でいえば人生を賭けた大きな買い物です。着工前には「工事契約金」を、着工時にも「着工金」を支払います。さて、いよいよ着工です。ここでもし、工務店が音信不通になってしまったらどうでしょうか?

このような事態に陥らせないため、建設業法では許可制を採用し、その要件を定めて規制を行っているわけです。建設業者に対して営業所の設置を要求しているのも、この目的を達成するための「信用の担保」であるといえます。

固定電話はやはり必要?

営業所を設置する目的は大体お分かりいただけたと思いますが、だからといって何故固定電話の設置にこだわるのでしょうか?

実際、弊所においても固定電話の回線を引いてはいるものの、外回りの業務が多いことから、日常的な連絡手段としては携帯電話の方を多用しています。

実は建設業法にも、政令や規則を含めて「固定電話」に関する条文は一切存在せず、それどころか「電話番号」について触れている記述もありません。

  • 商号又は名称
  • 営業所の名称及び所在地
  • 法人である場合においては、その資本金額(出資総額を含む)及び役員等の氏名
  • 個人である場合においては、その者の氏名及び支配人があるときは、その者の氏名
  • その営業所ごとに置かれる専任技術者の氏名
  • 許可を受けようとする建設業
  • 他に営業を行つている場合においては、その営業の種類

上記が許可申請書に記載すべき事項として法定化された申告内容であり、見る限り「電話番号」は必要的記載事項ではないものと読み取ることができます。ところが、実際の申請の場においてこの部分を持ち出して電話番号の記載を拒否したとしても、窓口では以下のように対応されます。

「固定電話回線を引いてください^^」

新人の頃、この対応について食い下がって質問をしたことがありますが、返ってきた返答はこうでした。

「行政書士さんなら目的をお考えください^^」

大した問題ではないと考えていたところ、このようなありがたい「ご指導」を頂戴してしまったので、その後色々と考える機会となりました。苦笑

営業所に固定電話が必要な理由

結局のところ、固定電話の設置を求められているのは、営業所の所在を証明するという点にあります。このため、営業所と紐付いているIP電話であれば認められることがあります。(050からはじまる電話番号です。)

建設業法の目的を紐解いて考えれば、建設業者そのものの信用を担保させるために営業所の設置を求め、営業所を設置している事実を証明するために固定電話の番号を申告させているというのが行政手続上の要請であるといったところでしょう。

なお、営業所内において求められる什器については、都道府県ごと、管轄ごとに違いがあります。固定電話については各所で必ず求められるためマストだと思われますが、他に何が必要になるのかについては申請先に問い合わせるようにしましょう。

建設業許可は、経験年数など、他にハードルの高い要件が求められる手続きですから、これらと比べると些細なことと感じて、つい甘く見積もっていると、審査が進まずいつまで経っても許可が下されないこともありますので、この点は十分にご留意ください。

建設業許可の取得をお考えなら

弊所では、兵庫県・大阪府・京都府の全域にわたり建設業許可申請のサポートをさせていただいております。「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応には自信を持っています。

近年は扱いやすい見積もりサイトが参入していますが、弊所ではこれらとの相見積りにも応じているほか、前提となる要件確認についても無料相談の範囲内で対応しています。建設業許可申請でお困りの際は、ぜひ弊所までお気軽にご相談ください。

建設業許可申請手続についてお悩みの方はお気軽にご相談ください♬

尼崎市、西宮市、芦屋市、神戸市、伊丹市、宝塚市、川西市、大阪市、豊中市を中心に兵庫大阪の全域に対応可能です。

平日9時〜18時、📩は24時間365日対応!

06-6415-9020
または 090-1911-1497

メールでのお問い合わせはこちら。

お問い合わせフォーム

事務所の最新情報をお届けします