確定申告書以外で経営業務の管理経験を証明する方法│建設業許可取得に関する応用知識

確定申告書とボールペン

建設業の許可業者は、営業所ごとに経営業務を管理する責任者(以下、経管)を選任して配置する必要がありますが、この経管になるための要件が思いのほか厳しく、具体的には以下のとおり一定の業務に就いた経験年数を有することが求められています。

  1. 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
  2. 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者
  3. 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者

このうち王道のルートはやはり1の要件を満たすパターンであり、経営経験を証明する5年分以上の確定申告書と、工事経歴を証明する請求書等を提出することによって申請を行うケースがほとんどです。

ところが実際に許可申請を行う際は、経営管理経験を有しているのにもかかわらず、控えを失うなどして、確定申告書を5年分以上準備することができないケースが散見されます。

そこで本稿では、このような場合どのようにして経営管理経験を証明すればいいのかについて解説していきたいと思います。

所得証明書

市区町村が発行する「所得証明書」を確定申告書に代えて確認資料とすることが認められています。1、2年のみ確定申告書が不足するようなケースでは代わりにこちらを提出することが多いです。

所得証明書は、申請書に必要事項を記入し、本人(申請者)確認ができるものを窓口に提示することにより、又は申請書と本人確認資料のコピーを郵送することにより申請し取得します。

ただし、この所得証明書は今年度を含めて5年分までしか取得することができません。また、「課税証明書」とは異なる書類なので間違わないようにご注意ください。

確定申告に関する開示請求

所得証明書以外にも、過去の確定申告に関する開示請求を行うことにより確定申告書の控え自体を再発行してもらう方法があります。

この方法では、確定申告書を提出した税務署に対して「保有個人情報開示請求書」を提出又は郵送することにより申請し、開示可能の通知が届いた後「保有個人情報の開示の実施方法等申出書」に必要事項を記載して提出し、申告書の控えを受け取ります。

ただし、確定申告に関する開示請求に関しては直近7年分までしか請求することができないという点についてはご注意ください。

確定申告書に代わるもの

確定申告書や所得証明書を揃えることができなくても、まだ道は残されています。たとえば兵庫県においては、以下の書類によって管理経験を証明する方法があります。(※)管轄によってその取扱いには違いがあることにご留意ください。

  • 商業登記簿
  • 役員欄の閉鎖抄本等
  • 社会保険事務所の発行する被保険者記録照会回答票
  • 許可通知書、許可申請書の副本等(過去に許可を受けていた場合や経管に選任されていた場合)

これらの書類は単独で判断材料となるわけではなく、組み合わせ、照らし合わせながら総合的に判断するための材料になります。

なお、実際に建設業を請け負っていたことを証明するために、工事契約書、注文書、見積書、請求書、元帳等といった書類を別に添付することが必要になります。

まとめ

弊所へのお問い合わせ内容は、何も定型的な事例ばかりではありません。建設業の許可申請においては、申請者側がイレギュラーな事情を抱えていることも珍しいケースではありません。

本稿で紹介させていただいたように、本来求められている書類が揃わないからと言ってすぐに申請を諦める必要はなく、実態を包み隠さずご教示いただいた上で相談いただけるのであれば、許可を取得することができる案や、適切な代替案を提示することができるかもしれません。いずれにせよ建設業許可に関してお困りの際は、まずは弊所までお気軽にご相談ください。

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