遺品から日本刀。こんな時はどうすればいいの?銃砲刀剣類登録について
大切なご家族が亡くなった後に遺品を整理していると、処分に困ってしまうような物が出てきてしまったなんてことはよく耳にする話しです。まぁ若気の至り的なものが出てきたとしてもそこは故人のアイデンティティのひとつですので、どうぞご容赦してあげてください。
あれ?倉庫から刀出てきちゃったよ!
古くからの家や収集家の故人であれば稀にこういったケースもありえます。値打ちも分からない。処分方法も分からない。そもそもこのまま保管していてもいいのかも分からない。確かに困っちゃいますよね?
そこで本稿では、故人の遺品整理中に銃や刀を発見してしまったときの対処方法について詳しくご案内したいと思います。
目 次
銃刀法について
日本国内では銃や刀を自由に所持することができないのは皆さまもよくご存じのはずです。そしてこの日本国内における銃や刀の取扱いを規制する法律こそが銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)です。割とメジャーな法律ですが、詳細については下の埋め込み記事でご確認いただけると幸いです。
銃刀法と銃砲刀剣類等所持許可について
銃砲刀剣類等所持許可│猟銃や刀剣を所持するために必要な手続きとは│銃刀法を正しく知る
銃砲刀剣類
銃砲と刀剣類についてはそれぞれ銃刀法において定義されていますが、やはり本稿では割愛いたします。ざっくりと説明すると、銃や刀、やり、なぎなた、剣、あいくち、45度以上に自動的に開刃する飛出しナイフなどが該当します。とりあえずパッと見てこれらに該当するような代物であれば、次項以降に記載した手続きに進む方が無難です。
銃砲刀剣類を発見したら
①登録証・許可証の確認
まずは「銃砲刀剣類登録証」や「銃砲刀剣類所持許可証」がないかを確認しましょう。収納袋に縫い付けていたりケースの奥に入り込んでいたりすることがあるほか、刀剣の一部分に貼り付けていたりする場合もあります。なお、これらは美術品や骨董品としての価値を鑑定した「鑑定書」とはまったくの別物です。ただし、登録証の番号と教育委員会名が記載されている場合があるため、これにより登録を受けた刀剣であることを確認できる手がかりとはなります。
登録証がある場合は、所有者変更届を提出することになります。もし登録証を発見することができなかった場合は、次の②の手続きに進んでください。許可証のみ発見することができた場合でも同様です。
②発見の届出
登録証が見当たらない場合は、速やかに発見地を管轄する警察署に現品を持参し銃砲刀剣類発見届出書を提出します。届出が受理されると、銃砲刀剣類発見届出済証明書が交付されるので、審査を受けるまでは現品と共に保管しましょう。この手続きについて注意すべき点は以下のとおりです。
現品は発見の状態のまま保管する
軽微な清掃程度なら問題はありませんが、研ぎに出したりむやみやたらに触れて形状を変えるようなことをしてはいけません。
現品持参の際はあらかじめ警察署に連絡しておくこと
例えば現品運搬中に警察官に事情聴取をされた場合、警察署が事情を知っていればスムーズに話しは進みますが、誰も事情を知らなければ不法所持を疑われるかもしれません。また、せっかく訪庁しても担当官が駐在しているとは限りません。
譲渡等は認められない
この時点では審査を受けるまでのいわば仮所持が認められた状態にすぎません。譲渡はもちろんのこと、他者による修理・研究・試験・研ぎ等は絶対に行わないでください。譲渡人と譲受人の双方が銃刀法違反として処罰される可能性があります。
届出をしないまま所持していると不法所持罪となる
所持を希望しない場合は、その旨を申し出て「任意提出」の手続きをし、処分してもらいましょう。
③銃砲刀剣類登録申請
発見者の住所を管轄する教育委員会に対して申請を行います。申請書提出時には審査手数料(6,300円)が必要となります。
④登録審査会による審査
案内された日時に刀剣類発見届出済証と現品を持参し、審査会で審査を受けます。委任状を持参することで代理人の参加も可能となります。正当な理由なく審査を受けないと、銃刀法違反で処罰されることがありますのでご注意ください。
⑤銃砲刀剣類登録証の交付
審査の結果、基準をクリアしていれば銃砲刀剣類登録証が交付されます。登録ができなかった場合は、すみやかに発見届を提出した警察署に相談し、所持の許可申請に切り替えるか任意提出により放棄するかを選択します。なお、交付された登録証は、現品に変更を加えない限り有効であり、更新は必要ありません。
登録後の手続き
下の表に記載した目的に応じ、登録証の写しを添付して届出を行います。届出は登録の事務を行った教育委員会に対して行いますが、文化財保護委員会が発行した登録証である場合は例外として所有者の住所地を管轄する教育委員会に届け出ることになります。なお、現品確認審査が必要な手続で、登録の事務を行った教育委員会が遠地の場合は、あらかじめ申し出ることにより、審査のみ所有者の住所地の教育委員会で受けることができます。
原因 | 詳細 |
---|---|
所有者変更 | 譲渡・相続により所有者が変更となった場合は新所有者が取得後20日以内に届出書を持参又は送付する |
住所変更 | 所有者の住所が変わった場合は速やかに届出書を持参又は送付する |
貸付・保管の委託 | 事実が発生してから20日以内に届出書を持参又は送付する 試験・研究・研磨・修理・公衆の閲覧のための場合は届出不要 |
登録証の亡失、盗難、滅失 | 速やかに届け出ることで現物確認審査後に再交付される 紛失・盗難の場合は警察署へも届出をする |
現物の亡失、盗難、滅失 | 速やかに登録証を返納する 紛失・盗難の場合は更に警察署へ事故届を提出する |
改造 | あらかじめ相談し必要な手続をする 一般的には旧登録を廃止して新規の登録となることが多い |
輸出 | 輸出後速やかに登録証を返納する |
放棄 | 登録証と共に警察署に任意提出の手続をする 登録証は警察署から教育委員会に返納される |
保管・運搬・譲渡
銃砲刀剣類は登録証と共に保管します。また、正当な理由がある場合を除いては、銃砲刀剣類を携帯又は運搬することはできません。正当な理由がある場合でも登録証と共に行う必要があります。なお、登録証と共にでなければ譲渡・譲受はすることはできず、登録証のみを譲渡・譲受することもできません。
まとめ
これまで説明したように、銃や刀については想像以上に厳重な取扱が求められています。遺品整理中に発見しても安易に持ち出したり展示することは許されていません。変に隠匿したりせず、速やかに警察署に相談することが重要です。弊所においても秘密厳守のうえ相談や手続きの代行を承っておりますので、どうぞご遠慮なくご活用ください。