路上ライブと道路使用許可│許可が必要となるケースと取得の実情

ストリートミュージシャン

駅前の広場や繁華街の歩道でギターを弾きながら歌う路上ライブは、多くの人に自分の音楽を聴いてもらえる貴重な機会であり、プロを目指すアーティストの登竜門として、あるいは趣味の発表の場として、昔から親しまれてきました。しかし、実施する場所が道路である以上、道路交通法に基づく道路使用許可の要否を避けて通ることはできず、何の確認もせずに演奏を始めてしまうと、警察官から中止を求められたり、場合によっては刑事罰の対象となったりするおそれもあります。

路上ライブが問題となるのは、演奏そのものというよりも、演奏によって道路上に人が集まり、歩行者の通行が妨げられることにあります。演奏に足を止めた聴衆が歩道をふさぎ、その後ろを歩く人が車道にはみ出して通行するような状況が生じれば、交通の安全と円滑が損なわれることになるため、道路交通法では、道路に人を集めて一般交通に著しい影響を及ぼすような行為を、警察署長の許可を要する行為として位置づけています。

一方で、実際に路上ライブについて道路使用許可を申請しても、個人による演奏の場合には許可を受けることが難しいのが実情であり、警察署の窓口で相談しても、許可は出せないと案内されることも少なくありません。そのため、路上ライブを行いたいと考える場合には、道路使用許可の仕組みを理解したうえで、許可を受けやすいケースとそうでないケースを見極め、場合によっては道路以外の場所での実施や公認制度の活用といった別の選択肢も含めて検討することが大切です。

そこで本稿では、路上ライブと道路使用許可について、根拠となる条文や許可が必要となるケースと不要となるケース、許可取得の実情と申請の方法、無許可で実施した場合のリスク、あわせて確認しておきたい他の法令や代わりの選択肢までを、実務の視点から順を追って整理していきたいと思います。

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路上ライブと道路使用許可の関係

道路交通法第77条第1項は、道路を通行以外の目的で使用する行為のうち、交通の安全と円滑に影響を及ぼすものについて、所轄の警察署長の許可を受けることを求めています。同項は、道路での工事や作業を1号、広告板やアーチなどの工作物の設置を2号、露店や屋台の出店を3号として定め、これらに当たらない行為のうち一般交通に著しい影響を及ぼすものを4号で定めるという構造になっており、路上ライブは、このうち4号の対象として問題となる行為です。

4号の特徴は、許可の対象となる具体的な行為を法律自体が列挙しているのではなく、各都道府県の公安委員会が、その土地の道路や交通の状況に応じて規則で定める仕組みになっている点にあります。実際の規定は「道路交通規則」や「道路交通法施行細則」といった名称で都道府県ごとに置かれており、たとえば大阪府道路交通規則第15条では、道路において演説や演芸、奏楽、放送などをして人を寄せる行為が、許可を要する行為の一つとして定められています。

区分許可が必要な行為主な例路上ライブとの関係
1号道路において工事または作業をする行為道路工事、資材の搬出入該当しない
2号道路に広告板、アーチ等の工作物を設ける行為広告板、アーチ、記念碑演奏のみであれば該当しない
3号場所を移動しないで、道路に露店、屋台等を出す行為露店、屋台、商品陳列CDやグッズを並べて販売する場合は別途検討
4号一般交通に著しい影響を及ぼす行為で公安委員会が定めたもの祭礼、パレード、ロケ、演奏等による人寄せ該当し得る(本記事の対象)

路上ライブは、演奏によって通行人の足を止め、道路上に人を集める行為そのものであるため、実施する都道府県の規則に演奏や人寄せに関する定めがあれば、許可の対象となり得ることになります。また、演奏とあわせてCDやグッズを道路上に並べて販売する場合には、露店の出店として3号の許可が問題となる可能性もあるため、演奏の内容だけでなく、その場で行う行為の全体を踏まえて許可の要否を検討する必要があります。

なお、ここでいう「道路」には、国道や都道府県道、市町村道といった道路法上の道路だけでなく、不特定多数の人や車両が自由に通行できる私道や広場、駅前の広場なども含まれる点に注意が必要です。駅前のペデストリアンデッキや商業施設に面した公開空地なども、一般の通行に供されていれば道路交通法上の道路と評価される可能性があるため、「車道ではないから」「広場だから」といった感覚的な判断で許可は不要と決めつけず、まずは実施予定地の性質を確認するところから検討を始めましょう。

許可が必要となるケース

許可が必要となる典型は、駅前や繁華街の歩道など人通りの多い場所で、アンプやスピーカーを使って一定時間にわたり演奏を行う場合です。演奏者が同じ場所にとどまること自体が歩行者の動線を狭めるうえ、演奏に足を止めた聴衆が人だかりをつくることで、歩道全体の流れが滞りやすくなり、場合によっては歩行者が車道にはみ出して通行する危険な状況も生じるため、一般交通に著しい影響を及ぼすおそれがあるものとして、許可の対象となる方向に大きく傾きます。

演奏に伴って機材を道路上に置く場合や、SNSで事前に告知して多くの人が集まることが見込まれる場合も、同様に許可が必要となる可能性が高くなります。アンプやマイクスタンド、譜面台、投げ銭用のケースなどを並べればその分だけ通行できる幅が狭くなりますし、事前告知によってファンが集まれば、演奏者が一人であっても数十人から数百人規模の人だかりが生じることも考えられるため、演奏者の人数ではなく、集まる人の数を基準に交通への影響を見積もることが大切です。

許可が不要となるケース

これに対して、商業施設の敷地内やライブハウスの前の私有地、イベント会場の内部など、道路交通法上の道路に当たらない場所で演奏を行う場合には、道路使用許可は必要ありません。この場合に必要となるのは、土地や施設の所有者、管理者から演奏について承諾を得ることであり、施設ごとに定められたルールに従うことになりますが、聴衆が敷地の外の歩道にまで広がるような場合には、道路上に人が集まる状態を生じさせることになるため、演奏の位置や音量を工夫して聴衆が敷地内に収まるよう配慮しておく必要があります。

また、人通りがほとんどない場所で、機材を使わずに小さな音量で短時間演奏する程度であれば、一般交通に著しい影響を及ぼすおそれがないとして、許可を要しないと解される余地もあります。ただし、許可の要否は場所や時間帯、音量、集まる人の数などを総合して判断されるものであり、演奏を始めた時点では問題がなくても、聴衆が増えたことで許可が必要な状態に変わることもあるため、判断に迷う場合には、実施場所を管轄する警察署の交通課に事前に相談しておくことをおすすめします。

許可取得の実情と申請の方法

道路使用許可の基準を定める道路交通法第77条第2項は、現に交通の妨害となるおそれがないと認められる場合、許可に付された条件に従うことで交通の妨害となるおそれがなくなると認められる場合、あるいは交通の妨害となるおそれはあるものの公益上または社会の慣習上やむを得ないと認められる場合に、警察署長が許可を与えることとしています。路上ライブは、その性質上、人を集めることを目的とした行為であるため、交通の妨害となるおそれがないとはいいにくく、公益上やむを得ないといえるかどうかが審査の焦点となりがちです。

個人のアーティストが自分の音楽活動の一環として行う路上ライブの場合、公益性を認めてもらうことは容易ではなく、実際には多くの警察署で許可を受けることが難しいのが実情です。これに対して、商店街や自治体が主催する地域のイベントの一環として演奏を行う場合や、地域の祭礼に合わせた催しとして実施する場合など、地域の活性化や文化振興といった公益的な目的が認められるケースでは、主催者が申請者となって許可を受けられることもあるため、個人で申請するよりも、こうした催しに出演する形を模索するほうが現実的といえます。

申請を行う場合の申請先は、演奏を行う場所を管轄する警察署長であり、窓口は警察署の交通課となります。提出書類の中心となるのは道路使用許可申請書で、窓口で申請する場合は同じものを2通作成し、このほか実施場所周辺の見取図や、演奏者と機材、聴衆が集まる範囲、誘導員の配置などを記載した図面を添付するのが一般的であり、主催者の企画書や周辺の店舗、施設管理者の承諾書などの提出を求められることもあります。

  • 道路使用許可申請書(2通)
  • 道路使用の場所の付近の見取図
  • 演奏位置・機材・聴衆の範囲・誘導員の配置等を記載した図面
  • その他公安委員会が必要と認めて定めた書類

申請手数料は都道府県ごとに定められており、おおむね2,000円台で設定されていることが多いほか、審査には書類に不備がなければ数日から1週間程度かかるのが目安です。許可を受けた場合には、実施の日時と場所の厳守、音量の制限、歩行者の通行幅の確保、現場責任者の常駐といった条件が付されるのが通常であり、条件は許可証に記載されるため、演奏者やスタッフの全員に周知したうえで、当日は許可証を携帯して演奏に臨むようにしましょう。

無許可で実施した場合のリスク

許可が必要な態様であるにもかかわらず無許可で路上ライブを行った場合には、道路交通法第119条により、3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金に処せられる可能性があります。実際の現場では、まず警察官から演奏の中止や移動を求める指導を受けることが多いと考えられますが、指導に従わずに演奏を続けたり、同じ場所で無許可の演奏を繰り返したりすれば、検挙に至る危険性は当然に高まります。

また、路上ライブで問題となるのは道路交通法だけではありません。軽犯罪法第1条第14号は、公務員の制止を聞かずに、人声や楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者を処罰の対象としており、警察官から音量を下げるよう求められたにもかかわらず大音量での演奏を続ければ、この規定に抵触するおそれもあります。さらに、都道府県によっては拡声機の使用を規制する条例を設けている例もあるため、アンプやスピーカーを使用する場合には特に注意が必要です。

路上ライブは周辺の店舗や住民にとっても影響が大きく、苦情が寄せられたことをきっかけに警察官が駆けつけるというケースも少なくありません。いったん苦情が重なると、その場所での演奏そのものが難しくなるだけでなく、同じ場所で演奏しているほかのアーティストにまで影響が及ぶこともあるため、自分の活動の場を守るという意味でも、周辺への配慮と法令の遵守を心がけることが大切です。

近年はSNSで演奏の様子が拡散されることも多く、無許可の演奏をめぐって警察官とトラブルになった場面が動画で広まれば、アーティストとしての評判に傷がつくおそれもあります。音楽活動を長く続けていくためには、目先の演奏の機会を優先するのではなく、許可の要否を事前に確認し、許可が受けられない場合には別の場所や方法を探すという姿勢で臨むことが、結果として自分の活動を守ることにつながります。

その他の手続きと代わりの選択肢

他人が作詞や作曲をした楽曲を演奏する場合には、著作権法上の取扱いにも目を向ける必要があります。著作権法第38条第1項は、営利を目的とせず、聴衆から料金を受けず、演奏者に報酬が支払われない場合には、著作権者の許諾を得ずに公に演奏できると定めていますが、投げ銭を受け取ったりCDを販売したりする場合には、これらの要件を満たさないと判断される可能性もあるため、カバー曲を演奏する場合には、JASRACなどの著作権管理団体への手続きが必要となるかどうかを確認しておくと安心です。

公園で演奏を行う場合には、道路使用許可ではなく、都市公園法や各自治体の公園条例に基づく公園管理者の許可が問題となります。公園内での演奏や物品の販売は、条例によって許可制とされていたり、そもそも禁止されていたりすることが多いため、公園を管理する自治体の担当部署や公園管理事務所に、演奏が認められるかどうか、どのような手続きが必要になるかを事前に確認しておきましょう。駅の構内や駅前の広場についても、鉄道事業者や管理者が独自のルールを定めていることが多いため、同様に管理者への確認が欠かせません。

道路使用許可を受けることが難しい個人のアーティストにとって有力な選択肢となるのが、自治体や商業施設などが設けている公認のパフォーマー制度です。代表的なものとしては、東京都が審査を通過したアーティストに都の施設などでの活動の場を提供するヘブンアーティストの制度が知られており、ほかにも商業施設や商店街がストリートライブの場を定期的に提供している例もあるため、活動したい地域にこうした制度や企画がないかを調べてみる価値は十分にあります。

このほか、ライブハウスやカフェでの演奏、商業施設のイベントスペースの利用、地域の祭りやイベントへの出演など、法令上の問題を生じさせずに多くの人に演奏を聴いてもらえる場は少なくありません。路上ライブにこだわる場合であっても、まずはこうした場で実績を積み、商店街や地域の団体とのつながりをつくっておくことで、公益性のある催しの一環として道路での演奏を実現できる道が開けることもあります。

道路使用許可申請サポート

ここまで見てきたように、路上ライブに関する道路使用許可は、個人の演奏について許可を受けることが難しい一方で、商店街や自治体、イベントの主催者が地域の催しとして演奏の場を設ける場合には、許可を受けられる可能性が十分にあります。こうした催しを企画する場合には、演奏だけでなく、露店の出店や看板の設置、交通規制など複数の手続きが関係してくることも多く、どの窓口にどのような申請が必要になるのかを整理するだけでも相当な手間がかかります。

催しの主催者となる商店街の組合や地域の団体、イベント会社の方にとって、本来であれば企画の準備や出演者との調整に充てるべき時間を不慣れな行政手続きに費やすことは、決して効率のよいことではありません。書類の不備によって補正を求められれば許可の取得が遅れ、開催日程そのものを見直さざるを得なくなるおそれもあるため、手続きは専門家に任せて、催しの中身づくりに集中するという選択肢も検討する価値があります。

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