路上デモ行進と道路使用許可│デモ行進に必要な手続きと公安条例との関係

猫のデモ行進

デモ行進は、政治や社会のさまざまな問題について、市民が自らの意見を広く社会に訴えるための重要な手段であり、日本国憲法第21条が保障する集会の自由や表現の自由の一つの形として位置づけられています。主義主張の内容を問わず、多くの人が声を上げて道路を行進する姿は、民主主義社会において欠かせない光景といえますが、実施する場所が道路である以上、交通の安全と円滑との調整が必要となり、法令に基づく一定の手続きを経ることが求められます。

デモ行進では、数十人から数千人規模の参加者が隊列を組んで道路を進むことになるため、歩行者や車両の通行に大きな影響を与えることは避けられません。そのため、道路交通法は、デモ行進のように一般交通に著しい影響を及ぼす道路の使い方について、警察署長の許可を受ける仕組みを設けており、さらに地域によっては、いわゆる公安条例によって、公安委員会の許可や事前の届出が別途求められることもあります。

これらの手続きは、デモ行進そのものを規制することを目的とするものではなく、表現の自由を尊重しつつ、参加者や周辺の歩行者、車両の安全を確保するために、進路や時間、隊列の形などについて事前に調整を行うためのものです。手続きの仕組みを正しく理解し、余裕をもって準備を進めておけば、当日の行進を安全かつ円滑に実施することができる一方で、手続きを怠れば、行進の途中で警察官から中止を求められるなど、せっかくの訴えの場が台無しになってしまうおそれもあります。

そこで本稿では、路上デモと道路使用許可について、根拠となる条文や公安条例との関係、申請先や必要書類、申請の期限や許可に付される条件、無許可で実施した場合のリスク、あわせて確認しておきたい他の法令までを、実務の視点から順を追って整理していきたいと思います。

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デモ行進と道路使用許可の関係

道路交通法第77条第1項は、道路を通行以外の目的で使用する行為のうち、交通の安全と円滑に影響を及ぼすものについて、所轄の警察署長の許可を受けることを求めています。同項は、道路での工事や作業を1号、広告板やアーチなどの工作物の設置を2号、露店や屋台の出店を3号として定め、これらに当たらない行為のうち一般交通に著しい影響を及ぼすものを4号で定めるという構造になっており、デモ行進は、このうち4号の対象として問題となる行為です。

4号は、許可の対象となる具体的な行為を法律自体が列挙しているのではなく、各都道府県の公安委員会が、その土地の道路や交通の状況に応じて規則で定める仕組みとなっています。実際の規定は「道路交通規則」や「道路交通法施行細則」といった名称で都道府県ごとに置かれており、多くの都道府県で、道路において集団で行進する行為や、旗やプラカードを掲げて集団で示威運動を行う行為などが、許可を要する行為として定められています。

区分許可が必要な行為主な例デモとの関係
1号道路において工事または作業をする行為道路工事、資材の搬出入該当しない
2号道路に広告板、アーチ等の工作物を設ける行為広告板、アーチ、記念碑演台や看板を設置する場合は別途検討
3号場所を移動しないで、道路に露店、屋台等を出す行為露店、屋台、商品陳列物品の販売を伴う場合は別途検討
4号一般交通に著しい影響を及ぼす行為で公安委員会が定めたもの祭礼、パレード、集団行進、演説による人寄せ該当する(本記事の対象)

デモ行進の形態にはさまざまなものがあり、隊列を組んで道路を進む行進型のもののほか、駅前や広場などの一定の場所にとどまって演説やシュプレヒコールを行う集会型のもの、プラカードを持って歩道に並ぶスタンディングと呼ばれる形態などもあります。

いずれの形態であっても、道路上に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすおそれがあれば4号の対象となり得るため、行進を伴わないから許可は不要と判断することは避け、実施の規模や場所に応じて許可の要否を検討することが大切です。

なお、ここでいう「道路」には、国道や都道府県道、市町村道といった道路法上の道路だけでなく、不特定多数の人や車両が自由に通行できる私道や駅前の広場なども含まれる点に注意が必要です。

また、道路使用許可の基準を定める道路交通法第77条第2項は、交通の妨害となるおそれがない場合や、条件に従うことでそのおそれがなくなる場合、公益上または社会の慣習上やむを得ないと認められる場合には、警察署長が許可を与えることとしているため、表現活動としてのデモ行進については、適切な条件を付したうえで許可が与えられるのが通常の運用となっています。

公安条例との関係

デモ行進に関する手続きを考えるうえで欠かせないのが、いわゆる公安条例の存在です。公安条例とは、集会や集団行進、集団示威運動について、地方公共団体が独自に定めた条例の総称であり、東京都の「集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例」のように、都道府県や市が制定しているもので、公共の安全を確保する観点から、デモ行進の実施について公安委員会の許可や事前の届出を求める内容となっています。

公安条例は、すべての地方公共団体に置かれているわけではなく、条例の有無や内容は地域によって大きく異なります。許可制を採用している地域もあれば、届出制を採用している地域もあり、条例そのものが置かれていない地域もあるため、デモ行進を計画する際には、実施する地域にどのような公安条例があるのか、あるとすれば許可制なのか届出制なのか、申請や届出の期限はいつまでなのかを、早い段階で確認しておくことが大切です。

公安条例と道路交通法との関係については、徳島市公安条例事件の最高裁判決(昭和50年9月10日)が重要な先例となっています。この判決は、道路交通法による規制と公安条例による規制は、交通の安全と地方公共の安寧という異なる目的をもつものであり、両者が併存することは許されると判断しており、その結果として、地域によっては、道路交通法に基づく道路使用許可と公安条例に基づく許可や届出の両方が必要となることになります。

もっとも、両方の手続きが必要となる地域であっても、申請者が二つの窓口に別々に足を運ぶ必要があるとは限らず、警察署の窓口で両方の申請書を同時に受け付けたうえで、警察内部で必要な調整を行うという運用が採られていることも多くあります。どのような形で手続きを進めればよいかは地域によって異なるため、実施場所を管轄する警察署の警備課や交通課に事前に相談し、必要な手続きの全体像を確認したうえで準備を進めることをおすすめします。

申請先と必要書類

申請先は、デモ行進を実施する場所を管轄する警察署長であり、行進の経路が二つ以上の警察署の管轄にまたがる場合には、主たる場所を管轄する警察署長に対してまとめて申請するのが基本です。デモ行進の場合には、一般に出発地点が主たる場所として扱われることが多く、出発地点を管轄する警察署に申請すれば、経路上の他の警察署との調整は警察内部で行われることになります提出書類の中心となるのは道路使用許可申請書であり、窓口で申請する場合は同じものを2通作成するのが基本です。

申請書には、主催者の住所や氏名、名称のほか、道路使用の目的、場所または経路、日時、方法または形態、現場責任者の氏名や連絡先などを記載することになり、デモ行進の場合には、方法欄に予定参加人数や隊列の形、旗やプラカード、拡声器、車両の使用の有無などを具体的に記載しておくと、審査する側が当日の様子を思い描きやすくなります。

  • 道路使用許可申請書(2通)
  • 行進経路図(出発地、経由地、解散地を明示したもの)
  • 隊列の編成図
  • その他公安委員会が必要と認めて定めた書類

経路図には、出発地から解散地までの経路を地図上に明示し、主要な交差点や横断歩道、行進の途中で休憩や集会を行う場所などを記載していきます。隊列の編成図には、隊列の幅や列数、先頭と最後尾の位置、旗やプラカードを持つ参加者の配置、誘導や整理にあたるスタッフの配置などを示しておくと、交通への影響や安全対策について審査が円滑に進みやすくなり、警察との事前協議の際にも具体的な調整がしやすくなります。

このほか、公安条例に基づく許可申請書や届出書、主催団体の規約や連絡先が分かる資料、集会を行う公園や広場の使用許可書の写しなどの提出を求められることもあります。必要な書類の範囲は地域や実施の規模によって異なるため、事前相談の段階で何を用意すればよいかを確認しておくと、書類の準備にかかる手戻りを防ぐことができます。

申請の期限と許可の条件

デモ行進の手続きで特に注意したいのが、申請や届出の期限です。公安条例の中には、実施の72時間前までに申請することを求めているものなど、具体的な期限を定めている例があり、期限を過ぎてしまうと予定していた日時に行進を実施できなくなるおそれもあるため、実施日が決まった段階で速やかに警察署へ相談し、期限に余裕をもって申請を済ませることが大切です。

道路使用許可の審査そのものは、書類に不備がなければ数日程度で終わることが多いものの、デモ行進の場合には、経路や隊列、時間帯などについて警察との協議が行われることが多く、その調整に時間を要することもあります。特に、交通量の多い幹線道路を行進する場合や、参加者が数千人規模に及ぶ場合、休日の繁華街を経路に含む場合などには、協議に時間がかかる傾向にあるため、実施日の2週間から1か月前を目安に相談を始めておくと安心です。

道路使用許可には、道路における危険を防止し交通の安全と円滑を図るために必要な条件が付されるのが通常です。デモ行進の場合には、許可された経路と時間の厳守、隊列の幅や列数の制限、行進の速度、信号や交通整理への従い方、拡声器の音量、蛇行進やジグザグ行進の禁止、解散地での速やかな解散といった内容が求められることが多く、これらの条件は許可証に記載されるため、主催者は参加者やスタッフの全員に周知しておくことが大切です。

行進の当日は、現場責任者が許可証を携帯し、警察官からの連絡や指示に即時に対応できる体制を整えておくことが求められます。また、参加者の人数が当初の見込みを大きく上回った場合や、天候などの事情で経路や時間を変更したい場合には、その場で判断せずに警察官と協議したうえで対応することが、参加者と周辺の安全を守り、行進を最後まで円滑に実施するための重要なポイントとなります。

無許可で実施した場合のリスク

許可が必要な態様であるにもかかわらず無許可でデモ行進を行った場合には、道路交通法第119条により、3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金に処せられる可能性があります。また、許可を受けていても付された条件に違反した場合には、許可の取消しや効力の停止を受けるおそれがあるほか、条件違反そのものにも罰則が設けられているため、許可を受けたことで安心せず、条件を守って行進することが大切です。

公安条例が置かれている地域では、条例に基づく許可を受けずに、あるいは届出をせずにデモ行進を行った場合や、条例に基づいて付された条件に違反した場合について、条例自体に罰則が設けられていることが多くあります。主催者や指導者が処罰の対象となる規定が置かれている例も見られるため、主催者の立場にある方は、道路交通法と公安条例の両方の観点から、必要な手続きを漏れなく済ませておくことが求められます。

実際の現場では、手続きに不備があったり条件から外れた行動があったりした場合に、まず警察官から是正や中止を求める指示を受けることになると考えられます。行進の途中で中止を求められれば、参加者が混乱して思わぬ事故につながるおそれもありますし、訴えたい内容よりも警察とのトラブルの場面ばかりが注目を集めてしまい、デモ行進の本来の目的が損なわれることにもなりかねません。

デモ行進は、多くの人の共感を得てこそ意味をもつ表現活動であり、手続きを適正に済ませ、周辺の歩行者や沿道の住民、店舗への配慮を示しながら行進することは、訴えの内容に対する社会の理解を広げることにもつながります。主催者としては、表現の自由を最大限に生かすためにこそ、法令に基づく手続きをきちんと踏まえておくという意識をもって準備を進めることが大切です。

あわせて確認したい手続き

デモ行進の前後に公園や広場で集会を行う場合には、道路使用許可とは別に、都市公園法や各自治体の公園条例に基づく公園管理者の許可が問題となります。公園での集会は、条例によって許可制とされていることが多く、利用できる区域や人数、時間帯、使用料などが定められているため、集会を予定している公園を管理する自治体の担当部署や公園管理事務所に、早い段階で利用の可否と手続きを確認しておきましょう。

拡声器を使用する場合には、各都道府県の拡声機による暴騒音の規制に関する条例にも注意が必要です。また、国会議事堂や外国の大使館などの周辺では、国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律により、拡声機の使用が制限されているため、これらの施設の周辺を経路に含む場合や、施設の前で集会を行う場合には、拡声器の使い方について特に慎重に検討することが求められます。

宣伝カーや装飾を施した車両を行進に加える場合には、車両を用いた広告や宣伝に関する都道府県規則の定めや、車両の積載や乗車に関する道路交通法の規定も関係してきます。また、行進の途中で演台や看板などの物件を道路上に設置する場合には、道路管理者の道路占用許可が必要となることもあり、ビラの配布を行う場合には、配布の方法によっては別途の許可が必要となる地域もあるため、当日に予定している行為の全体を洗い出して確認しておくことが大切です。

道路使用許可申請サポート

このように、デモ行進に関係する手続きは、道路使用許可を中心としながらも、公安条例、公園の使用、拡声器の規制、道路の占用など多岐にわたり、地域によって必要となる手続きの組み合わせも大きく異なります。行進の計画が固まった段階で、経路や集会の場所、使用する機材や車両を一覧にし、警察署や公園管理者など、どの窓口にどのような手続きが必要になるのかを整理しておくと、申請漏れを防ぎながら効率よく準備を進めることができます。

ここまで見てきたように、デモ行進に関する手続きは、道路使用許可の申請に加えて、公安条例に基づく許可や届出、公園の使用許可など複数の手続きが絡み合うことが多く、経路図や隊列図の作成、警察との事前協議を含めると相当な時間と労力がかかります。特に、申請の期限が定められている地域では、準備が遅れれば予定していた日時に行進を実施できなくなるおそれもあるため、早めの準備と正確な書類の作成が欠かせません。

主催団体の方にとって、本来であれば訴えの内容を練り上げたり、参加者への呼びかけを行ったりすることに充てるべき時間を、不慣れな行政手続きに費やすことは決して効率のよいことではありません。書類の作成や窓口とのやり取りは専門家に任せ、主催者の皆さまには行進そのものの準備に集中していただくという選択肢も、検討する価値があるはずです。

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