不動産特定共同事業契約とは?種類と契約方式をわかりやすく解説

不動産投資スキームのイメージ

不動産特定共同事業(FTK)では、投資家から集めた資金をもとに不動産を取得・運用し、その収益を投資家へ分配します。この仕組みの土台となるのが、投資家と事業者の間で結ばれる「不動産特定共同事業契約」です。

一口に「不動産投資」といっても、その契約内容によって投資家の立場や権利の内容は大きく異なり、どの契約類型を採用するかによってリスクの取り方や利益の受け取り方まで変わってきます。

そのため、不動産特定共同事業法では、この契約を1号契約から5号契約まで分類し、それぞれの性質を整理しています。不動産特定共同事業を正しく理解するには、「どの契約で組成されているのか」を知ることが大前提となることから、まずはこの契約類型の違いを押さえるところから始めましょう。

1号契約(任意組合型)

1号契約は不動産特定共同事業契約の中でも最もイメージしやすく、「共同で不動産を持つ」という考え方に近い契約形態です。

簡単に言えば、複数の投資家がそれぞれ資金を出し合い、その資金をもとに一つの不動産を取得・運用する仕組みです。事業者はその不動産の取得や管理・運用を担いますが、投資家は単なる出資者ではなく、その不動産事業に参加している立場になります。

例えば、一人では購入が難しい数億円規模のマンションや商業ビルがあったとしても、複数人で資金を出し合えば取得が可能になります。そして、その不動産から得られる賃料収入や売却益を出資割合に応じて分配するのが1号契約の基本的な仕組みです。

この契約の最大の特徴は、投資家が「不動産を持っている感覚」を得やすい点にあります。匿名組合型のように単に事業へ出資するのではなく、自分もその不動産事業の一員として関わっているという性質が強いため、実質的には「共同オーナー」に近い立場になります。

その一方で、空室が増えて賃料収入が下がれば分配額も減少し、不動産価格が下落すれば投資元本に影響する可能性もあるなど、不動産を所有するリスクを比較的ダイレクトに受ける立場と言い換えることができます。つまり、利益が出るときも損失が出るときも、不動産そのものの影響を受けやすい契約だといえます。

1号契約の代表例は「任意組合契約」ですが、任意組合とは複数人が共同で事業を行うために結ぶ契約であり、不動産特定共同事業ではこの仕組みを活用して不動産を共同保有する形がよく採られます。

不動産を一人で持つのではなく、持分という形で分けることで資産分散がしやすくなることから、近年は相続対策や資産承継の場面でこの契約を活用することが増えてきています。また、高額不動産への投資ハードルを下げられることから、富裕層向けの投資商品として利用されるケースも少なくありません。

このように1号契約は、「みんなで資金を出し合い、一つの不動産を共同で持ち、その利益とリスクを共有する契約」と理解するとイメージしやすいでしょう。不動産への「所有感」を重視する人にとっては最も分かりやすい契約方式といえます。

2号契約(匿名組合型)

2号契約は不動産特定共同事業契約の中でも現在最も多く利用されている契約形態であり、特に近年増えている不動産クラウドファンディングの多くは2号契約をベースに組成されています。

1号契約が「みんなで不動産を持つ仕組み」であるとすれば、2号契約は「事業者にお金を預けて運用してもらう仕組み」と考えると分かりやすくなります。

具体的に、投資家は不動産そのものを購入したり所有したりするのではなく、あくまでも事業者に対して出資のみを行います。そしてその資金をもとに不動産を取得した事業者が運用(賃貸あるいは売却)することで得た収益の一部が出資額に応じて投資家へ分配される仕組みです。

つまり不動産の名義は事業者側にあり、管理や運営もすべて事業者が担い、投資家は現場の管理に関与することなく運用成果に応じて利益を受け取るだけという非常にシンプルな構造です。

この方式のメリットは、不動産の所有権移転登記を省略できるなど、投資家にとって手続きが比較的簡単であるという点にあります。契約を締結し出資するだけで参加することが可能で、物件管理や修繕、入居者対応などの実務を自分で行う必要もありません。そのため、不動産投資に詳しくない人でも参加しやすく、少額投資との相性も非常に良い契約形態です。

一方で、投資家は不動産を直接所有していないため、「不動産そのものに対する権利」は持ちません。仮に物件の価値が上がっても、それがどのように分配されるかは契約内容次第ですし、事業者の運営能力によって収益が左右される側面もあります。つまり、物件を見るだけでなく「どの事業者が運営しているか」が重要になる契約でもあります。

実務上、2号契約の代表となる「匿名組合契約」ですが、ここでいう「匿名」とは、出資者が外部に対して表に出ないという意味であり、日常で使う「名前を隠す」という意味とは少し異なります。

投資家はその事業に資金を出して利益の分配を受ける立場ですが、賃借人や売主、買主など第三者との契約関係には入りません。つまり、事業には参加しているものの、外から見ると投資家の存在は見えない構造となっていることから、「匿名組合」という呼称が使用されています。

3号契約(賃貸委任型)

3号契約は不動産特定共同事業契約の中でも少し特殊な位置づけにある契約形態です。1号契約や2号契約が「投資家から資金を集めて不動産を取得・運用する仕組み」であるのに対し、3号契約は「すでに不動産を持っている人が、その不動産の運用を事業者に任せる仕組み」です。

具体的には、不動産オーナーが自ら所有している土地や建物を事業者に預け、その不動産をどのように活用するかを事業者に委ねます。事業者は、その不動産を賃貸に出したり活用方法を工夫して収益を最大化し、その成果を契約内容に応じてオーナーへ分配します。

例えば、マンションを所有しているものの、自分では管理や運用まで手が回らないオーナーがいたとします。この場合、3号契約を利用すれば、自ら入居者を募集したり日々の管理業務を行ったりする必要はありません。専門知識を持つ事業者が代わりに運用を担い、その結果として生まれた収益を受け取ることができます。

この仕組みの大きなメリットは、オーナーが自ら運用の手間を負わずに済むことです。不動産を持っていても管理や収益改善には専門知識が必要なため、そうした実務を事業者に任せることでより効率的な運用が期待できます。特に大型物件や収益改善の余地が大きい物件ではこのメリットが活きやすくなります。

一方で、収益は事業者の運用能力に大きく左右されるため、どれだけ良い不動産を持っていたとしても運用がうまくいかなければ期待した利益は得られません。

なお、実務では不動産クラウドファンディングのような案件で3号契約が使われることはほとんどなく、どちらかといえば「既に不動産を持っている人がその資産価値を高めたいとき」に活用される制度といえます。

つまり3号契約は、新たに不動産へ投資する仕組みではなく、「今ある不動産をどう活かすか」に重点を置いた契約形態です。

4号契約(外国契約型)

4号契約は海外の不動産を対象とする場合に使われる契約類型です。日本国内の不動産を前提とする1号契約から3号契約とは異なり、外国に所在する不動産を事業対象とするケースを想定して設けられています。

例えば、海外のマンションや商業ビルに投資し、その賃料収入や売却益を投資家へ分配するようなスキームがこれにあたります。仕組みそのものは国内の不動産特定共同事業と大きく変わりませんが、対象となる不動産が海外にあるため、現地の不動産法や契約制度、税制などを踏まえて組成される点が大きな違いです。

そのため国内案件と比べて制度設計は複雑になりやすく、現地法令の確認やリスク管理も重要になります。国によっては不動産の所有権制度が日本と異なるため、同じ「投資」であっても権利内容が変わることがあります。

もっとも、現在のFTK市場は国内不動産が中心であり、4号契約はあくまで海外案件に対応するための特別な契約類型と位置づけられています。つまり、「国内ではあまり見かけないが海外不動産を扱うために用意された制度」と理解しておけば十分です。

5号契約(その他政令指定型)

5号契約は、1号契約から4号契約のいずれにも当てはまらない契約であっても、実質的に不動産投資としての性質を持ち、投資家保護の観点から規制が必要と判断される場合に適用される契約類型です。

簡単にいえば「既存の1号から4号では整理しきれない新しい契約形態」に対応するために設けられた規定です。不動産投資の手法や金融商品の仕組みは時代とともに変化していくため、法律が想定していなかった新しいスキームが登場することもあります。そうした場合でも、規制の対象から漏れないようにするための受け皿として5号契約が用意されています。

実務で頻繁に使われる契約ではありませんが、制度の抜け穴を防ぎ、不動産特定共同事業のルールを補完するための安全装置のような役割を担っています。

実務上の活用状況

実務上の活用状況を見ると、不動産特定共同事業契約は5種類に分類されているものの、実際に多く使われている契約類型はある程度限られています。

中でも現在のFTK市場で中心となっているのが2号契約であり、特に近年拡大している不動産クラウドファンディングの多くが匿名組合契約をベースとした2号契約で組成されており、一般投資家にとって最も身近な契約類型といえます。少額から投資しやすく事業者側もスキームを組みやすいことが主流化の背景にあります。

一方、1号契約は、投資家が不動産を共同で保有する性質を持つことから、高額不動産への共同投資や、相続対策・資産承継を目的とした案件で活用されることが多くなっています。所有に近い形で資産を持てる点が2号契約との大きな違いです。

これに対し、3号契約から5号契約は制度上は存在するものの活用場面は限定的です。既存不動産の運用委託や海外不動産案件、特殊なスキームへの対応など特定のケースで用いられることが多く、一般的な投資商品として目にする機会は多くありません。

このように見ると、不動産特定共同事業契約は5類型に整理されていても、実務の中心はあくまで1号契約と2号契約です。まずはこの2つの違いを押さえることが不動産特定共同事業を理解する第一歩といえるでしょう。

まとめ

不動産特定共同事業契約は、不動産特定共同事業の仕組みを支える土台となる契約であり、投資家と事業者がどのような関係で事業に参加するのかを定める重要なルールです。同じ「不動産投資」であっても、どの契約類型を採用するかによって投資家の立場や権利の内容や背負うリスクの範囲は大きく変わります。

法律上は1号契約から5号契約まで定められていますが、実務の中心となるのは1号契約と2号契約です。特に現在は不動産クラウドファンディングの普及によって2号契約に触れる機会が増えていますが、案件の目的や投資家のニーズによっては1号契約やその他の契約類型が選ばれることもあります。

そのため、不動産特定共同事業を理解するうえでは利回りや対象不動産だけを見るのは不十分であり、「どの契約で組成されているのか」という視点を持つことで、その投資商品の仕組みやリスクの所在がより明確になります。契約類型を理解することは、不動産特定共同事業を正しく見極めるための第一歩といえるでしょう。

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