清掃作業監督者資格の取得方法について
建築物清掃業登録申請の手続きにおいて最もネックとなるのが、清掃作業の監督を行う清掃作業監督者の選任です。建築物清掃業においては、清掃作業監督者の配置が義務付けられていますが、この資格を保有する人材はそう多くなく、取得しようにもその道のりは意外に長く険しいものとなっています。
そこで本稿では、これから清掃作業監督者資格の取得を考えている方、あるいは清掃業登録の参考とされたい方に向けて、清掃作業監督者資格の取得方法について詳しく解説していきたいと思います。
目 次
清掃作業監督者
清掃作業監督者は、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下、建築物衛生法)及び衛生的環境の確保に関する法律施行規則(以下、建築物衛生法施行規則)の規定により、建築物清掃業の登録の人的要件となる清掃作業の監督を行う者をいいます。
清掃作業監督者は国家資格であり、資格を取得するためには、2日間の講習を受け、修了考査に合格した後、申請を経て都道府県知事から登録を受ける必要があります。資格自体に有効期限はありませんが、登録の有効期間は6年とされているため、継続的に清掃作業監督者の職務につくには、6年ごとに講習を受講して登録を更新する必要があります。
このように、清掃作業監督者となるためには清掃作業監督者講習を受講する必要がありますが、そもそも清掃作業監督者講習は、以下のいずれかの資格を保有することが受講資格となっています。
- 1級ビルクリーニング技能士の技能検定に合格した者
- 建築物環境衛生管理技術者免状の交付を受けている者
1級ビルクリーニング技能士
ビルクリーニング技能検定は、職業能力促進法に基づく国家検定であり、ビルにおける環境衛生維持管理業務のうち、ビルの所有者から委託を受けて行うビルクリーニング作業について必要な技能を評価するものです。
技能検定は4等級(1級・2級・3級・基礎級)に区分されており、このうち1級ビルクリーニング技能士のみが清掃作業監督者講習を受講するための必要資格になっています。
等級別のレベル
1級 | 2級 | 3級 | 基礎級 | |
---|---|---|---|---|
技能レベル | 上級技能者が通常有すべき技能及び知識 | 中級技能者が通常有すべき技能及び知識 | 初級技能者が通常有すべき技能及び知識 | 基本的な業務を遂行するために必要な基礎的な技術及び知識 |
修得の目安 | 5年以上 | 2~5年 | 3年(1~2年) | 1年(2~6ヶ月) |
到達対象 | 現場責任者班長 | チームリーダー | 一人前 | (具体的な)指示に基づく |
等級別の受検資格
ビルクリーニング作業に従事した実務経験がビルクリーニング技能士の受検資格とされていますが、1級ビルクリーニング技能士検定を受検するためには、下表のとおり、少なくとも未経験から3年以上の実務経験が必要になります。(建築物衛生管理科の職業訓練指導員免許を有する者を除く)
等級 | 受検資格 |
---|---|
1級 | 5年以上の実務経験を有する者 2級の技能検定に合格した者で、合格後1年以上の実務経験を有する者 3級の技能検定に合格した者で、合格後3年以上の実務経験を有する者 建築物衛生管理科の職業訓練指導員免許を有する者 ビルクリーニングに関する短期課程の普通職業訓練で総時間700時間以上のものを修了した者で、4年以上の実務経験を有する者 |
2級 | 2年以上の実務経験を有する者 3級の技能検定に合格した者 建築物衛生管理科の職業訓練指導員免許を有する者 ビルクリーニングに関する短期課程の普通職業訓練で総時間700時間以上のものを修了した者で、1年以上の実務経験を有する者 |
3級 | ビルクリーニング業務に従事している者又は従事しようとする者 建築物衛生管理科の職業訓練指導員免許を有する者 |
建築物環境衛生管理技術者
建築物環境衛生管理技術者(通称:ビル管理技術者)とは、建築物の環境衛生の維持管理に関する監督等を行う国家資格です。一定規模以上の建築物(特定建築物)の所有者等は、建築物衛生法に基づき、建築物内の環境に関する管理基準に従って維持管理するために建築物環境衛生管理技術者を選任し、その監督をさせることが義務付けられています。また、先に説明したとおり、清掃作業監督者講習の受講資格のひとつでもあります。
建築物環境衛生管理技術者となるためのルートについては、建築物環境衛生管理技術者試験(国家試験)を受験して合格するルートと、建築物環境衛生管理技術者講習会を受講して取得するルートの2つのルートがあります。
建築物環境衛生管理技術者試験
建築物環境衛生管理技術者試験は、毎年1回(例年は10月はじめの日曜日)、札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市及び福岡市の会場において実施されます。
受験資格
以下の用途に供される建築物の当該用途部分において、環境衛生上の維持管理に関する実務に、本来職務として又は主要職務として、直接、反復継続して2年以上従事した者について受験資格が与えられます。(従事期間については、実務従事証明書の証明日現在で2年以上が必要です。)
★建築物の用途
ア | 興行場(映画館、劇場等)、百貨店、集会場(公民館、結婚式場、市民ホール等)、図書館、博物館、美術館、 遊技場(ボーリング場等) |
イ | 店舗、事務所 |
ウ | 学校(研修所を含む) |
エ | 旅館、ホテル |
オ | その他アからエまでの用途に類する用途(多数の者の使用、利用に供される用途であって、かつ、衛生的環境もアからエまでの用途におけるそれと類似しているとみられるもの) |
(共同住宅、保養所、寄宿舎、保育所、老人ホーム、病院等) |
★受験資格に該当しない用途
もっぱら倉庫、駐車場、工場(浄水場、下水処理場、清掃工場、製造工場等)等の用途に供されるものその他特殊な環境(通信施設、発電所等)にあるものについては、受験資格に該当しない用途の建築物として取り扱われています。
★実務経験
建築物における環境衛生上の維持管理に関する実務とは、以下に記載されている業務をいいます。
- 空気調和設備管理
- 給水、給湯設備管理
(貯水槽の維持管理を含み、浄水場の維持管理業務を除く) - 排水設備管理(浄化槽の維持管理を含み、下水処理場の維持管理業務を除く)
- ボイラ設備管理
- 電気設備管理(電気事業の変電、配電等のみの業務を除く)
- 清掃及び廃棄物処理
- ねずみ、昆虫等の防除
※1~5の「設備管理」とは、設備についての運転、保守、環境測定及び評価等を行う業務をいいます。
環境衛生監視員(都道府県、政令市、特別区の職員として特定建築物等および登録営業所の立入検査等の職務を行う者)として保健所の環境衛生担当部署に勤務した経験は受験資格に該当する実務に含みますが、事務職員が行う室内の清掃、アルバイト・パート等の経験、修理専業、アフターサービスとしての巡回サービス、簡易専用水道検査などは実務には含まれません。また、実務期間についてはは、申込時点において期間を満たしていることが求められているため、申込時点以降の期間を含めることはできません。
試験科目
試験は以下の7科目で実施され、例年は7科目の合計で65%以上の正解率、かつ、各科目40%以上の正解率が合格基準となっています。(合格率10〜20%)
- 建築物衛生行政概論
- 建築物の構造概論
- 建築物の環境衛生
- 空気環境の調整
- 給水及び排水の管理
- 清掃
- ねずみ、昆虫等の防除
建築物環境衛生管理技術者講習会
建築物環境衛生管理技術者講習会を修了した者には修了証書が交付され、申請することにより厚生労働大臣から建築物環境衛生管理技術者免状が交付されます。これにより建築物環境衛生管理技術者として、清掃作業監督者講習を受講する資格が付与されることになります。
受講資格
建築物環境衛生管理技術者講を受講するためには、下記受講資格のいずれかの区分に該当する必要があります。
区分 | 学歴又は免許等 | 経験年数 | 実務経験の内容 | |
---|---|---|---|---|
学歴及び経験年数で受講する者 | 1 | ①大学の理学、医学、歯学、薬学、保健学、衛生学、工学、農学または獣医学の課程を卒業 ②防衛大学校の理工学の課程を卒業 ③海上保安大学校を卒業 | 卒業後1年以上 | 建築物の維持管理に関する実務「特定建築物の用途その他これに類する用途に供される部分の延べ面積がおおむね3,000 ㎡をこえる建築物の当該用途に供される部分において業として行なう環境衛生上の維持管理に関する実務」または、環境衛生監視員として勤務 |
2 | 短期大学・高等専門学校の理学、医学、歯学、薬学、保健学、衛生学、工学、農学または獣医学の課程を卒業(専門職大学前期同課程を修了した者を含む) | 卒業後3年以上 | 同上 | |
3 | 高等学校・中等教育学校の工業に関する学科を卒業 | 卒業後5年以上 | 同上 | |
4 | 上記1~3の区分以外の課程または学科を卒業した者 大学・短期大学・高等学校の文科系等を卒業(大学に入学する事ができる者) | 卒業後5年以上 | 同上の実務経験、及び同実務に従事する者を指導監督した経験または、環境衛生監視員として勤務 | |
免許及び経験年数で受講する者 | 5 | ①医師(歯科・獣医師、薬剤師を除く) ②一級建築士 ③技術士の機械、電気電子、上下水道、または、衛生工学部門の登録を受けた者 | 不要 | − |
6 | ①第一種冷凍機械責任者免状 ②第二種冷凍機械責任者免状 | ①免許取得後1年以上 ②免許取得後2年以上 | 建築物の維持管理に関する実務「特定建築物の用途その他これに類する用途に供される部分の延べ面積がおおむね3,000 ㎡をこえる建築物の当該用途に供される部分において業として行なう環境衛生上の維持管理に関する実務」または、環境衛生監視員として勤務 | |
7 | 臨床検査技師免許 | 2年以上 | ||
8 | ①第一種電気主任技術者免状第二種電気主任技術者免状 ②第三種電気主任技術者免状 | ①免許取得後1年以上 ②免許取得後2年以上 | ||
9 | ①特級ボイラ技士免許 ②一級ボイラ技士免許 | ①免許取得後1年以上 ②免許取得後4年以上 | ||
10 | 衛生管理者免許(大学に入学することができる者、または旧中等学校を卒業した者に限る) | 免許取得後5年以上 | 同上(常時1,000人を超える労働者を使用する事業場において衛生管理者として専任されていること) | |
個別認定 | 11 | 厚生労働大臣が上記区分1~4と同等以上の学歴および実務の経験、または、区分5~10と同等以上の知識および技能を有すると認めるもの |
中等教育学校 | 中等普通教育(中学校)並びに高等普通教育及び専門教育(高等学校)を一貫した修業年限6年の学校 |
大学に入学することができる者 | ①高等学校、もしくは中等教育学校を卒業した者 ②通常の課程による12年の学校教育を修了した者(通常の課程以外の課程によりこれに相当する学校教育を修了した者を含む) ③文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者(外国において学校教育における12年の課程を修了した者又はこれに準ずる者で文部科学大臣の指定したもの、専修学校の高等課程の修業年限3年以上の課程で文部科学大臣が別に指定したものを文部科学大臣が定める日以後に修了した者等文部科学大臣の指定した者、高等学校卒業程度認定試験に合格した者、大学入学資格検定に合格した者など) |
旧大学・旧専門学校・旧中等学校を卒業した者 | 要相談 |
専修学校(専門学校)・各種学校等、及び大学校・短期大学校 | 受講資格の学歴に非該当該当(修業年限が4年以上等の一定の要件を満たす専修学校専門課程の修了者として「大学院入学資格」及び「高度専門士」が付与された者については要相談) |
ここでいう実務経験とは、特定建築物の用途その他これに類する用途に供される部分の延べ面積がおおむね3,000㎡を超える建築物(2,700㎡以上)の当該用途に供される部分において業として行う環境衛生上の維持管理に関する実務に従事した経験を指します。
掃除その他これに類する単純労務は維持管理に関する実務とはいえないため実務経験には含まれません。また、竣工前の建築物での実務についても同じく実務経験には含まれません。
★建築物の用途
ア | 興行場(映画館、劇場等)、百貨店、集会場(公民館、結婚式場、市民ホール等)、図書館、博物館、美術館、 遊技場(ボーリング場等) |
イ | 店舗、事務所 |
ウ | 学校(研修所を含む) |
エ | 旅館、ホテル |
オ | その他アからエまでの用途に類する用途(多数の者の使用、利用に供される用途であって、かつ、衛生的環境もアからエまでの用途におけるそれと類似しているとみられるもの) |
(共同住宅、保養所、寄宿舎、保育所、老人ホーム、病院等) |
★受験資格に該当しない用途
もっぱら倉庫、駐車場、工場(浄水場、下水処理場、清掃工場、製造工場等)等の用途に供されるものその他特殊な環境(通信施設、発電所等)にあるものについては、受験資格に該当しない用途の建築物として取り扱われています。
★実務経験
建築物における環境衛生上の維持管理に関する実務とは、以下に記載されている業務をいいます。
- 空気調和設備管理
- 給水、給湯設備管理
(貯水槽の維持管理を含み、浄水場の維持管理業務を除く) - 排水設備管理(浄化槽の維持管理を含み、下水処理場の維持管理業務を除く)
- ボイラ設備管理
- 電気設備管理(電気事業の変電、配電等のみの業務を除く)
- 清掃及び廃棄物処理
- ねずみ、昆虫等の防除
※1~5の「設備管理」とは、設備についての運転、保守、環境測定及び評価等を行う業務をいいます。
環境衛生監視員(都道府県、政令市、特別区の職員として特定建築物等および登録営業所の立入検査等の職務を行う者)として保健所の環境衛生担当部署に勤務した経験は受験資格に該当する実務に含みますが、事務職員が行う室内の清掃、アルバイト・パート等の経験、修理専業、アフターサービスとしての巡回サービス、簡易専用水道検査などは実務には含まれません。また、実務期間についてはは、申込時点において期間を満たしていることが求められているため、申込時点以降の期間を含めることはできません。
★指導監督した経験
指導監督した経験とは、建築物の維持管理に関する実務において、部下(後輩やアルバイト・パートも含む)1名以上を持ち、技術的立場で直接部下に指導監督した経験をいいます。
講習科目と講習時間
講習会では、原則として定められた科目のすべてを受講した者に対して試験が実施されます。また、講習会の課程を修了したと認定された者には修了証書が交付されます。
科目 | 時間数 | 科目 | 時間数 |
---|---|---|---|
建築物衛生行政概論 | 10時間 | 給水及び排水の管理 | 20時間 |
建築物の構造概論 | 8時間 | 清掃 | 16時間 |
建築物の環境衛生 | 13時間 | ねずみ、昆虫等の防除 | 8時間 |
空気環境の調整 | 26時間 | 計 | 101時間 |
講習会修了者が申請(併せて収入印紙2,300円分を納付)することにより、厚生労働大臣から建築物環境衛生管理技術者免状が交付されます。
まとめ
ここまで説明したとおり、清掃作業監督者の資格取得までのルートは複雑かつ難解です。また、結果として複数の資格を取得することになるため、これらに必要な実務経験を合計すると、資格取得までにはそれなりに長い期間を要することになります。さらには実務経験を証明するために添付する書類は多く、これらを収集するだけでもその作業は重い負担となります。
いずれにせよ清掃作業監督者を目指すのであれば早め早めに計画を進めるのが吉です。弊所では国家試験や講習会の申請手続きのサポートも取り扱っているので、清掃作業監督者や建築物清掃業に関するサポートについてはどうぞお気軽にご相談はください。