電気通信事業におけるネットワークの構築について

緑色に光るネットワーク

電話やインターネット等を利用したサービスなど、電気通信事業に関する手続きは意外に多くの方が携わる機会がある一方で、ガイドライン中に複雑なシステムや単語が頻出することから、ある程度の専門知識を有していなければ、非常にとっつきにくい制度となっています。

そこで本稿では、改めて電気通信事業制度において重要なポイントとなるネットワークの構築方法を紹介し、一般的にも理解しやすいように解説していきたいと思います。

ネットワーク構築の方法

現在、電気通信事業者において一般的に採用されているネットワークは、以下の方式を柔軟に組み合せることにより構築されています。

設置方式
自ら伝送路設備を設置して、利用者に電気通信役務を提供する方式
線路敷設方式
(1)1)「線路敷設」方式
自ら光ファイバ等を敷設・所有し、伝送路設備として設置する方式
IRU方式
(1)2)「IRU」方式
他者の所有する光ファイバ等についてIRUの設定を受け、伝送路設備として設置する方式
卸役務方式
(2)「卸役務」方式
他の電気通信事業者から卸電気通信役務に基づく電気通信役務の提供を受けることにより、他者の設置する電気通信設備を用いて電気通信役務を提供する方式
接続方式
(3)「接続」方式
自らの電気通信設備と他の電気通信事業者の電気通信設備を相互に接続し、それぞれの事業者が、利用者に対し、自らの電気通信設備に係る電気通信役務を提供する方式
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結局はこのような感じになってしまうこともいたしかたないのかもしれません。上記のネットワークについては後々説明するとして、まずは「電気通信事業とは何か」を紐解いていくことにしましょう。

電気通信事業とは

電気通信事業とは、電気通信設備を他⼈の通信の⽤に供する事業のことを指します。一番分かりやすい例を挙げると、「キャリア」と言われる携帯電話会社や、インターネットサービスプロバイダなどがこれに該当します。

ざっくりと大枠で捉えて、他人同士の通信を「サーバ」という「場所」を介してつなぐサービスが電気通信事業であるものとイメージすると、いくぶん伝わりやすくなるように思います。

そして、事業として他人同士の通信を媒介するサービスを提供する場合、電気通信回線設備の設置の有無や事業の規模により、登録又は届出といった手続きを行う必要があります。この辺りについては、こちらの記事にも概要を記述していますが、本稿ではネットワーク構築について、より詳しく掘り下げて解説を加えていきたいと思います。

線路敷設

線路敷設

電気通信事業者が電気通信回線設備を設置する基本的な形態として、自ら光ファイバ等を敷設し所有する線路敷設の方法が挙げられます。

光ファイバ等の敷設を行う際には、ほとんどの場合、他人の土地、建物、電柱、管路等を使用する必要が生ずるため、基本的には、電気通信事業者が当該土地等の所有者と個別に交渉し、当事者間の合意の下で、土地等の使用権を設定することになります。

その一方で、電気通信事業は国民生活や経済活動に不可欠な電気通信サービスを提供する公共事業であることから、一定の条件を満たす電気通信事業者が光ファイバ等を敷設するに当たっては、他人の土地等について使用権を設定することが認められています。(認定電気通信事業者)

また、認定電気通信事業者については、道路占用許可の適用に当たっても、一定の基準を満たす場合は許可を与えなければならないこととされており、このほか、共同溝等の利用も可能となっているなどの優遇措置が与えられています。

IRU

IRU

IRUとは、「破棄し得ない使用権」と言われる通信回線などの貸借契約のひとつで、設置者(所有者)と利用者の双方の合意がない限り、一方から契約を破棄することができない契約、及びそのような契約に基づく永続的な利用権のことを指します。

電気通信事業者は、自ら光ファイバ等を敷設し所有するほか、電気通信事業者でない者を含む他者の所有する特定区間の光ファイバ等についてIRU、つまりは契約に基づく永続的な利用権の設定を受け、伝送路設備を設置することが可能です。 

要するに、電気通信回線の貸主側は、借主側である契約者(使用者)の合意を得ない限り、永続的に回線を貸し続けることとなり、これによって、独自の電気通信回線を持たない事業者であっても、インターネットやCATVサービスを安定して提供することができるようになるという仕組みになっています。

IRUに係る契約がIRUの要件に適合する場合は、IRUが設定されたもの、すなわちIRUの設定を受ける電気通信事業者が、当該光ファイバ等を継続的に支配・管理している状態にあるものとして認められます。

一方、光ファイバ等の所有者が、IRU要件を満たさない契約により、当該光ファイバ等を提供する場合は、電気通信役務の提供(ダークファイバ貸し=電気通信事業者や鉄道事業者などが敷設する光ファイバーで、当該事業者が使用していない回線を貸す行為)に該当するため、所有者についても電気通信事業の登録又は届出の手続きを経る必要が生じます。

IRUの設定を受けて伝送路設備を設置する場合についても、自ら線路を敷設し所有して伝送路設備を設置する場合と同様に、「電気通信設備の概要」や「業務区域」の変更手続き、技術基準適合維持義務といった電気通信回線設備を設置する電気通信事業者に係る規律が適用されます。IRUの設定は、あくまで当事者の合意の下に行われるものであり、IRU方式による光ファイバ等の提供は、法的に義務付けられているものではありません。

卸電気通信役務

卸電気通信役務

電気通信事業者は、一般利用者と同様に、利用者としての立場で、他の電気通信事業者から電気通信役務の提供を受け、これを利用者に再販することができます。

基礎的電気通信役務及び指定電気通信役務以外の電気通信役務については、契約約款等の作成・届出義務が廃止されたため、料金その他の提供条件を定めて個別に契約を締結することも可能となっています。

指定電気通信役務についても、当該電気通信役務の提供の相手方と料金その他の提供条件について別段の合意がある場合には、保障契約約款によらずに当該電気通信役務を提供することが可能です。

電気通信事業者が、卸役務方式により役務を提供する場合にあっては、他の電気通信事業者の電気通信設備を自らの電気通信事業の用に供させることとなりますが、その部分についても、「業務区域」の変更手続きといった規律は適用されます。ただし、当該他の電気通信事業者の電気通信設備については、自ら設置する電気通信設備ではないので、「電気通信設備の概要」の変更手続きや、技術基準適合維持義務の適用はありません。

基礎的電気通信役務、指定電気通信役務及び認定電気通信事業に係る電気通信役務を提供する電気通信事業者には、これらの役務について役務提供義務が適用されるため、当該電気通信事業者に対し電気通信役務の提供を求める場合は、正当な理由がなければ、提供を拒否されることはありません。

なお、役務提供義務が適用されない電気通信役務であっても、全ての電気通信事業者は、当該電気通信役務の提供にあたり不当な差別的取扱いをしてはならないこととされています。

電気通信事業者間において、当事者の一方が卸電気通信役務の契約の締結を申し入れたにもかかわらず、他の一方がその協議に応じない場合等には、総務大臣は、他の一方に対し協議の開始又は再開を命令することができるとされています。また、電気通信事業者が他の電気通信事業者と卸電気通信役務の契約を締結しようとする場合であって、当事者が負担する金額や提供の条件等について協議が調わないときは、総務大臣の裁定を申請することができます。

このほか、上記の命令があった場合において、当事者が負担する金額や提供の条件等について協議が調わないときは、総務大臣の裁定を申請することができます。 

なお、一種指定事業者又は二種指定事業者が、第一種指定電気通信設備又は第二種指定電気通信設備を用いて卸電気通信役務を提供する場合、遅滞なく、その旨及び役務区分、業務の開始日等を届け出なければならないこととされています。

区分対象該当企業備考
第一種指定電気通信事業者加入者回線の50%以上を有する電気通信事業者NTT東西接続料や接続の条件を定めた接続約款を認可対象とし、その公表が義務付けられる
第二種指定電気通信事業者相対的に多数の移動端末設備を収容する電気通信事業者NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク及び沖縄セルラー電話接続約款を届出対象とし、その公表が義務付けられる

役務区分及び卸先事業者が以下の表に掲げるものに該当する場合は、提供条件等更に詳細な内容について届け出ることとされています。また、届け出た内容については、総務大臣が整理、公表することとされています。この辺りはやや難解な内容になっているので、ご注意ください。

電気通信事業者の電気通信事業の用に供するFTTHアクセスサービス当該第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者の特定関係法人である電気通信事業者(その提供を受ける当該FTTHアクセスサービスに用いられる固定端末系伝送路設備の電気通信回線(当該第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者が設置する共同住宅等内のVDSL設備その他の電気通信設備を用いて提供されるFTTHアクセスサービスにあっては、当該電気通信設備とその利用者の電気通信設備との間の電気通信回線)の数が5万未満のものを除く)
その提供を受ける当該FTTHアクセスサービスに用いられる固定端末系伝送路設備の電気通信回線の数が50万以上の電気通信事業者
その一端が特定移動端末設備と接続される伝送路設備を設置する電気通信事業者(その提供を受ける当該FTTHアクセスサービスに用いられる固定端末系伝送路設備の電気通信回線の数が3万未満のものを除く)

その他電気通信事業者
電気通信事業者の電気通信事業の用に供する携帯電話又はBWAアクセスサービス(電気通信事業報告規則第1条第2項第14号に規定するBWAアクセスサービスであって、無線設備規則第3条第12号に規定する時分割・直交周波数分割多元接続方式又は時分割・シングルキャリア周波数分割多元接続方式広帯域移動無線アクセスシステムのうち、同号に規定するシングルキャリア周波数分割多元接続方式と他の接続方式を組み合わせた接続方式を用いることが可能なものを使用するものに限る)(通信モジュール(特定の業務の用に供する通信に用途が限定されている利用者の電気通信設備)向けに提供するものを除く)当該第二種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者の特定関係法人である電気通信事業者(その提供を受ける携帯電話又はBWAアクセスサービスに用いられる伝送路設備に接続される特定移動端末設備の数が5万未満のものを除く)
その提供を受ける携帯電話又はBWAアクセスサービスに用いられる伝送路設備に接続される特定移動端末設備の数が50万以上の電気通信事業者

電気通信事業者は、卸役務方式により役務を提供する場合にあっても、以下の一般利用者を保護する規律について遵守する必要があります。

  • 事業の休廃止に係る周知
  • 契約前の説明
  • 契約後の書面交付
  • 初期契約解除制度
  • 苦情等の処理義務
  • 不実告知等及び勧誘継続行為の禁止
  • 媒介等業務受託者に対する指導等の措置義務

接続

接続

電気通信事業者は、ネットワークを相互に接続することによって、通信可能な範囲を広げるとともに、利用者に対して総合的なサービスを提供しています。一般的には、それぞれの事業者が、利用者に対し、接続点を責任分界点として、自らの電気通信設備に係る電気通信役務を提供する方法(接続方式)も多く利用されています。

接続方式における利用者料金の設定方法は、事業者間の協議により決められるのが一般的ですが、その方式は、以下の2つが代表例となっており、その中でも「エンドエンドの料金設定」は多くの事業者において採用されています。

エンドエンドの料金設定一方の事業者が、他方の事業者が提供する電気通信役務の料金を、自らが提供する電気通信役務の料金と併せて、利用者に対し設定する方式
ぶつ切りの料金設定それぞれの事業者が、自らが提供する電気通信役務の料金を、利用者に対し、それぞれ設定する方式

エンドエンドの料金設定の場合は、一方の事業者が利用者料金をまとめて設定しているため、一見して、卸役務方式と区別がつきにくいケースがありますが、卸役務方式とは異なり、あくまで、それぞれの事業者が利用者に対し直接に役務を提供しており、利用者に対し契約履行責任を負っています。

接続点の先にある他の電気通信事業者の電気通信設備は、自らの電気通信設備ではないため、その部分については、電気通信設備の概要の変更手続き、技術基準適合維持義務といった電気通信回線設備を設置する電気通信事業者に係る規律は適用されません。

ただし、接続をすることにより、提供区域(サービスエリア)が拡大する場合には、業務区域の変更の手続きが必要となることがあります。さらに、認定電気通信事業者等においては、接続しようとする電気通信事業者名及び接続の場所等に係る手続きも必要となることがあります。

接続応諾義務

電気通信事業者の設置する電気通信回線設備は、国民生活や経済活動の基盤となる公共性の高いものであることから、電気通信回線設備を設置する電気通信事業者には、その設置する電気通信回線設備について正当な理由がある場合を除き、他の電気通信事業者からの接続の請求に応じる義務が課されています。

他の電気通信事業者が当該電気通信事業者に対し接続協定の締結を申し入れたにもかかわらず、当該電気通信事業者がその協議に応じない場合であって、当該協定の締結を申し入れた電気通信事業者から申立てがあったときは、協議に応じないことについて正当な理由があると認めるとき等を除き、総務大臣は、当該電気通信事業者に対し協議の開始又は再開を命令するものとするとされています。

このほか、電気通信事業者間において、当事者の一方が接続協定の締結を申し入れたにもかかわらず、他の一方がそれに応じない場合であって、一定の要件を満たす場合は、総務大臣は、協議の開始又は再開を命令することができるとされています。

電気通信事業者の電気通信設備との接続に関し、当事者が負担する金額や接続の条件等について協議が調わない場合は、総務大臣の裁定を申請することができます。

また、上記の命令があった場合において、当事者が負担する金額や接続の条件等について協議が調わない場合は、総務大臣の裁定を申請することができます。

ネットワーク構成図

以下は届出や登録といった電気通信事業の手続きの際に必要とされるネットワーク構成図の記載例になります。簡素化した図面ではありますが、これらを参考にして書面を整えていくようにしましょう。

ネットワーク構成図(1)
ネットワーク構成図(2)
ネットワーク構成図(3)
ネットワーク構成図(4)
ネットワーク構成図(5)
ネットワーク構成図(6)

まとめ

お伝えしているとおり、電気通信事業は、国民生活のインフラとなる公共性の高い活動であることから、携わる事業者には相応の専門知識が要求されています。大手の携帯電話会社等であればいざ知らず、例えばマッチングサイトやモール型のECサイトを運営するような中小規模の事業者であっても、電気通信事業制度の適用を受けることになるため、最低限の専門知識を習得する必要性に迫られることでしょう。

本稿で紹介した電気通信事業におけるネットワーク構築のプロセスは、その基礎となる部分になります。改めて本稿を読み返していただき、しっかりと知識を身に着けて健全な運営を心がけるようにしましょう。

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電気通信事業届出44,000円〜
電気通信事業登録申請66,000円〜
電気通信番号使用計画認定申請132,000円〜
電気通信事業届出電気通信番号使用計画認定申請165,000円〜
※税込み

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