飲食店における喫煙のルール│喫煙可能な飲食店について
2020年4月1日に施行された改正健康増進法の施行により、飲食店が原則として屋内禁煙となったことについては、ご存じの方も多いように思います。
その一方で、実際には喫煙可能な飲食店と全面禁煙の飲食店とが混在している状況について、不思議に感じておられる方も少なくないのではないでしょうか。
そこで本稿では、飲食店における喫煙のルールに関して現状をおさらいするとともに、既存または新規オープンのお店が喫煙を可能とするために必要となる手続きについて、詳しくご案内したいと思います。
目 次
飲食店における喫煙のルール
冒頭に述べたとおり、2020年4月1日以降、飲食店は原則として屋内禁煙となり、店内における飲食を伴う喫煙は制限されることになりました。
ここで重要なことは、「2020年4月1日以降」という日付と、「原則屋内禁煙」とされているという点です。
既存飲食店における経過措置
2020年4月1日以降に開業した飲食店については、否応なくこの規制の対象になるものの、2020年3月31日時点で既に営業を開始している、資本金の額及び客席床面積が一定の規模以下である飲食店については、当面の間、経過措置として飲食を伴いながら喫煙する事が認められています。
より具体的には、以下の要件をすべて満たす飲食店について、この経過措置が適用されることになります。
- 2020年3月31日時点で営業を開始していること
- 資本金が5,000万円以下であること
- 客席の面積が100m²(約30坪)以下であること
- 全面喫煙可能である旨と20歳未満の立入禁止の旨が明記された標識を掲示すること
これらの飲食店は、都道府県(または特定の市町村)の長に届け出ることで「既存特定飲食提供施設」として取り扱われ、後述する「喫煙可能室」として、喫煙室を設けることなく店内で喫煙することが認められるようになります。
喫煙室の設置
基本的には屋内禁煙がスタンダードになるのですが、「原則」とされているからには「例外」も存在しています。この例外に該当する事由が「分煙化対策」、すなわち「喫煙室の設置」です。
喫煙室 | 飲食 | 設置可能場所 |
---|---|---|
喫煙可能室 | ○ | 施設の全部または一部 |
喫煙専用室 | ☓ | 施設の一部 |
加熱式たばこ専用喫煙室 | ○ | 施設の一部 |
喫煙目的室 | ○ | 施設の全部または一部 |
喫煙可能室
上記の「既存特定飲食提供施設」のことです。店内の全部または一部で、飲食を伴う喫煙をすることが可能です。
喫煙専用室
喫煙専用室では、飲食などをすることはできませんが、喫煙をすることが可能です。後述する加熱式たばこ専用喫煙室とは異なり、すべての種類のたばこを喫煙することができます。
加熱式たばこ専用喫煙室
加熱式たばこ専用喫煙室では、加熱式たばこを喫煙することができるほか、飲食をすることも可能です。喫煙が認められるのは、あくまでも加熱式たばこについてのみであり、当然のことながら紙たばこの喫煙は認められていません。
喫煙目的室
喫煙を嗜むバーやスナックなど、喫煙を目的とする飲食店(シガーバー)についても、一定の条件を満たすことにより、喫煙目的室として飲食を伴う喫煙をすることが可能になります。その条件については、ざっくりと以下のとおりです。
- たばこの対面販売(小売販売・出張販売)を行っていること
- 喫煙を主たる目的とする店舗であること
- 法令や条例による設備基準を満たしていること
- 主食として認められる食事をメインに提供していないこと
屋外敷地内における喫煙場所の設置
禁煙が義務付けられているのは「屋内=店内」であり、屋外敷地内については、灰皿等喫煙場所を設置することによって喫煙することが可能です。ただし、この場合であっても、周囲への配慮義務は当然に課せられています。
喫煙エリアの基準
技術的基準
設置する喫煙室においては、たばこの煙が室外に流出しないように、以下の基準をすべてクリアする必要があります。
- 喫煙室の扉を全開にした状態で喫煙室の外から内側に向かって開口面風速0.2m/秒以上の空気の流れをつくり、たばこの煙が禁煙エリアに漏れないような状態であること
- 壁や天井などにより、扉以外の部分が完全に他の空間と仕切られており、たばこの煙が禁煙エリアに漏れないようにすること
- たばこの煙が屋外に排気されていること
なお、経過措置として脱煙機能付き喫煙ブースを設置することにより、上記の基準を満たすことなく喫煙室として認められる場合があります。
立入制限
20歳未満の者は、喫煙室への入室が禁止されています。この年齢制限は来店客だけでなく、従業員も対象となっています。
標識の掲示
施設内に喫煙スペースがある場合は、施設の出入口と喫煙スペースの出入口に標識を掲示する義務があります。
施設の出入口には、施設内に喫煙スペースがある旨を記載する必要があり、喫煙スペースの出入口には、喫煙可能な場所である旨とともに20歳未満の者の立ち入りが禁止されている旨を明記する必要があります。
施設出入口に掲示 | 喫煙区域の出入口に掲示 | 施設出入口に掲示 | 施設出入口に掲示 |
禁煙標識(PDF:19KB) | 喫煙区域標識(PDF:38KB) | 喫煙区域ありの標識(PDF:20KB) | 喫煙可能標識(PDF:38KB) |
喫煙可能室設置施設の届出
先に説明した特例措置が適用される既存飲食店は、名称や所在地、営業許可番号や営業許可日等を記載した「喫煙可能室設置施設届出書」を届け出ることで喫煙可能室として取り扱われます。また、届出事項に変更が生じたときや喫煙可能室を廃止したときも、その旨を届け出ることが必要になります。
上の書面が兵庫県における喫煙可能室設置施設届出書の様式です。これらの届出の申請内容や様式については、各自治体の条例により取扱いが異なる場合があるため、必ず管轄する自治体の窓口に確認するようにしましょう。
まとめ
減少傾向にあるとはいえ、日本における喫煙者数は少なくないため、たばこのコンテンツとしての集客力は、まだまだ手放せたものではありません。
一方で、たばこには健康被害があること、望まない受動喫煙という社会問題が存在することについても、しっかりと意識して分煙対策を行うことが重要です。
愛煙家も嫌煙家も、お互いが快適に過ごせる社会を形成することを念頭に、より良い飲食店の運営を目指しましょう。
弊所では、飲食店における分煙対策についてサポートを行っております。店内を喫煙可能にするために必要な許可の取得や諸手続きの代行のほか、補助金や融資の申請についてもご相談を承っております。まずはどうぞお気軽にお問い合わせください。