オンラインクレーンゲームは合法?風営法・賭博罪・景品表示法・資金決済法から見る法的な位置づけ

スマートフォンやパソコンから、遠く離れた倉庫に置かれた本物のクレーンゲーム機を操作し、獲得した景品が自宅に届く「オンラインクレーンゲーム」(オンクレ)は、いつでもどこでも手軽に遊べることから、ここ10年ほどで急速に利用者を増やし、今では数多くの事業者がサービスを提供する一大市場へと成長しています。
ところが、ゲームセンターのクレーンゲームに置かれている景品は、法律上の扱いから小売価格がおおむね1,000円以下のものに限られているのに対し、オンラインクレーンゲームでは、ゲーム機やブランド品、家電といった数万円の景品が並んでいることも珍しくありません。「これは本当に合法なのか」「賭博にはならないのか」と疑問を抱いた方も多いのではないでしょうか。
結論からいえば、オンラインクレーンゲームは、ゲームセンターと同じ風営法の規制は受けないことが、国の制度を通じて明確にされています。一方で、刑法の賭博罪や景品表示法との関係については、公式な線引きが示されておらず、営業の仕方によっては問題となるおそれが残る分野でもあります。
本稿では、オンラインクレーンゲームの仕組みと歩みを振り返ったうえで、風営法、刑法の賭博罪、景品表示法、資金決済法という4つの法律の観点から、オンラインクレーンゲームの法的な位置づけを整理していきます。
オンラインクレーンゲームとは
オンラインクレーンゲームは、インターネットを通じて、実在するクレーンゲーム機を遠隔で操作して遊ぶサービスです。筐体にはカメラが取り付けられており、利用者はスマートフォンやパソコンの画面に映る映像を見ながら、画面上のボタンでアームを操作します。遠隔操作であるという点を除けば、遊び方はゲームセンターのクレーンゲームと変わりません。
その歴史はまだ新しく、2011年に国内のゲーム会社がサービスを始めたのが最初とされています。利用者はユーザー登録をしたうえで「コイン」を購入し、コインを使って1回ずつプレイします。獲得した景品は自宅に配送されるという仕組みで、この形は現在の多くのオンラインクレーンゲームにも受け継がれています。当初はアニメやマンガの人気キャラクターのフィギュアが主な景品でしたが、今ではお菓子や日用品、家電に至るまで、景品の種類は大きく広がっています。
その後、オンラインクレーンゲームは急速に広がり、約10年で50社ほどが参入する業界へと成長しました。2020年時点の国内市場規模は約200億円とされ、ゲームセンターのクレーンゲームの市場規模(約2,200億円)には及ばないものの、アミューズメント業界から大きな注目を集めています。
業界の健全化に向けた動きも始まっています。2020年には事業者が集まって業界団体が設立され、その後も複数の団体が、業界全体の認知度の向上や、健全な発展に向けた取り組みを進めています。市場の急成長とともに、事業者自身がルールづくりに乗り出す段階に入ってきたといえるでしょう。
風営法との関係
まず、ゲームセンターのクレーンゲームがどのように規制されているかを確認しておきます。クレーンゲーム機を設置したゲームセンターは、風営法第2条第1項第5号の「ゲームセンター等営業」にあたり、公安委員会の許可を受けて営業する風俗営業です。そして風営法第23条第2項は、こうした営業で「遊技の結果に応じて賞品を提供」することを禁じています。
本来であれば、クレーンゲームで獲得した景品を客に渡すことは、この賞品提供の禁止に触れることになります。そこで警察庁は、風営法の解釈運用基準の中で、クレーンで釣り上げた物品で小売価格がおおむね一定額以下のものを提供する場合は、「遊技の結果に応じて賞品を提供」することには当たらないものとして扱うとしています。この上限は長らく800円とされてきましたが、令和4年3月1日付の通達で1,000円以下に引き上げられました。
これに対して、オンラインクレーンゲームについては、2016年(平成28年)7月29日、経済産業省が、産業競争力強化法に基づく「グレーゾーン解消制度」への照会に対する回答を公表しています。それによれば、関係省庁が検討した結果、照会のあったオンラインクレーンゲームの事業では、店舗内で客に遊技をさせることが想定されないことから、風営法第2条第1項第5号の営業には該当せず、同法の規制を受けないとされました。
つまり、風営法のゲームセンター等営業は、あくまで「店舗内で客に遊技をさせる営業」を対象とするものであり、客が店に来ることなく自宅から遠隔で遊ぶオンラインクレーンゲームは、そもそもその枠組みに入らないということです。風営法の対象外である以上、ゲームセンターに課される1,000円の景品の上限も直接は及ばず、これが、オンラインクレーンゲームで高額な景品が提供されている理由となっています。
賭博罪との関係
もっとも、風営法の対象外であることは、どのような営業をしても適法であることを意味するわけではありません。オンラインクレーンゲームで最も議論になりやすいのが、刑法の賭博罪との関係です。刑法第185条は、偶然の勝敗によって財物や財産上の利益の得喪を争う「賭博」をした者を処罰しています。
クレーンゲームは、腕前が結果を左右する一方で、アームの力加減や景品の置き方など、偶然の要素も多分に含んでいます。そして、利用者は代金を支払ってコインを購入し、景品を獲得できるかどうかを争うことになるため、賭博罪の要件との関係が問題となり得ます。ただし、賭博罪には「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」という例外が設けられており、ここでいう一時の娯楽に供する物とは、価値がわずかで、その場ですぐに消費されるような物をいうとされています。
ゲームセンターのクレーンゲームやパチンコについては、風営法の許可を受け、その規制に従って営業している限り、賭博罪には当たらないと考えられてきました。景品の上限が定められているクレーンゲームは、まさにその枠組みの中で営業しているわけです。これに対してオンラインクレーンゲームは、風営法の枠の外にあるため、こうした考え方をそのまま当てはめることができず、高額な景品を提供する営業が賭博罪との関係でどう評価されるのかについて、確立した判例や公式な見解は見当たりません。
そのため、オンラインクレーンゲームを営業する事業者には、賭博と評価されないための工夫が求められることになります。一般に、オンラインゲームが賭博罪に当たらないようにするためには、利用者が支払った対価に見合うものが必ず手に入る仕組みにして、財産を失う「喪」の側面をなくすことや、提供するものを財産的な価値のないものにすることなどが考えられるとされています。逆に、景品の換金を事業者が手助けするような仕組みを設ければ、賭博の性質が一気に強まるため、特に避けるべきといえるでしょう。
景品表示法との関係
景品表示法との関係も、すっきりとは整理されていない分野です。景品表示法は、商品やサービスの取引に付随して提供される「景品類」について、上限額などを定めています。中でも、くじやゲームなどの偶然性や、特定の行為の優劣によって景品を提供する「一般懸賞」については、取引価額が5,000円未満の場合は取引価額の20倍まで、5,000円以上の場合は10万円までという最高額と、売上予定総額の2%までという総額の制限が設けられています。
仮にオンラインクレーンゲームの景品が一般懸賞の景品類にあたるとすれば、1プレイ100円のゲームで提供できる景品の上限は、その20倍の2,000円ということになります。そうなると、数万円の景品を並べる営業の多くは、景品表示法との関係で問題を抱えることになります。
一方で、クレーンゲームの景品は、商品を買ったおまけとして付いてくるものではなく、景品を獲得すること自体がサービスの中身なのだから、「取引に付随して」提供される景品類にはあたらず、景品表示法の規制は及ばないという考え方もあります。景品表示法の景品規制は、あくまで取引に付随して提供されるおまけを対象とするものであるため、この「付随性」をどう捉えるかによって、結論が大きく変わってくるのです。
このように、オンラインクレーンゲームと景品表示法との関係については見解が分かれており、確認できる限り、消費者庁がオンラインクレーンゲームそのものについて公式な考え方を示した資料も見当たりません。景品の価値や提供方法を設計する際には、どちらの考え方に立っても説明がつくよう、慎重に検討しておくことが望まれます。
資金決済法との関係
オンラインクレーンゲームで見落とされがちなのが、資金決済法との関係です。多くのオンラインクレーンゲームでは、利用者があらかじめ代金を支払って「コイン」や「ポイント」を購入し、それを使ってプレイする仕組みになっています。このように、対価を得て発行され、商品やサービスの代価の支払いに使える金額などの記録は、資金決済法上の「前払式支払手段」にあたる可能性があります。
オンラインクレーンゲームのコインのように、発行した事業者のサービスにしか使えないものは「自家型前払式支払手段」にあたり、発行そのものに事前の登録は必要ありません。ただし、毎年3月31日と9月30日の基準日において、未使用残高が1,000万円を超えたときは、基準日の翌日から2か月以内に、財務局へ届出をすることが求められます。
届出をした事業者は、基準日の未使用残高の2分の1以上の額を「発行保証金」として供託するなど、利用者の資金を保全するための義務も負うことになります。届出を怠ったまま発行を続ければ、資金決済法に基づく罰則や行政処分の対象となるおそれがあるため、事業の規模が大きくなってきた段階では、未使用残高を正確に管理する体制が欠かせません。
なお、有効期限が6か月以内のものは前払式支払手段の規制から除外されるなど、適用には例外もあります。コインの有効期限や払戻しの可否、無償で付与するポイントとの区別など、コインの仕様をどう設計するかによって必要な手続きが変わってくるため、サービスを開始する前に整理しておくことが大切です。
事業を始める際の注意点
ここまで見てきたように、オンラインクレーンゲームは、風営法の対象外であることは国の制度を通じて明確にされている一方で、賭博罪や景品表示法との関係には、公式な線引きのない部分が残っています。風営法の規制を受けないからといって、どのような景品を、どのような方法で提供してもよいというわけではない点に、注意が必要です。
特に、景品を高額にするほど、射幸心をあおる性質が強まり、賭博罪や景品表示法の観点から問題視されるおそれも高まっていきます。景品を取れないようにアームの設定を極端に弱めながら、取れるかのように宣伝すれば、詐欺や景品表示法上の不当表示が問題となることもあり得ます。実際に、店舗型のゲームセンターでは、取れない設定のクレーンゲームで客から料金をだまし取ったとして、運営会社の社長らが詐欺の疑いで逮捕された事件も起きています。
また、インターネットを通じた有料のサービスである以上、特定商取引法に基づく表示や、利用規約・プライバシーポリシーの整備、未成年者による高額課金への対策なども欠かせません。コインの仕様によっては資金決済法の届出が必要になることも、先に見たとおりです。
オンラインクレーンゲームは、法律の空白地帯で成長してきた側面があるだけに、今後、規制のあり方が見直される可能性も否定できません。業界団体の動向や行政の考え方にも目を配りながら、利用者が安心して楽しめる運営を心がけることが、事業を長く続けていくための何よりの近道です。
ゲームセンター開業サポート
オンラインクレーンゲームそのものは風営法の対象外ですが、実店舗でクレーンゲームを設置したり、オンラインと実店舗を組み合わせた事業を展開したりする場合には、風営法のゲームセンター等営業の許可が必要になることがあります。どこまでが風営法の対象で、どこからが対象外なのかを正確に見極めることが、事業計画の第一歩となります。
弊所では、ゲームセンターやアミューズメントカジノ、雀荘などの風俗営業許可をはじめ、アミューズメント事業に関わる手続きを数多く取り扱っています。景品の扱いや営業の方法について、風営法の観点からのご相談にも対応しています。弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。ゲームセンターやアミューズメント事業の開業でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
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