「士」と「師」の違いとは?

私は行政書「士」であると同時に海事代理「士」であり、介護福祉「士」でもあるわけですが、同時に柔道整復「師」であったりもします。
文書を生業とする身としては普段は意識こそしないものの、そういえばこの違いって何だっけ?という疑問符が頭に浮かぶことがあります。
そこで今回は、いつもとは少しテイストを変えて、我々が普段気にすることなく使用している「士」と「師」の違いについて、簡単にまとめてみることにしました。
士とは

大辞林(三省堂)によると、「士」には、①男子、特に学問や道徳を修めた男子、②さむらい、武士、③古代中国で大夫と庶民との間に位した身分という青味があります。
戦国好きとしては、「さむらい」のイメージが真っ先に思い浮かびますが、実際に「さむらい」がいた時代は「士」が特権的な身分として使用されていたことから、ここから転じて「才能のある者」に対して「士」を用いるようになったという背景があります。
また、「男子」としての使用については、2002年まで男性看護師を「看護士」、女性看護師を「看護婦」と分けて表記していた歴史があります。なお、同時期には「保健婦」と「助産婦」についても「師」への表記統一がなされましたが、そもそも「助産師」は、女性のみに与えられる資格であるため、元より男性助産師は存在していません。
以下に「士」を冠する職業人を列挙していますが、眺めてみると、確かにどことなく「職人」の雰囲気が漂っています。
- 弁護士、弁理士、司法書士、土地家屋調査士
- 行政書士、海事代理士、社会保険労務士
- 公認会計士、税理士、中小企業診断士
- 不動産鑑定士、宅地建物取引士、通関士
- ファイナンシャル・プランニング技能士
- 一級建築士、二級建築士、木造建築士
- 1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士
- マンション管理士、土地区画整理士
- 技術士、測量士、計量士、電気工事士
- 海技士、潜水士、気象予報士
- ボイラー技士、ボイラー整備士、ボイラー溶接士
- 海技士、潜水士
師とは

同じく大辞林によると、「師」には、①学問や芸能などを教える人、先生、師匠、
②僧侶・神父など宗教上の指導者、③中国周代の軍制で2500人を一師、転じて軍隊、戦争の意味があります。
漫画やアニメでよく見かける「○○師団」は③がその由来となっており、ここからも分かるとおり、「師」とは「集団を導く者」のことを指します。
ちなみに国家資格である「調理師」は業務独占資格ではなく名称独占資格であるため、調理師免許を保有せずに調理を担当する者を「調理師」と表記することはできず、代わりに「調理士」と表記するという慣習があるようです。
以下に主だった「師」を列挙しますが、「士」が職人のイメージであることに対し「師」にはどことなく「指導者」的なイメージを感じることがてきます。
- 医師、歯科医師、獣医師
- 看護師、准看護師、保健師、助産師、薬剤師
- 柔道整復師、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師
- 調教師、調理師、電気技師、美容師、理容師
- 牧師、教師、漁師、猟師
司とは

同じ「し」として「○○司」という資格も存在していますが、こちらは元々「役所」を指していた「司」(本来は、律令制において省に属し、職・寮に次ぐ役所のこと)が、転じて「役目を受け持つ者」の意味を持つようになりました。
以下に「司」を冠する役職を列挙してみましたが、なるほど確かにそれとなく「役人」的な雰囲気があるような気がします。
- 児童福祉司
- 身体障害者福祉司
- 知的障害者福祉司
- 保護司
まとめ
たった一文字の違いであっても、その成り立ちや由来を紐解いてみると、思わぬ発見があって面白いものですよね!
そんな「士」であり「師」でもある私ですが、実は資格の表記にはまったくこだわりはありません。表記も大切ですが、もっと大切なものは「内容」だと思っております。(キリッ)
さて、本記事が特に何かのお役に立てたとは思えませんが、次回は「大阪風お好み焼き」と「広島風お好み焼き」の違いについてでも深堀りしてみることにしましょうかね。
Coming soon… (多分)