個人事業主は酒類販売免許を取得できる?法人申請との違いを踏まえて解説

小規模な酒屋

タイトルに対してまず結論から入ると、個人事業主であっても酒類販売業免許を取得することは十分に可能です。副業でネットショップを始めたい方や、法人化の前段階でまずは個人事業として酒販業をスタートさせたい方にとって、これは意外と知られていない選択肢です。

とはいえ、個人での申請と法人での申請とでは、審査の対象や求められる書類がまったく同じというわけではありません。酒類販売業免許は「人的要件」「場所的要件」「経営基礎要件」「需給調整要件」という4つの要件をクリアする必要がありますが、このうち人的要件と経営基礎要件については、個人と法人とで審査の対象範囲や判断基準に違いがあります。

そこで本稿では、個人事業主として酒類販売業免許を取得する場合に、法人申請と比べて何がどう違うのか、そして個人での取得ならではのメリットや注意点について解説していきます。すでに法人化を視野に入れている方にとっても、将来の見通しを立てるうえで参考になる内容です。

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個人事業主でも取得できる

酒類販売業免許は個人事業主でも法人でも、要件さえ満たせば取得することができます。免許制度そのものが「法人限定」というわけではなく、個人か法人かという事業形態の違いは、あくまで審査の中身に反映される要素のひとつにすぎません。

そもそも酒類販売業免許で求められる4つの要件(人的要件・場所的要件・経営基礎要件・需給調整要件)自体は、個人でも法人でも共通しています。違いが出てくるのは、主に「誰の何を審査するか」という審査対象の範囲においてです。

個人事業主として免許を取得する最大のメリットは、法人を設立する手間とコストをかけずに酒類販売事業を始められる点にあります。登記費用や法人の維持コストが発生しないため、副業レベルでの小規模なネットショップ運営や、まずは個人でスタートして様子を見たいという場合には、個人での申請が現実的な選択肢になります。

個人と法人で審査対象が異なる

人的要件と経営基礎要件については、個人申請の場合は申請者本人が、法人申請の場合は法人自体とその役員全員が審査対象になるという違いがあります。

具体的に法人申請の場合、役員が何人いようとも、そのうち1人でも欠格事由に該当する、あるいは経営基礎要件を満たさない人物がいれば、法人全体として要件を満たさないと判断されてしまいます。役員の入れ替わりが多い法人では、この点が思わぬ落とし穴になることがある一方で、個人事業主の場合は申請者本人だけが審査対象になるため、確認すべき対象がシンプルになるという利点があります。

要件個人申請法人申請
人的要件申請者本人のみが審査対象法人および代表者・役員全員が審査対象
経営基礎要件申請者本人の所得・資産状況等が審査対象法人の決算内容(3期分)が審査対象

経営基礎要件の中身も違う

経営基礎要件そのものの判断基準について、法人申請では直近3期分の決算内容が重視され、3期連続で資本等の額の20%を超える赤字が出ている場合や、債務超過の状態が解消されていない場合には、原則として免許を受けることができません。会社を設立してまだ3期を経過していない場合は、直近の決算で債務超過になっていなければ申請できる扱いになっています。

これに対して、個人事業主の場合は、法人のような「3期連続赤字」「債務超過」といった明確な数値基準は設けられていません。申請者本人の所得状況や資産・負債の状況が確認され、酒類販売事業を安定して継続できるだけの経済的基盤があるかどうかが、総合的に判断されることになります。

このように数値基準による機械的な足切りがない分、法人に比べると経営基礎要件のハードルをクリアしやすいと評価されることもあることから、法人の決算状況が思わしくないという理由で代表者個人が酒類販売業免許を取得するというケースも実務上見られます。法人としての免許取得が難しい状況でも、個人としてなら要件を満たせる可能性があるという点は、状況に応じて検討する価値があるポイントです。

必要書類も異なる

申請時に提出する添付書類についても、個人と法人とでは内容が変わってきます。とくに人的要件・経営基礎要件に関わる部分での違いが大きく、代表的なものを整理すると次のとおりです。

書類個人申請法人申請
経営基礎要件を示す書類直近3年分の確定申告書または源泉徴収票(両方に該当する場合は両方)直近3事業年度分の貸借対照表・損益計算書
履歴書申請者本人の履歴書役員全員分の履歴書(社外取締役・監査役を含む)
事業目的を示す書類不要「酒類販売業」等の文言が入った定款の写し

法人申請では、定款の事業目的に酒類の販売に関する文言が含まれていない場合、そもそも申請の前提として定款変更が必要になることがあります。個人申請ではこうした定款まわりの手続きが発生しない分、書類準備のハードルはやや低いといえます。

法人成りをする場合の注意点

個人事業主として酒類販売業免許を取得したあと、事業が軌道に乗って法人化(法人成り)を検討するケースは少なくありません。しかし、酒類販売業免許は「人」と「場所」に対して付与されるものであるため、個人から法人へ事業主体が変わる場合、既存の免許がそのまま自動的に引き継がれるわけではありません。

法令上、法人成りに際しては新たに免許を取得し直す必要があり、実務上はほぼ新規の免許申請と同じ手続きを踏むことになります。逆に、法人が事業主体を個人に切り替える「個人成り」についても同様で、国税庁の公表資料上も「新規」の取得として扱われます。

このため、個人事業主として免許を取得する段階から、将来的に法人化する可能性がある場合には、その時点であらためて免許取得の手続きが必要になることを見込んでおく必要があります。とくに販売場をそのまま引き継げるのか、法人設立のタイミングをどう調整するのかといった点は、事前に検討しておくとスムーズです。

Q. 個人事業主として免許を取得したほうが、法人より必ず有利ですか。
A. 一概にはいえません。経営基礎要件のハードルは個人の方が低い傾向にありますが、法人の方が対外的な信用力を得やすい、取引先によっては法人でないと取引してもらえないといった事情もあります。事業の規模や将来計画に応じて判断する必要があります。


Q. 個人事業主が複数の販売場を持つことはできますか。
A. 可能です。販売場ごとに免許を取得すれば、個人事業主であっても複数の販売場を運営することができます。


Q. 法人の代表者が、個人としても酒類販売業免許を取得することはできますか。
A. 制度上は可能です。法人の決算状況が芳しくない場合に、代表者個人として別途申請するケースも実務上見られます。ただし、法人と個人それぞれの事業実態が明確に区分されている必要があります。


Q. 個人事業主から法人化する際、販売場は同じ場所のままでよいですか。
A. 場所自体は同じままで申請することも可能ですが、免許自体は新規取得扱いになるため、審査期間や必要書類は新規申請と同様に見込んでおく必要があります。

まとめ

酒類販売業免許は、個人事業主であっても法人であっても、要件を満たせば取得することができます。ただし、人的要件・経営基礎要件の審査対象や判断基準、必要書類の内容には個人と法人とで違いがあり、とくに経営基礎要件については、法人のような明確な数値基準がない分、個人の方がむしろ要件をクリアしやすい傾向にあります。

一方で、酒類販売業免許は人と場所に紐づく免許であるため、個人事業主として取得したあとに法人化する場合には、原則として新たに免許を取得し直す必要がある点には注意が必要です。将来的な事業形態の変化まで見据えて、どちらの形態で最初の免許を取得するかを検討することが望ましいといえます。

弊所では、個人・法人どちらの形態であっても、酒類販売業免許の申請サポートを承っています。どちらの形態で申請すべきか迷う段階でも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。

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