社交飲食店営業の営業所における構造上の注意点

キャバクラやラウンジ、コンカフェといった接待を伴う店を構えるにあたって、避けて通れないのが風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)が定める構造の壁です。内装業者がどれほど豪華な空間を造り上げたとしても、それが警察の定める基準から数センチ、あるいは数ルクス外れているだけで、営業許可というゴールには永遠にたどり着けません。
現場ではよくある話ですが、経営者が良かれと思って設置した目隠しのパーテーションや、客同士のプライバシーに配慮した個室の扉が、当局の目には「見通しを妨げる障害物」や「密室」と映り、その場で計画の練り直しを迫られるケースが後を絶ちません。一見すると些細に思える「壁の高さ」や「椅子の配置」ひとつひとつに、実は営業の死活問題に直結する法的な根拠が潜んでいます。
そこで本稿では、図面上の数字だけでは見えてこない、実査(現地調査)の際に検査官がどこを注視し、どのようなポイントで「アウト」を突きつけてくるのか、その実態について詳しく掘り下げていきます。
設計に着手する前、あるいは居抜き物件の契約書に判を突く前に、まずは構造上の致命的な落とし穴を把握しておくことが、無駄な改修コストと時間を抑える唯一の手段となります。
目 次
営業所に係る構造要件
社交飲食店営業の営業所に厳格な構造基準が課されているのは、客室の見通しと適切な照度を確保することで、死角や暗がりを悪用した売春、薬物使用、あるいは粗暴行為といった違法行為の温床を根絶するためです。
それゆえ、実査(現地調査)における警察当局のチェックは、壁一枚の高さ、照明スイッチの仕様、さらには観葉植物の配置に至るまで、一切の妥協を許さないものとなります。
本章では、許可の可否を分ける構造上の急所について、実務的な数値基準を交えて詳しく解説します。
客室床面積
社交飲食店においてメインの客室のほかにVIPルームなどを設けて客室が複数となる場合には、店内の見通しを確保するため、各客室について16.5㎡以上の床面積を確保することが義務付けられています。数値だけではあまり伝わりませんが、16.5㎡は体感的に相当広く(おおむね約10畳)、個室を設ける場合にすべての客室についてこの床面積の規制が適用されるため、最低でも客室は、33㎡の総床面積が必要になることにご注意ください。
また、和室(法令上の和風様式を備えた独立区画)については基準が緩和され、9.5㎡以上あればこの要件を満たせますが、床の間や押入れといった客の飲食と遊興に供さないスペースを除いた有効面積でこの広さを確保していることが条件です。
なお、これらの数値規制はあくまで複数の客室を設ける場合に適用されるものであり、客室が1室のみの単室構造であれば面積の下限による制限は受けません。一方で、客室を区切った結果として1室が5㎡以下の個室となった場合は、社交飲食店の範疇を逸脱し、「区画席飲食店(3号営業)」としての許可が別途必要です。これらの営業形態は法的に両立しないため、安易な区画割りは申請そのものを破綻させるリスクがある点に細心の注意を払ってください。
客室の見通し
死角を作ってそこで不適切な行為が行われないよう客室内に「見通しを妨げる設備」を設置することは禁止されています。
問題となる「見通しを妨げる設備」とは、具体的には高さがおおむね1m以上となる遮蔽物(しゃへいぶつ)を指しますが、これには客室内のテーブル、イス、カウンターなどの什器だけでなく、観葉植物やラックなど設置されるすべての物品が含まれます。
高さは「最大値が1m未満」である必要があるため、可動式のイスやテーブルについては、最も高くした状態で計測してもなお「高さ1m未満」であることを要求されています。
また、客室の形状が極端なL字型であったり、全体を見渡す際に死角となる狭いスペースがあったりする場合も、「見通しを妨げる構造」として指摘を受けることがあります。
該当箇所を客室から除外して申請する対策もありますが、あまりにいびつな形状の物件は、選定段階で避ける方が得策です。
外部からの視認
客室の見通しを妨げることを禁止する一方で、客のプライバシーを保護し、歓楽的な雰囲気が外部に漏れることを防止するため、客室内部を営業所の外部から容易に視認することができる状態で営業を営むことは認められていません。
したがって、客室内部を外部から視認することができる小窓などが設置されている場合は、その内側に何らかの方法によって目隠しとなる措置を施す必要があります。
目隠しの方法の適否については所轄署ごとに判断基準が異なりますが、多くのケースで単にカーテンを取り付けるだけでは足りず、ベニヤ板を打ち付けるか、あるいはガラスを完全に不透明な素材のものに交換するなど「容易に外すことができない」方法によって措置を施す必要があります。
なお、外部からの視認をシャットアウトすべきなのは客室についてであり、客室以外の付随施設(待合室や通路等)を視認できたとしても問題ありません。
客室の出入口
営業所外に直接通ずる出入口はともかくとして、客室に施錠をすることは認められていません。その理由は、万が一の事態における客の監禁を防止するという「安全確保」の側面と、違法行為の隠蔽や警察官による立入検査の妨害を未然に防ぐという「監督の実効性維持」の側面にあります。
したがって、鍵付き個室を設けることはもちろんのこと、二重扉を設けてその両方に施錠をするような構造も認められません。
照度の規制
暗い店内は違法行為の温床となるおそれがあるため、客席は常に5ルクスを超える明るさを維持する必要があります。
警察のチェック対象となる調光器(スライダックス)が設置されている物件については、照度を最小に絞った状態でも5ルクスを下回らないよう改修するか、あるいは調光器自体を撤去する必要があります。(この辺りの警察の運用は地域差があるため注意が必要です。)
掲示物等
社交飲食店営業の営業所においては、善良な風俗や清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾、その他の設備を設けることが厳格に禁止されています。
具体的には、店内の壁面や看板に掲げられるポルノ写真や性的な好奇心を煽るポスター、あるいはアダルトグッズの展示などがこれに該当します。
こうした物品の設置は、営業所の健全性を著しく損なうだけでなく、少年の健全育成を阻害する要因ともなり得るため、客室から見える場所はもちろん、営業所内のいかなるスペースにおいても認められません。内装を検討する際は、単なるデザイン性だけでなく、公序良俗に反する視覚的要素が含まれていないかを十分に精査する必要があります。
騒音及び振動
各都道府県の条例では、営業所から発生する騒音および振動の数値について厳格な許容基準が設けられており、営業者はこの基準を超える状態で営業を営むことはできません。
具体的には、カラオケ設備や音響機器の使用、あるいは遊技に伴う衝撃音などが、近隣の平穏な生活環境を損なわないよう配慮が求められます。万が一、基準値を超過するおそれがある場合には、壁や天井への防音材の導入、あるいは防振マットの設置といった適切な措置を講じる必要があります。
個室の具体例
ドアや壁で完全に仕切られた分かりやすい構造でなくとも、実務上は「個室」とは言いがたいレイアウトが風営法上の個室とみなされるケースは珍しくありません。個室の存在自体は問題ありませんが、個室判定を受けた場合は16.5㎡以上、和室であっても9.5㎡以上の床面積規制が適用されるため、小規模な店舗にとっては死活問題となりかねません。
意図せず個室とみなされて面積要件に抵触することを防ぐためには、どのような構造が「個室」と判定されるのか、その基準を正確に把握しておく必要があります。本章では、過去に個室と判定された具体的事例とその解決策を紹介します。
ケース①:高さ1mを超えるついたてに囲まれているスペース

参考画像のように周囲を高さ1m以上のついたてで囲んでいた事例では、たとえ両隣が開放された空間であっても、そのスペースは独立した「個室」であると判断されました。
該当スペースと他の客室がすべて16.5㎡以上の床面積を有していれば問題ありませんが、本事例では面積が不足していたため、手前のソファの背もたれに当たるついたてを床から1m未満に切除することで解決に至りました。
今回は事なきを得ましたが、構造上切除が困難な場合には、そのスペースを「客室として使用できない」と判断せざるを得ないリスクが生じます。
ケース②:柵で囲まれているスペース

参考画像にあるように、簡易的な柵で周囲を囲んでいた事例では、「遮蔽物で囲まれた構造」として個室判定を受け、床面積基準を満たしていないことから、柵を取り外すよう指導を受けました。
なお、ケース①と同様に、柵を撤去できない場合にはそのスペースを客室として使用することができません。
ケース③:装飾のあるガラス張りのスペース

参考画像のように、装飾や模様が施されたガラス張りの構造物で囲まれたスペースについても「個室」と判定された事例があります。
本事例では装飾を削り落とし、完全な無色透明とすることで解決に至りましたが、管轄する警察署の判断によっては、たとえ無色透明のガラス張りであっても「遮蔽物」とみなされる場合があるため注意が必要です。
注意点
個室と判断された事例と解決策を提示しましたが、そもそもこれらの判断基準は管轄する警察署によって大きく異なります。「ある警察署では通ったが、隣接する自治体の警察署では一切認められなかった」という事態が日常的に起こるのが、風営法実務の難しさです。
構造基準の解釈や運用には地域特有の「ローカルルール」が存在するため、他店での成功事例を安易に当てはめるのではなく、事前に管轄警察署と綿密な協議を重ねることが極めて重要となります。
いずれにせよ、聞きかじった断片的な情報や、ネット上の根拠なき「合法説」を鵜呑みにし、安易に自己判断を下すことは極めて危険です。取り返しのつかない事態に陥る前に、まずは風営法に精通した行政書士等の専門家へ相談し、適法かつ持続可能なビジネスモデルを検討されることを強くお勧めいたします。
風俗営業許可申請サポート
風俗営業は法令や条例の規制をダイレクトに被る営業形態です。規制は各市区町村条例に及んでいることも多いため、市区町村によっては都道府県条例よりもさらに厳しい条例(いわゆる上乗せ条例)が施行されている地域も存在します。
このように想定外の落とし穴にはまってしまうこともあるため、風俗営業の見切り発車は非常にリスクの大きい行為です。知人の風俗営業者が色々と入れ知恵してくれたとしても、それがその時期その地域その営業形態にすべて合致する正しい情報とは限りません。いずれにせよ風俗営業をはじめようとする際は、所轄の警察署や風営法に精通した行政書士に相談することを強くお薦めします。
弊所では、全国各地において、風俗営業許可申請の代行を承っています。事前調査、書類作成、関係各所とのやり取り及び書類提出に至るまで、まるっとフルサポートさせていただいています。また、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。風俗営業許可を取得する際は、どうぞ弊所まで安心してご相談ください。
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